第34話 変わっていく意識

最近、幼馴染の恵理のことを見る目が完全に変わってしまっていた。


 催眠アプリを手に入れて、そのアプリを使って恵理に少しえっちな命令をし始めてから、恵理のことを異性として意識し始めていた。


 スカートをたくし上げさせて、毎朝パンツを見せてもらって、他にもブラジャーなどを見せてもらうこともあった。


 確かに異性として意識はしている。それでも、それが恋愛感情によるものなのか、性欲から来るものなのか分からずにいた。


 まぁ、分からないのなら別に急ぐ必要はない。そんなことを考えて、ゆっくりと考えていこうと思っていた矢先、思わぬ事態が起きた。


 俺は帰りのホームルーム中、ちらちと恵理の方に視線を向けた。


 無邪気でクラスメイトの男子からは犬っぽいなど言われている恵理。下ネタとかあんまり知らなそうで、明るく真面目な女の子。


 ……真面目な、女の子?


 いや、幼馴染の男子に催眠をかけて服を脱がせる命令をするえっちな女の子が、真面目なわけないだろ?!


 俺はそこまで考えたところで、頭を机にぶつけて小さく唸るような声を上げていた。


 そう、昨日お風呂を借りに来た恵理に催眠をかけられた俺は、入浴をする恵理の服を脱がせるというお手伝いをしたのだった。


 制服姿の恵理の服を脱がせて、ブラのホックまで外して、挙句の果てにはパンツを下ろす寸前までいったのだ。


 俺が恵理の下着を見てもなんとも思わないと言ってしまったのが悪かったのかもしれないが、そうだとしてもやり過ぎだろ?! こちとら思春期だぞ?!


 昨日恵理が家に帰ってからも、昨日の恵理の下着姿とかブラジャーでおっぱいを押さえている映像が頭から離れず、いよいよ恵理にいかがわしいことをする夢まで見てしまった。


 ……これは、ヤバいよなぁ。


 恵理のことを異性として意識して、女の子として見ている。


 それは明確で否定できない事実ではある。


 けど、これは恋心なのだろうか?


 性欲と恋愛感情の違い。それについては未だに俺は分からないらしかった。


「啓介くん」


「お、おう、恵理」


 いつの間にか帰りのホームルームは終わっていて、いつも通り恵理は俺の机まで来ていた。


 栗色のツインテールをぴょこんと揺らして、少し色っぽい瞳をこちらに向けてーーん? 色っぽい?


 やばいな。一瞬、普段俺に催眠をかけている恵理の姿に引っ張られて、普段の学校での恵理の瞳を見て、色っぽいとか思いそうになってしまった。


「じゃあ、帰るか」


「えっと、先に帰っててもらってもいい?」


「ん? 何かあるのか?」


「ちょっと……呼ばれちゃってね」


 申し訳なさそう顔をして頬を掻く表情を見て、なんとなく恵理の用事について察しがついた。


 というのも、このパターンは何度か見ている。


「告白か?」


「……うん、多分そういう感じだと思う」


 ここまではいつも通り。恵理は結構人気のある女の子だから、こうして男子に告白されることも珍しくはない。


 だから、基本的にこういうときは俺は先に帰ることになっているのだ。


『そっか。じゃあ、先に帰ってるわ』


 大抵そんな言葉を残して、俺は一人で帰路につく。そんなふうにいつも通りの言葉を口にしようとしてーー


「付き合いはしないんだよな?」


「え?」


 ん?


 いつものように特に深く考えずに口にした言葉。その言葉が何だかいつもと違っているような気がして、俺は少し疑問を覚えた。


 聞き間違いだろうかと思ったのだが、どうやら俺の言葉に驚いているのは俺だけではんなかったらしい。


 ちらりと恵理の方に目を向けると、恵理は俺の返答がよほど意外だったのか、少しの間ポカンとしていた。


「え、えとっ、多分」


 恵理は目をぱちくりとさせた後、俺からの視線を受けてくるりと俺に背を向けてそんな言葉を口にした。


「それじゃあ、行ってくる」


「お、おう」


 恵理はそう言い残すと、こちらを振り返ることなく教室を後にした。


 ……今、なんで俺はあんなことを言ったんだ?


 この手のやり取りは何度かしたことがあるが、いつも告白が終わった恵理にその男子の少し情報を聞くだけだ。


 それは、恵理が誰かと付き合うという未来が想像できず、付き合うのか聞くまでもないぁらだった。


 だから、こんなに食い気味で踏み込んだ質問をしたのは初めてかもしれない。


 気になっているのか? 恵理が誰かと付き合ってしまわないのかということを。


 あれ? そういえば、さっき多分って返ってこなかったか?



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