第43話 ベロニカの決意
ベロニカは剣の師でありあこがれの存在である父と剣を交つつも膠着状態だった。それだけ実力が拮抗しているのだ。
「さすがは父上だね……催眠状態で万全ではないっていうのに、親の前で痴態を晒して興奮している私と互角だなんて……」
「どきなさい、ベロニカ。男はすべて殺さなければいけないんだ」
何者かの返り血を浴びている上に、あんなに褒めていたグレイブを殺すと言っている己の父を見て胸が痛む。
「正気に戻って!! なんて言葉も通じないんだろうね、三段斬り!!」
「腕を上げたな、ベロニカよ。三段斬り!!」
瞬く間に放たれる三連撃がぶつかり合う。互角にみえたが父の頬をわずかな傷が生まれ、鮮血がはしる。
今は私の方が上だ……だけど……
ベロニカの加護によるステータスアップは精神状態によって左右される。今は水着で戦っているという高揚感のおかげで何とかなっているが時間がたてばたつほど、父の悲壮な姿を見ていて萎えていくのは間違いがなかった。
そう悩んでいる間にも剣と剣がぶつかりあう音が鳴り響く。その時一瞬だった、一瞬だけ父の剣が鈍ったのを感じる。
「ベロニカ……俺を斬れ。おまえやグレイブ様を殺す前に……」
「父上……」
もはや気のせいとはいえないくらいに父の剣が鈍る。強靭な意思の力でイリスの催眠に抗い、隙を作っているのだ。今攻撃すればあっさりと勝てるだろう。
だけど、その姿が余計ベロニカの決意を鈍らせる。
「ベロニカ……すまない……お前につらい役割を押し付けちまったなぁ……」
とぎれとぎれに聞こえるのは騎士としてではなく、父としての荒々しい口調だ。そして、それが彼の本心だとわかってしまい、思わず涙がでてきそうになる。
「私の名前はベロニカ=パラス。由緒正しき騎士の家系パラスの一族の名にかけて、主の敵を斬る!!」
全ての迷いを断ち切ってベロニカが剣を構えると父がにやっと笑った気がした。一瞬父が自分を可愛がってくれていた時の出来事が走馬灯のように頭をかけていったがもう躊躇はしなかった。
「男は全員殺す」
「くっ、決意するのが少し遅かったかな」
限界だったのか腕に軽い切り傷を負わせただけで父の剣に勢いが戻ってしまう。
そして、仕切り直すかのようにすさまじい殺気共に父が正眼に剣を構える。それを受けるかのようにベロニカも同じ構えをとる。両者の間に緊張が走った時だった。
氷のつぶてが飛んできて、その形にベロニカが大きく目を見開いた。
「これは……おちんちん……」
しかも、ただのチ〇コではない。グレイブのものである。あまりにも気になったベロニカは戦闘中だというのに、思わずグレイブたちの方を見る。
「はははは、さすがは私の主だなぁ……」
その視界に入ったのはチ〇コの形がした氷が降り注ぐ中下半身を露出してチ〇コを模した剣を振り増しているグレイブだった。
しかも、その表情はとても楽しそうである。
「いっそ、私も全裸になるか? いや、さすがにそれは慎みがないと主に嫌われてしまうかもしれないね」
その様子を見たベロニカは笑みを浮かべ、いつもの余裕が戻る。
ああ、そうだよ。主は私に父を救えと命じたんだ。だったらその期待に応えないとね!!
「よそ見とは余裕だな!! 我が奥義をくらうがいい。雷鳴剣!!」
雷鳴剣。それはパラス家の当主が生み出したまるで雷のごとき速度で切り裂く高速にて必殺技である。この一撃にて父も副団長についたのだ。
だが、そんな必殺技も今のベロニカの……自らが尊敬するグレイブが強敵である六奇人相手に露出プレイを楽しみつつ圧倒する姿を見て、たぎっておりかつてないほどステータスが上がっている彼女にとっては脅威ですらなかった。
「ふふ、雷鳴剣が雷の様に高速で切り裂く技ならば、私のこれはまさに雷すらも凌駕する一撃かな」
「な……?」
おそらく父は何がおきているかわからなかったであろう。父に負けないくらいの鍛錬と加護によるステータスアップによって繰り出された一撃は後出しだったにも関わらず、父のその刀身を打ち砕いていた。
「しばらく眠っていてくれ、父上」
そして、大きく目をみひらいて驚愕している父の首をコンと叩いて気絶させて、グレイブたちの方をみると、すでにイリスを倒したグレイブが信頼しきった目でこちらを見つめていた。
まるで負ける事なんてかんがえてもいなかったかのように……
「よくやったな、ベロニカ」
「ふふ、私は主の騎士だからね。命令は守るさ」
彼の騎士であることを誇りに思いながらこちらも勝って当然だったとばかりに答える。このあとのことがどうなるかはわからない。
だけど、六奇人という強敵とたたかっても、なお自分のペースを崩さずに倒す彼ならば、傷心するであろう父のことも何とかしてくれるのではないかと、下半身まるだしでドロシーを撫でているグレイブを見て思うのだった。
ああ、露出プレイっていいよね♡
シリアスになるはずだったのに……
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