第33話 着替えを手伝わせるだけのはずが。②

 玄関から歩いてすぐ、私は宣言通り啓介くん家の脱衣所に啓介くんと共に入ってしまった。


後ろでは、啓介くんが脱衣所の扉を閉めた音が聞こえてきて、その音が私の作戦開始の合図となった。


 ……あれ? 思った以上に恥ずかしいんじゃないの、これ?


 私は自分の心臓の音以外に何も聞こえない空間を前に、思いもよらなかった動揺をしていた。


 羞恥心によって高められた体温が熱くて、私の中にある何かがその熱によって着実に温められている。


 羞恥心と啓介くんにえっちな姿を見られてしまうという状況によって生まれた疼きが、私の体に徐々に浸透していくのを感じる。


 ……この気持ち、あんまり長く感じてたらダメな奴だ。


 私はその感情が暴走してしまう前に動こうと思って、振り返って啓介くんの顔を覗き込みながら言葉を続けた。


「じゃあ、啓介くんに脱がせてもらおうかな」


「っ!」


「私の下着を見ても、何も思わないならできるよね?」


 私はトートバックを床に下ろすと、意を決したようにそんな言葉を口にした。


 羞恥心によって熱くなった顔をそのままに、少しだけえっちな感情がバレてしまわないように隠しながら、私はそんなこと口にしたのだった。


 目に見えて動揺する様子を見せられて、ぞくぞくっと来てしまいそうな感情を抑えながら、私は啓介くんの行動を急かすように言葉を続けた。


「け、啓介くんっ」


 抑えるのが難しくなってきた感情によって、私の言葉は上擦ったようなものになってしまっていた。


 熱くなり始めてきた体によって、啓介くんを見る目が少しだけいつもと違うものになるのを感じながら、私は何かを欲しがるような目をしていたかもしれない。


 啓介くんはそんな私に促されて、そっと私の腰付近に手を伸ばすと、そのままスカートのフックを優しく外した。


「っ」


 腰に触れた啓介くんの指の感触と、温度を感じながら、私は普段触られることのない所を触られて、微かに体を跳ねさせていた。


 啓介くんの表情をじっと見つめると、啓介くんも私と同じことを感じたのか、その顔を赤くしていた。


 ……啓介くん、照れてるんだ。私の腰に触れちゃったくらいで。


 そんなピュアな反応が私の中の何かを掻き立ててきて、私は静かに唇をきゅっと閉じた。


私が見つめる中、啓介くんは私のスカートのファスナーをゆっくりと下ろしていった。私を焦らすようにゆっくりと下げられていき、私は微かに呼吸をする息を熱くされていった。


 そして、啓介くんはスカートのファスナーを下ろしきると、スカートを床に落とした。


 露にさせられてしまったのは、私のパステルグリーンのパンツ姿。


 それを見た啓介くんは、私が見ているという状況だというのにすぐ側まで近づいてきて、私のパンツをじっと見つめていた。


 パンツとそこに近い太ももに向けられている熱視線。


 準備してきた物だけあって、啓介くんの食いつきはここ最近の中で一番良かったかもしれない。


 熱い鼻息を一定リズムで吹きかけてきて、それに負けないくらいの熱視線を私の大事な所に注いでくる。


 真剣に本気で興奮している姿を見せられて、感じさせられて、私はその姿を見つめながら体温を高めていた。


「っ」


 抑えることが難しくなった吐息が漏れてしまっても、啓介くんは私のパンツに魅入っていた。


 目に見えて興奮されると、そこまで悪い気持ちはしなくなってきた。


 もう少しだけ見られても悪くないかなと思って、私は啓介くんからの熱い視線と鼻息を受けながら、きゅっと脚を少しだけ内側にしてそれから耐えるようにしたのだった。


 それから、十分くらいの時が過ぎた。


「……啓介くん、まだワイシャツ、脱がされてないんだけど?」


 いつもならもっと耐えられたかもしれない。


 でも、いつになく熱の込められた視線と、鼻息にくすぐられて私は限界が近くなっていた。


 頭の中をとろんとさせられて、私はこれ以上パンツを見られるのは少し危ないかもと思って、なんとか視線の誘導先を変えることにした。


 これ以上見られ続けると、色々と押さえ込んでおく自信がなかったのだ。


 私の声を聞いて、啓介くんは私の顔を下から覗いた後にすくっと立ち上がった。


 そして、私はあることを失念していた。


 ワイシャツを脱がせるという行為をすると、啓介くんの指がどこに当たってしまうのか。それを計算に入れていなかったのだった。


 しかし、すでに計算などできるほど頭の中は冷静になどなっておらず、とろんとさせられてしまった頭ではただ当初の計画に乗ることしかできないでいた。


 今から作戦を修正させることはできないのだ。


 ……それなら、もう仕方ないよね。


そんなふうに考えている私のワイシャツに、啓介くんの指が触れてきた。


「っ」


「……」


 見て分かるくらい興奮し過ぎているような目を向けられて、私は胸の奥の方にある感情を抑えるのに必死になっていた。


 ボタンは徐々に外されていって、すぐにおっぱいの近くのボタンに手が伸びてきた。


そして、ワイシャツ越しに私のおっぱいに啓介くんの指が触れた。


「~~っ」


 まだ露にもさせられていないおっぱいに熱い視線を送られながら、少しだけ指を押し付けられている。


 触るのではなくて、触れられているだけ。


 男の子がおっぱいに触れて興奮するのは分かる。けど、触れられた方がこんなに息を熱くさせているはどうなのだろう。


 私は微かに漏れてしまっている吐息を抑えようとして、息を浅くするようにした。


しかし、それが悪手だったらしく、発散できなくなった熱はそのまま私の体に残って、頭をとろとろにしていく熱へと変わった。


 ……ボタン、ゆっくり外してる。もっと触っていたいんだ。


 そんなことを意識してしまって、私の胸の中にある何かが強く刺激されてしまっていた。


 徐々に露にさせられえていくパステルグリーンのブラジャー姿。


 啓介くんは少しできたワイシャツのすき間から覗き込むように見てきて、私のその姿を見たい欲求に逆らえなくなったように急いでボタンをすべて外した。


 そして、私の肩にかかっているワイシャツをはだけさせて、それを床に落とした。


 そうして、私は啓介くんの前で上下ともに下着姿にさせられてしまったのだった。


 啓介くんの顔を見るまでもなく、熱視線をおっぱいに向けられているのが分かった。


本気で興奮して、本能的な部分を刺激されて性的な感情をぶつけられているような気がする。


 啓介くんに制服を脱がされて、下着姿にさせられてしまったという状況。私の下着姿を見て、本気で興奮してしまっている啓介くん。


 やばい、どうしよう。


……自分でも驚くくらいに興奮してしまっている。


 啓介くんの熱い鼻息を吹きかけられて、啓介くんの指を押し付けられて、熱視線を向けられ続けられて。


 そんなふうに長時間焦らされ続けて、頭がとろとろにさせられてしまって、私の息遣いは荒く熱いものに変えられてしまっていた。


 そして、それは啓介くんも変わらなかったみたいで、私のおっぱいにそっと手を伸ばしそうになっていた。


「っ!」


 しかし、啓介くんはまた私のおっぱいに触れる前にその手を止めて、私を確実に焦らしてきた。


 私を期待だけさせて、ただただ焦らしてくる。


そんな態度を前に悶々とした気持ちは高めらえてしまい、熱に浮かされたような感じになっていた。


 ……そうだ。ここで作戦は終わりだった。啓介くんには脱衣所を出ていってもらって、あとは啓介くんの妄想に任せることにしよう。


 頭の中では分かっていた。そうするべきだし、これ以上先を求めたら私は変態になってしまう。


 でも、そう思えば思うほど鼓動が速くなっていって、上がりきった熱が私の背中を押そうとしていた。


 そういえば、私がお風呂を貸して欲しいと言った時、啓介くんは少し余裕そうな顔をしていた。


 もしかしたら、このまま啓介くんを脱衣所から出したら、前と同じように私だけどきどきした思い出になってしまうかもしれない。


 というか、下着は今まで見られているんだから、これだけじゃ今までと変わらない。


 これはチキンレースだから、仕方がない。


わ、私がこれ以上のことをして欲しいとか、そんなんじゃないから、私は悪くない。


 私はそんな言いわけと共に、誤魔化せないくらい心臓の音を大きくしていた。


これから先のことを考えて、興奮して呼吸が少し浅くなってしまうほど。


 だから、私は啓介くんの顔をじっと見つめた後、啓介くんに背中を向けた。


「……これだと、まだお風呂入れないんだけど」


「え?」


「ホック、外してよ。……啓介くん」


 掻き立てられた感情によって、私の声は熱に浮かされたような物になっていた。


うるさすぎるくらい大きくなった心音を聞こえないふりをしながら、私はこれから行為に及ぶ男女のような言葉を口にしていた。


 ……あ、あれ? 今なんて言った?


 ホック外してて言った? え、いやいや?! 今日はやり過ぎないようにするんじゃなかったの?!


 一瞬だけまともになりかけた思考によって、現状がもうこれから一緒にお風呂に入るルート一直線なことを察して、私は体を一気に熱くさせてしまっていた。


しかし、啓介くんがそんな私の心情など知るわけがなく、啓介くんの指の先が優しく私の背中に触れられた。


「~~っ」


 啓介くんの体温と指先の感触が背中に伝えさせられて、啓介くんはそのまま少しだけ躊躇いを見せた後、ブラジャーのホックに手をかけてきた。


 微かにブラジャーを弛ませてからホックが外されて、おっぱいを押さえつけていた力が緩められた。


 おかしくなったような心臓の音しか聞こえなくなりながら、私は緩んだ肩紐を外して、ブラジャーでおっぱいを隠すようにしていた。


 さっきまでの一瞬冷静になった考えは、どうやら熱に呑まれてしまったらしい。


 ……も、もしも、おっぱいを隠さなかったらどうなるのかな?


 心臓の音がうるさくなっている中で、私はそんなことを考えて一人でそのどきどきを加速させていた。


 そんなふうに一人で少し盛り上がって、すぐ後ろにいる啓介くんに何も言わなかったのがいけなかったのだと思う。


 後ろからそっと啓介くんが私の腰に手を置いてきた。


「っ!」


 え、な、何この状況?! 啓介くん何をするつもりなの?!


 予想しなかった事態に少しパニックになっていると、啓介くんが私のパンツにゆっくりと手をかけてきた。


 普段人に触られることのないパンツの内側と腰の部分。そこに啓介くんの指が侵入してきた。


「~~っ」


 指のちょと骨ばった部分が押し付けられて、男の子なんだと思うとともに、性的な衝動を抑えられなくなった啓介くんの行動を前に、私は色々と抑えが効かなくなってきた。


 啓介くんが本気で興奮して、私のパンツを下ろしたいと思っているという状況にひどく興奮してしまい、私はただ心臓の音をうるさくさせていた。


 ……まぁ、啓介くんがどうしてもパンツを下ろしたいっていうのなら、ね。


 そのまま待つこと数秒。啓介くんは焦らすように時間を使った後、ゆっくりとパンツを下ろしていった。


 徐々に下ろされていくパンツがお尻の割れ目くらいに差し掛かったとき、私はふとこのままパンツを下ろされたらどうなるのか想像した。


 そこで、一つ重大なことに気がついた。


 これだけ焦らされて興奮してしまっているとなると、パンツの中が大変なことになっている気がした。


 ……主にクロッチ部分とか。


「啓介くん。……パンツ脱がしてとは言ってないんだけど?」


「あっ」


 そのことに気づいた私は、パンツを下ろそうとしていた俺の手に自分の手を重ねた。


 私がただそうしただけで、啓介くんは何かにハッと気づいたように腰とパンツの間に入れていた手を引き抜いた。


「いや、えっと」


 顔を真っ赤にさせて言葉が出てこない姿を見て、私は胸の中にあるものをひどく刺激されてしまった。


 そして、私は十分に熱くさせられていた吐息交じりに、言葉を続けた。


「私の下着姿見ても、なんとも思わないんじゃなかったの?」


 私がブラジャーだけでおっぱいを抑えている姿を見て、啓介くんは私に興奮しているようで、熱すぎる性的な視線を向けていた。


私はそんな視線をむけられて、ぞくりとさせられてしまって口元を緩めていた。


 ちらりと視界に映っていた違和感を確認しようと、視線を少しだけ下に下げて、私は慌てて視線を逸らした。


 そして、そんな私の態度を見て啓介くんは慌てたように脱衣所を後にしたのだった。


 一人残された脱衣所で、私は先程の啓介くんのズボンの膨らみを見て顔を熱くしてしまっていた。


最後の最後ですごいものを見せられてしまった。


「……啓介くんのえっち」


 ま、まぁ、あれだけのことしておいて、無反応の方が悲しくなるから別にいいんだけど……あ、あんなに反応させるんだ。


 なんか少しだけ生々しい物を見てしまった気がして、私は何とも言えない気持ちにさせられてしまった。


 そして、啓介くんが脱衣所を出て少ししてから、私はパンツを脱いでクロッチ部分をそっと確認した。


「……私の変態」


 ボソッとそんな言葉を呟くとともに、あそこでパンツを下ろす啓介くんの手を止めたのはファインプレーだったと、少し前までの自分を静かに褒めたのだった。



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