第22話 ベロニカとグレイブ
「どうすりゃいいんだよ……」
屋敷に戻った俺は自室で頭を抱えていた。それも無理はないだろう。ゲームのラスボスである邪神に目をつけられたのだ。
その役割は本来ならば主人公の役割である。これからも邪神は信者を使って徹底的に攻めてくるだろう。まあ、それはどうでもいい。問題は……
「童貞を捨てたら破滅フラグじゃねーかよぉぉぉぉぉ!!」
加護を失えばスキルも使えなくなり、身体能力も下がるのだ。邪神の襲撃になすすべもないだろう。つまり俺がやるべきことは一つだ。
「一刻も早く爆乳で有能な仲間を集めて邪神を倒し、爆乳ハーレムを楽しんでやるよ」
現段階でも周りの爆乳な女の子だけでもナルヴィやベロニカ、ナナシがいる。童貞を守りつつ、彼女たちのような強力で爆乳な仲間を集めることが第一目標となるだろう。
「グレイブ様、来客がいらっしゃいました。通しても大丈夫でしょうか?」
「ああ、大丈夫だ」
誓いを新たにしているとメイドが来客を告げる。約束もなかったが誰だろうか? まさか、邪神の手下じゃないよな……とスキルを使う準備はしとく。
扉が開くと、その声と外套の上からでも盛り上がったおっぱいですぐに誰だかわかった。
「失礼するよ、疲れているところすまないね」
「ベロニカこそ、大丈夫なのか?」
「ふふ、私はアテナ騎士団の騎士だからね、これくらい余裕だよ」
すました顔で答えるベロニカ。今日の彼女は外套で身を包んでおり、凛々しい顔でこちらを見つめている。こうしてみると本当にあの変態騎士と同一人物なのか妖しくなるよな……
「それで、何の用なんだ?」
「あの時の約束を覚えているかな? 私を君の騎士にしてくれるって約束さ」
「まさか……本当に俺に雇われてくれるのか?」
ハーレムの一員ではなく騎士でというのがちょっと残念だが、問題はない。性癖はあれだが、体と能力は高いしな。それにこいつは自分の身をていしてでも俺を守ろうとしてくれたのだ。信用できる。
このまま頑張って好感度をあげて、忠誠心とおっぱいもゲットしてみせるぞ!!
「アテナ騎士団は基本的には団員の自由を尊重する騎士団でね、自分の意思で主を選んで仕えていいんだよ」
「ああ、団長の命令は絶対だが、場合によっては団員同士で争うことすらあるっていう話を聞いたことがあるな」
ゲームでもアテナ騎士団の団員であるヒロインの一人が主人公についていったのはそういう理由があるのだ。そして、俺は思い出す。
その騎士が忠誠を誓った時に何をやったのかを……
「ベロニカまさか……」
「そしてね……主と求めた人間に剣と体をささげるのさ!! グレイブ、私を抱いてくれ!!」
そう、忠誠セックスである。外套をばさーっと脱いだ彼女が身にまとっていたのは……
「俺がつくったビキニアーマーだと!? おまえ、そんな恰好で馬車に乗ったり、人と話してたのかよ!?」
「ああ♡ その侮蔑の表情と、胸への獣欲に満ちた目がたまらない。やはり君こそが私の主にふさわしい!!」
そのまま俺はあっさりとベッドに押し倒される。押しのけようにも微動だにしねぇぇぇぇぇぇ!! ああ、でも、やっぱいぞ。これ……押し付けられるおっぱいの柔らかい感触と甘い匂いが俺の理性を攻撃してくる。
「大体お前こういうことは妄想はいいけど、実際はきついって言ってただろ……規則だからっていいのか……」
なるべく押し付けられた胸の感触を楽しみながらもベロニカに諭すように言うが、彼女は真剣な顔ではにかんだ。
「妄想ならばともかく、私だってこういうことはしてもいいなって人としかしないさ……この鎧だって、君が好きだろうからわざわざ身に着けてきたんだよ? それとも私のような変態女は君にとって魅力はないかな?」
「んんんーーーー!!!」
まじめな顔でそんなことを言うものだからいろいろとやばい。こいつ可愛すぎだろう? 俺の下半身君も「もう、我慢できないよう」って訴えている。
童貞捨ててよくない? まあ、加護なんか無くても何とかなるだろ。こいつが本気で俺を求めてくれたのだ。だったら俺も答えねばな!!
「おいおい、仮にもアテナ騎士団の一員たるものが恥ずかしくないのか?」
「え……それは……やっぱり、私なんて……」
拒絶されたのかと勘違いし不安がるベロニカに俺はいやらしい笑みを浮かべて言った。
「主に乗るとはどういうことだ? 雌犬なら雌犬らしく、ご褒美くださいっておねだりしてみろよ」
「んんーーーー♡ その鬼畜な顔!! 獣のような目つき!! もう、我慢できません、雌犬にご褒美をくださいぃぃぃぃ!!!」
ベロニカが大声で叫ぶと発情した目で寝そべりながらおなかを見せて服従のポーズをする。我慢できないとばかりにこまめに腰を動かすものだから、胸が揺れてヤバイ。
あれ……なんか童貞を捨てちゃいけない理由があったような……と頭をよぎるが、下半身君の「やっちゃえ」という言葉に従い、彼女を抱きしめる。
「グレイブ……いや、我が主……私をめちゃくちゃにしてくれ……」
胸当てからあふれているおっぱいの柔らかい感触と、うるんだ瞳に上気したほほが何とも魅力的で俺はそのまま彼女の唇に……
コンコンとノックの音が響き、返事を待たずに扉が開かれた。
「ドロシー様、返事が来てから扉を開けないとだめですよ」
「お兄様お手紙がきまし……お兄様……?」
「「あ」」
突然の乱入者に俺とベロニカは間の抜けた声をあげる。
一瞬時がとまり……そして動き出す『THE WORLD』……などと言っている場合ではない。どちらかというと『THE END』になる気がする。
こちらを見つめていたドロシーの目からハイライトがすっと消える。
「お兄様何を……この女ですね、この女が兄さまを誘惑したのですね!! 痴女みたいな恰好をして!!」
「いやこれはだな……」
「ああ、この侮蔑の言葉……たまらない♡」
俺の下で悶えるベロニカを無視して何とか説得しようとする。
まあ、ドロシーは思春期だし、貞操観念のしっかりとした貴族令嬢だ。元からヤンデレ気質もあるし、婚約者でもない男女がこうなっていたら、パニックになるのは無理もないだろう。
「ナルヴィどいてください、そいつ殺せないです!!」
「ドロシー様、落ち着いてください。グレイブ様がなにも考えずに女性とこういうことをするはずがないでしょう?」
今にも魔法を放ちそうになっているドロシーをなだめてくれる。流石はナルヴィ、マジ天使!!まあ、実際の俺は爆乳に誘われたらすぐエッチなことをしてしまうんですけどね!!
彼女に感謝していると目があった。
あれ、だけどちょっとすねているような……
「なので、今から私たちが納得できる答えを教えてくれると思いますよ、ね、グレイブ様」
心なしか、ナルヴィのハイライトも消えている気がする。
あれ、これ助かって無くない?
なんだよ、ビキニアーマーの女とイチャイチャしているのに正当な理由って!? あるわけねえだろ!! だけど、ここで選択肢を間違えたら、ナルヴィとのハーレムフラグがへし折れし、ドロシーがやばいって本能が訴えてくる。邪神に殺される前にこいつに殺されそう……
どうしようと悩んでいるとベロニカがまかせろとばかりにウインクをする。
「ふふ、我が主は愛されているね。安心してほしい。これは我々アテナ騎士団が主に忠誠を誓う儀式なのさ。主に服従のポーズを示して、それを認めたら抱きしめてもらうのさ」
アテナ騎士団は雌犬かなんかなのか? もちろん、そんな儀式はない。ゲームのアテナ騎士団の子とはそんなことはなかったしな……
二人も信じられないとばかりに俺たちをジト目で見つめていたが、ベロニカが胸元から取り出した紋章をとみると驚愕の声を上げた。
「な、この紋章はアテナ騎士団の……本当にこの方はそうなんですかお兄様?」
「かの高名なアテナ騎士団の騎士の主になるとはさすがです、グレイブ様」
ベロニカの言葉に二人が納得してるぅぅぅぅぅ!! アテナ騎士団のネームバリューすげえな……そして、ベロニカに口パクで「ありがとう」と伝えると、顔を赤くしてはにかんでくれた。可愛いな、おい。
「そういえば、ドロシーは何があったんだ? やたら急いでいたみたいだが」
「ああそうだ。盗賊ギルドの方からナナシからのお手紙だといただいたんです。なるべく早めに渡してほしいと」
そういえばナナシに感謝の言葉を伝えられなかったなと思いながら手紙の封をきると俺は思わず言葉をうしなった。
なぜならそこにはたった四文字だけあったのだ。
「タ ス ケ テ」
と……
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それではまた明日の更新で
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