第2話 このアプリは本物なのか?

「……白」


「え?」


「だから……今日は、白色のパンツ履いてる」


「ん?」


 あれ? なんか流れ変わってないか?


 俺が催眠アプリを見せつけながら下着の色を問うと、恵理は羞恥の感情で顔を染めながらそんな言葉を口にしていた。


 ただのツッコミ待ちで使った催眠アプリ。返答として返ってきたのは、下着の色でした。


「え、マジで?」


「……まじで」


 俺をからかっているのか? いや、からかうだけなら、こんなに恥ずかしそうにはしないだろう。


 それに、ノリツッコミをするにしては時間が経ち過ぎだ。


 そうなると、本当に白色のパンツを履いているということだろうか?


 白色のパンツがすぐそこに……


 いや、幼馴染が純白のパンツを履いているということよりも、気にしなければならないことがあった。


 もしかしたら、このアプリは本物なのかもしれないという疑惑が浮上してきた。


 初めはダメ元で使ってみた催眠アプリが実は本物だった。それは数々のエロ画像やエロマンガであるあるの展開。


 つまり、その展開の中に俺は片足を突っ込んでいるということか?


 これは、確認せねばならないだろう。


 このアプリを手にしてしまった者の義務として、このアプリが本物かどうかを確かめなければならない。


「……確認だ。あくまで確認のためだからな」


 俺はベッドに座り直して、俺の正面に立つ恵理にじっと視線を向けた。


 全身を捉えながら、集中すべきは恵理のスカートの裾。


 俺は小さく咳ばらいを一つすると、真面目なトーンで言葉を続けた。


「……スカート、たくし上げてみてくれないか?」


 催眠アプリを見せつけながらそう言うと、恵理は体を小さくぴくんとさせた。


 それから少しして、ゆっくりと両手の指の先がスカートの裾に向かって行き、小さく裾の部分を摘まんだ。


 恵理は先程まで赤かった顔を数段階も赤くさせて、微かに瞳を潤ませているように見えた。


頬の熱に当てられて揺らされたような瞳は、いつの間にか俺から逸らされている。まるで、これからパンツを見られる未来を想像してしまったかのように。


 ゆっくりとスカートの裾が持ち上げられていき、普段隠れている部分が徐々に露になっていった。


 程よく引き締まって、白くて滑らかな肌触りがよさそうな太もも。


 太ももと表現するには、あまりにも女性を感じ過ぎる内もものラインと、お尻の方に向かう近づく外のライン。


 そんな普段露にならない部分が恵理の手によって、露になっていく


 俺はその光景を前に、思わず生唾を呑み込んで見入っていた。


 その視線を感じ取ったのか、下着が見えるギリギリのラインで恵理の手は一度停止した。しかし、『催眠アプリ』の効果が効いたのか、そのまま恵理は俺に自らの下着を見せつけるようにスカートの裾をたくし上げていった。


 そして、俺の目の前には純白のパンツが現れた。


 見えたのはパンツの下の方だけ。


 内ももが下着の方に向かって収束していくラインと、パンツの下にできている微かなシワ。


 そのシワが今見ている景色が本物なのだと告げてきているようで、俺はそのシワとその先にあるであろう景色を透視でもするかのようにじっと見入っていた。


「っ」


 俺は胸の奥の方にある熱い何かを沸々とさせられて、気がつくと結構な至近距離まで寄っていた。


 鼻息でもかかってしまったのか、恵理は微かに息を漏らすような声を出していた。そんな漏れ出たような息が妙にエロく、俺の心臓の音を加速させた。


 一瞬、距離を取ろうと考えたが、今恵理は催眠に掛かっている状態。それなら、別に距離を取らなくてもいいだろう。


 俺はそのまま距離を離さず、しばらくの間パンツと至近距離で向かい合っていた。


 これだけ見られても、何も反撃をしようとしない。


 そうなると、考えられる答えは一つ。


 この催眠アプリ、本物だ!!


 俺は初めて手にした本物の催眠アプリと、目の前に広がる幼馴染のパンツを見て興奮を隠せないでいた。




 そんなふうにウキウキ気分で学校に向かった俺は、予想外の洗礼を受けることになるのだった。


 当然、そんなアプリを手に入れたら色々と試したい。それこそ、自慢だってしたい。


 このアプリが一つあるだけでエロ漫画の中の主人公にだってなれるし、それこそ世界を牛耳ることだってできるかもしれない。


 そんな男の妄想を具現化したようなものが、俺のスマホの中にある。テンションが上がらないはずがないのだ。


 そう思った俺は、教室に入るなり友人の元に駆け寄っていった。


そして、朝の挨拶を程々に自慢げに口元を緩めながら、俺は催眠アプリを起動させたスマホを片手にドヤ顔をして言葉を続けた。


「実は、本物の催眠アプリを手に入れたんだ。首を垂れろ、太郎」


「いや、垂れないから」


 ……あれ? おかしい、確かに恵理には効いたのに。


 偶然、偶然太郎がかからなかったってだけ、だよな?


 次、いってみよう!


 次の休み時間、俺はクラス委員長を見つけたので、さっそくスマホの催眠アプリを片手に決め顔と共に口を開いた。


「委員長! これを見てくれ! さぁ、手始めに何をしてもらおうか」


「なにこれ? 催眠って……啓介くん、暇なら教材運ぶの手伝ってもらえます?」


 ……つ、次。次だ!


「先生! これを見てください! それでは、大人の体験談を話してもらっていいですか?」


「なんだこれ、催眠……はぁ。ちょうどいい、お前には『ネットが与える子供への影響』についてレポートをまとめてきてくれ。あと……大人がみんな体験談を持ってると思うなよ」


 本物の催眠アプリを使ってみた!


 その催眠アプリを使った結果……得られたのは委員長の手伝いをした労働の疲れと、レポート用紙2枚という結果に終わった。


 あれ? このアプリ本物じゃなかったのか?


 確かに、ダウンロード数も低いし、評価が付かないくらい信用ならないアプリであることは認めよう。


 それでも、女の子にスカートをたくし上げさせるだけの強制力を持った、男の夢を叶えるアプリであることは今朝証明されたのだ。


 確かにその認識で間違いがないはずだ。恵理にスカートをたくし上げてもらったのが夢だったなんてことはないはず。


 夢にしてはしっかりとし過ぎだし、あれは現実に起きたことだ。


 それだというのに、今日試した三人にはそのアプリが効かなかった。これは一体、どういすことだ?


「あっ」


 起きた事象を脳内で並べて考えていく中で、俺は一つの可能性にたどり着いたのだった。




 帰宅した俺はいそいそとレポートを書きながら、台所で夕食の準備をしてくれている恵理にちらりと視線を向けた。


 確かに今朝は催眠が効いていたはず。それなのに、他の人には効かない。


 そこから考えられることはーー。


「恵理、ちょっといいか?」


「んー、なに?」


 エプロンを外してとててとこちらに駆け寄ってきた恵理は、突然呼ばれたことに対して小首を傾げていた。


料理の途中で呼んでしまったのは申し訳ないが、試さずにはいられない。


 このアプリが本物であるかどうかを確かめるためにも!


 俺は立ち上がると、恵理に催眠アプリを起動した画面を見せた。


 一瞬、肩をぴくんとさせた恵理だったが、それ以上は何か言うことなく、俺の反応を待っているようだった。


「スカートをたくし上げてみてくれ」


 俺がそういうと、恵理は少し恥じらうようにもじりと動いた後、何か言いたげにこちらに視線を向けてきた。


 その視線に逸らさずに見つめ返すと、恵理は恥ずかしそうに視線をこちらから逸らした後にスカートの裾を摘まんで、ゆっくりとスカートをたくし上げた。


 今回は位置が少し低かったせいか、俺が直立してる状態だからか分からないが、パンツを拝むことはできなかった。


 いや、今回はパンツを見るためにたくし上げさせたのではないし、問題ない。


「やはりか……」


 恵理の態度を見て、もしかしたらと思っていた疑惑が一気に確信に変わったのだった。


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