第34話 新たな防具

 いつもとは違いオシャレしているベロニカと俺は街を歩いていた。デートとはいっても向かうところは武器屋である。さすがにいつまでもビキニアーマーというわけにはいかず、彼女がしっくりくる鎧や武器を買おうとなったのである。



「それにしても、ベロニカがそんな恰好をするなんて珍しいな」

「ああ。私が主と一緒に買い物に行くと言ったらね、たまには女の子らしい恰好をしろと助言をされたのさ。似合わないっていうのにね……」



 苦笑しているベロニカだったが、その姿はいつもとは違いなんともかわいらしく見えるから不思議なものである。



「たまにはこういう格好もいいと思うが? かわいいと思うぞ」

「……主よ、私はいじられるのは大好きだが、こういうふう風に褒められるのは苦手なんだよ……本気にしてしまうぞ」



 いつものように奇声をあげるでもなく、本当に恥ずかしそうに顔を赤らめて目線をそらすベロニカになんか変な気持ちになってしまう。最初の彼女のイメージはこうだったんだよなということを思い出す。


 だけど……今の俺はちょっと物足りないなと思ってしまうのだから、ちょっと毒されている気がする。



「ご主人様がほめているというのに、なんだその態度は……しつけのなってない雌犬だな」

「んん……!! 理不尽な罵倒!! ああ、やはり私はこういう扱いのほうがしっくりくる……さすがだね、主よ!!」



 ベロニカは先ほどとは違い満面の笑みを浮かべると、俺にその豊すぎる胸元をおしつけるようにして腕に抱き着いてくる。そして、俺もこっちの方がしっくりくるななどと思ってしまうのだった。そんなことをしている間に武器屋にたどり着く。



「へぇー、結構品ぞろえはしっかりしているね」

「ああ、父上の方針でな。いつ戦争になってもよいようにと武具はそろえてあるんだよ。とはいえここまでとはな……」



 地方の領地にしては豊かすぎる品ぞろえに俺とベロニカは感嘆の声をあげる。鎧はもちろんのこと盾も何種類もある。このうちのいくつかを買って構造を学べば、今後は自分で作れるようになるのもよいかもしれない。



「店主よ、これとこれを頼む。あと、この盾の構造はどうなっているんだ?」

「ああ、これはですね……」



 一生懸命説明を聞いていると、じーっと視線を感じる。何やら楽しそうにほほ笑んでるベロニカと目が合った。やっべえ、一応はデートだというのに、集中しすぎた。



「悪い、ベロニカ。お前の防具を見に来たのに……」

「ふふ、きにしないでくれたまえ、一生懸命な主を見ているのは嫌いじゃない。私は私で自分に合うものを探しているよ」



 男前なことを言うとベロニカは鼻歌を歌いながら店の奥へと入っていった。彼女に感謝しながらその言葉に甘えて、いろいろと勉強することができた。そして、ひと段落ついたこともあり、彼女を探すと何か見つめながら目を輝かしていた。



「ベロニカ、またせたな。お詫びになんでも買うから遠慮なく……」

「ああ、主!! 私の理想の防具を見つけたよ!! これを見てくれ!!」

「……」



 俺が言葉を失うのもむりはないだろう。だって、彼女がキラキラとした目で差し出したはまるで下着のような胸元と腰回りのみを覆うぬのっきれだったからだ……



「これは……なんだ?」

「ふふふ、なんと「魔石の水着」というらしい。どんな効果があるかわくわくすると思わないか? 私の加護との相性も最高さ!!」

「もっと露出度あがっているじゃねえかよ!!」



 ビキニアーマーからビキニになっちゃった!! 余計な鎧部分がない分よりエッチである。ちょっと動いたらいろいろと見えてしまいそうなくらいに……




「主はこれを着た私をみたくないのかい?」

「いや、見たいが? なんなら延々と剣をふるっているところを見ていたいが?」

「うわぁ……獣のような目線最高だね♡」


 絶対胸がブルンブルンと揺れると思う。まさに天国である。だけどさ……



「その……俺はお前に傷ついてほしくないんだよ…だからさ……ちゃんとした防具を身に着けてほしいんだ」

「ふふ、主よ、それならば問題はない。これはね……布に見えるけど魔鉱石という魔力の込められた鉱石でできているんだ。全身に魔力による結界があるからそこんじょそこらの鎧よりも頑丈だし、危険はないのさ!! そのかわり金額もなかなかだけどね」



 確かに他の防具に比べてかなり高い。というか一桁多い。まあ、正直金はあるからそこはいい。



「いや、でも……」



 それはいいが、俺は水着姿を女の子を戦わせるのか? 正直ビキニアーマーをつけさせているだけでもやばいやつだというのに、配下の騎士に水着姿で戦わせるなどと噂が流れたら……迷っている俺にベロニカが怪しくささやく。



「主はこれを身に着けて戦う私の姿を見たくないのかい? そして、夜にはこれを着たまま主の寝室にも行くとしよう。主だけがみれるんだよ。皆がこの水着の中身がどうなっているのかと妄想している中身をさ……」



 その言葉に俺は……






「ふっふっふ、主はやっぱりスケベだね。結局買ってくれたじゃないか」

「違うって、俺は魔鉱石が気になっただけだ。強力な魔力にこんなふうに細かく加工できる素材だからな。俺の加護のために買っただけであって、決して下心はない。布に近い材質だからばるんばるんに揺れる胸とか、後ろから見ているとおしりがぷりぷりふるえるなぁなんて決して思っていないからな」

「さすがに必死過ぎないかい?」



 俺の本心を聞いたベロニカだったが、珍しく引いた様子で苦笑している。いやいや、本気なんだって……スケベな気持ちはちょっとしかない。



「とりあえず小腹もすいたし、そこのカフェでも入ろう」

「おやおや、そんなふうにごまかすとは図星だったようだね……今夜はどんなおしおきをされてしまうのだろうね♡」



 なぜかほほを上気させたベロニカと適当なカフェに入った時だった。俺は目の前でカレーを食っている女を見て、思わず固まってしまった。



「激辛というからどれくらいのものかと思いきや、この程度とは……想定の範囲内だ。まったくもってつまらない……ん……?」

「お前は……イザベラ……?」



 まさかの六奇人の襲撃に俺は警戒して剣を構える。



「ああ、会いたかったよ。わが試練!!」

「私の主に何か用かな!!」



 なぜか親し気に満面の笑み浮かべていて……間に入ったベロニカが睨みつけるのだった。






変態と変態が会合してしまった




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