第14話 女の子の脇を撫で続けるだけの馬鹿がいる?!

『今日は、プールの授業の後、下にずっと水着を着たままでいてくれ』


 なんであんなこと言ってきたんだろ?


 今日も朝から啓介くんに催眠アプリを使われて、私は啓介くんにパンツを見せてから登校した。


 パンツを見せた後の通学中って、結構啓介くんぎこちない感じになるんだけど、自分では気づいていないんだろうなぁ。


 なんというか、あんまり話したことのない女の子に話しかけられたみたいな感じになる。


 分かりやすく言うと、女の子と話してるときみたいな雰囲気にたまになるのだ。


 それだけ、私のことを女の子として意識しているのだと思う。


 ……まぁ、ここ最近毎日パンツを見せてるわけだし、多少は意識もするか。


 そんなことを考えながら、私は濡れたスクール水着の上から制服を着ているという現状に小首を傾げていた。


『家に帰ってからスクール水着を着て見せてくれ』だったら、分からないことはないけど、なんで一日中スクール水着を着せたままにしていんだろう?


 授業の間の休み時間。私は気になってスマホで検索してみることにした。


『男性 女性の服装指定』


 うーん。検索結果を見てはみたけど、服装の指定とは違うのか。


 デート服を指定してくる男性がいるとかいないとか、そんな記事があるだけだし。


 検索のワードを変えた方がいいかな?


『男性 女性の水着指定』


 うーん、これもやっぱり違うなぁ。検索ワード自体は間違っていないと思うんだけど、検索結果にいいのが出てこないし。


 もう少し検索ワードを変えてみよう。


『男性 女性の』 候補『男性 女性の下着を指定』『男性 女性の下着を把握することでの興奮』


 ん? なんか、検索ワードの候補で凄いのが出てきた気がする。


 別に、下着を指定されたわけではない。でも、啓介くんが私のパンツを毎日見て興奮しているのは間違いじゃないし。


 ……。


 私は少し考えた後、出てきた候補をタップして検索した。


 そして、一番上の検索結果をタップ。少しスクロールした先には、次のような文章が書かれていた。


『自分だけが知っているという優越感や、指定した物を身に着けているという征服欲が刺激されます。このサイトの筆者も、スケベな水着や下着を身に着けて、街中を歩くようにと命令をされたことがありました。その時の興奮した彼のいやらしい視線は、普段味わうものとは違って特別なものでした』


 す、スケベな水着? いやいや、スクール水着はそんなことないし、関係ない。……あれ? 調べてみると、なんかスクール水着はえっちだみたいな記事もある。


 そういえば、教室でスクール水着を着てるっていう状況って、なんか普通じゃないよね?


 え、ていうことは、今私って啓介くんに言われて、スケベな水着を着るように言われた状況ってこと?


『その時の興奮した彼のいやらしい視線は、普段味わうものとは違って特別なものでした』


 私は気がつくと生唾を呑み込んでいた。


 恐る恐る啓介くんの席の方に視線を向けると、ちょうど啓介くんと目が合った。


 じっとこちらに向けられている視線。それは私が教室でえっちな水着を着てるって唯一知ってる存在でーー


『いやらしい視線は、普段味わうものとは違って特別なものでした』


「~~っ!」


 え、えっちな視線で私のこと見てるの?! 教室で優越感と征服欲に浸りながら?!


 とてもそうは思えないんだけど、そう思ったらそうとしか思えなくなってきて、私は教室でそんな目を向けられているということに恥ずかしくなってきた。


 一気に顔の方まで熱くなってきて、私はその感情を誤魔化すようにぎゅうっとスカートを強く握っていた。


 ……ま、まだ見てるっ。


 それから、啓介くんの家に向かうまで、下校中含めて私はそんな目をちらちらと向けられ続けたのだった。


 啓介くん、さすがにこれは変態が過ぎるのでは?!




 そして、ようやくやって来れた啓介くんの家。


 部屋に入る前から啓介くんはそわそわしてるけど、もうお楽しみは終わったんじゃないの?


 そんなことを考えながら啓介くんの部屋に上がると、さっそくスマホの催眠アプリを起動させてその画面を見せてきた。


 なんか啓介くんウキウキ気分だけど、これ以上何をしようとーーえ、これ以上のことをするっているの? え?!


 私が少し警戒モードに入りそうになっていることなど知りもしない啓介くんは、私にスマホの画面を見せたまま言葉を続けた。


「下に水着は来てるよな? それじゃあ、制服を脱いで水着姿になってもらおうか」


 え、それだけ? 水着姿って……え、見たことあるよね、授業中とかに。


 私はそんな疑問を抱きながら、啓介くんに言われるがままに水着姿になるため、スカートのファスナーに手をかけた。


 あれ? なんか凄い見られてるんだけど。


 ただ水着姿になるだけ。それだけなのに、啓介くんは食い入るように私のスカートをじぃっと見ている。


 なんか、それだけ見られると脱ぎづらくなってくる。


 私は見られていることに少し緊張しながら、スカートのファスナーを下ろして、そのままスカートを床に落とした。


 ただの水着姿。それだというのに、啓介くんは必要以上に私の下の部分に視線を向け続けていた。


 ……授業中とか、そんな目で見てきたことなかったのに。


私はこれ以上変なことを考えないで済むように、少しペースを上げてワイシャツのボタンを外していった。


そして、スカートと同じようにその場にワイシャツを脱いで床に落とした。


 ただの学校指定の水着姿。そんな私を見た啓介くんはすぐに何かに気づいたように、鼻をひくつかせていた。


 そして、少しだけ感慨深そうに言葉を漏らした。


「すんすんっ……これは、中々」


「っ!」


 そんなことを言いながら、啓介くんは匂いを嗅ぐようにして私の元に近づいてきた。


 うそ?! そんなに匂うの?! ていうか……中々って、何が?! 汗の匂い?! 汗の匂いが中々なの?!


 プールの授業があったから、そんなに汗の匂いはしないだろうって決めつけてしまっていた。


 そうだ。むしろ、プールの後に啓介くんから変な目で見られ続けて、それで汗かいたんだ?! 絶対にそう、だから啓介くんが悪い!


 そんな私の必死の言い訳も口に出していないから届くはずがなく、啓介くんは先程の話題はすでに忘れたかのように、私の体をじぃっと見つめてきた。


「普段は授業中とか見れないからな。その分、じっくり見とくか」


「~~っ」


 啓介くんはそんなことを言うと、そのまま足先の方に視線を向けてきた。


 それからじっくりと必要以上に時間をかけて、ゆっくりと視線を上にあげていく。部分的に見るんじゃなくて、おへそ付近とかもじっくりと時間をかけて熱い視線を注いでくる。


 その視線を受けて、じんわりと体の中にある熱が表面に伝わってくるのが分かった。


 羞恥心だけでは片づけられないその熱を見ないフリして、私はただ一方的に視線を受け続けていた。


 それからおっぱいを経由して、鎖骨をじぃっと見た後に私の顔も見つめて、全てを眺め終えてから言葉を漏らした。


「いや、おっぱいがえろ過ぎるな。ブラみたいにワイヤーがないからか? ……こんなん、まんまおっぱいやんけ」


 まんまおっぱいなわけないでしょ?! 水着来てるから!!


 私の水着姿によく分らない評価を下して、啓介くんは私のおっぱいを凝視していた。


 なんでそんな分析したみたいな表現するかな。もっと普通に形が綺麗とか、そういう評価でいいんだけど。


「お、横から見ると大きさが改めて分かるな」


 どうやら、まだ私の水着の観察は続くらしい。


 啓介くんは私の水着姿を横から眺めると、まだ熱い視線を私に送っていた。


 でも、少し意外だ。まさか、啓介くんが私の水着姿にこんなに夢中になるなんて。


 それも、学校指定のスクール水着を着てるだけで、こんなに夢中になるんだ。


 ……今度、水着を買うとき一緒に買いに行ったら、結構真剣に悩んでくれるかもしれないかも。


 そんな期待をうっすらとしながら、私はちらりと啓介くんの方に視線を向けた。


「少し、腕を上に上げてくれないか? それで、そう、両手で両肘をもって……そう、」


 すると、啓介くんはそんな私の視線に気づくことなく、よく分らない指示をしてきた。


なんか上で手を組んで、腕を伸ばすような姿勢を取らされた。


啓介くんはそんな私の姿を見て、何かに納得したように息を吐いた。


 そして、小さく頷いた後に言葉を続けた。


「なるほど、脇に興奮する理由はなんとなく分かるな」


「っ!」


 脇? 脇に興奮するって言った? ていうか、なんでそんな達観したような言い方なの?!


「脇は、際どい所じゃないよな?」


 当然、そんな私の疑問に答えるはずがなく、啓介くんはそっと私の脇の下に指を這わせてきた。


「っ」


 ペタペタと触るのではなく、指の先とか腹の部分で優しくなぞるように触れてくる触り方。


 必要以上にゆっくりとねっとりと這っていく指の動きを前に、私は本来感じるはずがない感覚がすぐそこまでやってきていた。


 ただくすぐったいのではない触り方。熱い視線を注がれながら、真剣に刺激してくる指先を前に、私は微かに息を漏らしていた。


「んっ……っ」


「つるつるだな」


「っ」


「……あっちもつるつるなのかな?」


「~~っ」


 急に何言い出してんの?! 


 ちらりと下に向けられた視線がどこを見ているのか分からないはずがなく、私は無意識下で脚に少しだけ力を入れてしまった。


 そして、啓介くんは私の脇の下とか下に視線を向けたりしながら、ずっと脇の下を指先で撫でるように刺激をしてきた。


 初めは我慢で来ていたはずなのに、あまりにも長い時間脇の下だけを刺激され続けて、私の息は目に見えて熱を持ち始めてしまった。


 くすぐったさとは別の感覚で、小さく体が跳ねたりしてた私を見ても、啓介くんはやめることなく私の脇の下を撫で続けてきた。


 その時間は結構長くてーー




「普通、脇を三十分も触り続ける?!」


 家に帰宅して浴槽に浸かった私は、お風呂場で誰に言うでもない文句を口にしたのだった。


 ただ脇をくすぐられ続けただけなら、別にそこまで文句を言ったりはしない。あの触り方は、そういうじゃれ合うときの触り方ではなかった。


 私はそっと三十分間も責められ続けた脇の下を、指の先で撫でてみた。


「んっ……っ」


 そう、ただくすぐられただけなら、別に問題はなかったのだ。


「前は脇の下触っても、こんなにならなかったのに……」


 いつもと違った感覚を覚えそうになっている脇の下。おそらく、それは啓介くんに触られ続けたせいで覚えられそうになっている感覚。


「……これじゃあ、私がえっちな子みたいじゃん」


 私はそんなことを呟くと、そのまま浴槽の中に口まで浸かって、ブクブクという泡の中にそんな不満を閉じ込めたのだった。



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