第21話 ベロニカ=パラス
私……ベロニカ=パラスは王国騎士団の副団長であり戦場で活躍する父にあこがれて、騎士をめざすべく幼少のことから様々な特訓を受けていた。
幸いにも剣の才能はあった上に早いころから加護に目覚めたこともあり、男性にも負けることなく優秀な成績で高名なアテナ騎士団に入団することができた。
凛々しいと言われる顔とその強さから、かっこいい騎士様などとみなにはちやほやされていたが、私には人にはいえない秘密があった。
そう……私は他人に罵られたり侮蔑の目で見られるのを想像すると興奮するのである。昔、父が隠し持っていた捕らえられた女騎士がオークにエッチなことをされるのを読んだのがきっかけだと思う。
下劣な魔物に誇り高き騎士が悔しそうに凌辱されるのを見てとても興奮したものだ。それ以来、私は訓練で苦しい想いをするたびに、相手に凌辱されていると思うことで乗り切ってきた。
そして、私に加護を与えし、神ゼロスのスキル『激情のリピドー』は感情が昂れば昂るほど身体能力が高くなるもので、私の性癖ととても相性が良かった。
その結果私の戦闘力と周りの評価はどんどん上がっていった。
逆転の騎士などと呼ばれているが、負けてエッチなことをされるのを想像して勝手に強くなっているだけである。
だが、そんな順風満帆な私にも大きな問題があった。
「私の主となってくれる人間はいるだろうか?」
アテナ騎士団は基本的には王国の貴族ならば誰に仕えるかは自由であり、心から信頼できる相手を主にし、一生を捧げるという規則がある。戦闘力と容姿を見て誘ってくれる人は確かにいる。だけど、それは偽りの……かっこつけている私に過ぎない。本当の私を見たら軽蔑するに決まっているのだ。そして、私は主となる人物には嘘をつきたくないのである。
そんな風に悩みながら任務でキチーク男爵の元に潜入していた時に私は運命の人と出会った。
それがグレイブ=アンダーテイカーである。
元々彼のことは父から聞いていたが、私と同様にキチークのたくらみに気づいていたらしく、ピンチになり興奮していた時に、出会った。
敵のふりをして、私をののしる彼の言葉と欲望に満ちた瞳はマゾ心をとても刺激してくれて、私はより強い興味を持ち、助けられたあとも彼と同行することにした。
「俺が鎧を作るから着てくれ。女の子なんだから、傷とかのこったらいやだろ?」
「へぇ……幼いころから男にもまけなかった私を女扱いするのか。やっぱり聞いた通り君は面白いな」
すでにキチークを追い詰める手腕に感心していたが、彼がつかえと言って渡してきたのはビキニアーマーであった。こんなものを着て戦うなんて痴女以外の何物でもない。
優しい言葉をかけてからのこの仕打ちに、本能が訴えてくる。
『ああ、この鬼畜っぷり……この人こそが私の主にふさわしい!!』
賢い彼のことだ。私のスキルも知っており私が最も興奮する状況と服装で戦わせてくれるということだったのだろう。あと、彼も私に獣のような欲望に満ちた目を向けてくれているのもうれしかった。彼は一般的に変態といわれる性癖を持つ私を引かずに女と見てくれているとわかるからだ。
だけど、彼には自分を見せすぎた。彼が私を欲しがってくれるか不安だった。
キチークを追い詰めた私たちだったが、やつの最後のあがきによって窮地にたたされる。結界魔法とお香である。
絶体絶命のピンチに、私はグレイブを守るために身をささげることを決意する。優秀な彼を守れれば私の貞操くらい安いものだと言い聞かせていると。
「お前……こわいのか?」
私の恐怖に気づいてくれたのだ。そりゃあエッチな妄想はするがあくまで妄想である。実際ろくに知りもしない男に襲われるのは抵抗がある。彼はそんな誰にも見せない私の弱い部分にも気づいてくれたのだ。それが本当にうれしかった。
だから、彼だけはこの身を犠牲にしてでも救おうと思ったのだが……
「勝手にあきらめんなよ、ベロニカ!! 十分お前は魅力的だぜ!! だから、お前は俺のものになれ。そして、主は部下を守るものなんだよ!!」
私の変態なところも弱いところも知ったうえで彼は私を自分の騎士にしたいと言ってくれたのだ。そして、理解した。私がマゾならば彼はエスである。私が常人とは相いれない性癖をもっていたように彼もまた、歪んだ性癖を持っているのだろう。
だが、ここで私たちは出会った。出会うことができた。彼ならば私のマゾ心をまんぞくさせてくれるだろう確信したのである。
援軍が来なかったら嬉しさのあまり抱き着いていただろう。そして、そのままグレイスとおっぱじめていたかもしれない。
そして、彼がキチークにとった作戦も実に変態的なエスっぷりでよかった。
「違うぞ、言ったはずだ。ベロニカは俺のものだと。こいつが襲うのは……お前だ!! お前にも穴はあるんだよぉぉぉぉ!!」
そして、彼のゴーレムはキチークとエッチなことを始める。男同士というのは書物の中だけでしか知らなかったがなかなか衝撃てきだった。特にドロシーさんはガン見していたのが印象的ですらある。
それにしても、ピンチだったとはいえ、あんな公衆の面前で自分の裸体を模したゴーレムをさらけ出し、性行為をするとはなんという変態的で最高なのだろうか。
もしも、彼と結ばれたら自分はどんな変態的なことを要求されるか……想像するだけで興奮して大変だった。
そして、邪神にすら強敵だと認識される強さも魅力的だ。心優しく正義感にあふれているけれど、やばい性癖をかかえており、私の本当の姿を認めてくれる。私は……彼の願い通り、彼の騎士になることを決めた。
そう、彼にならばすべてをささげてもいいと思ったのである。彼は私のマゾ心をどう満足させてくれるだろうか……楽しみで仕方がない。
グレイブ君の貞操の危機が……
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