第22話 どんな人にパンツを見られるかで、反応も変わるんですよ……

翌朝。私はいつものように啓介くんを起こすために、啓介くんの部屋に向かった。


 何も考えていなさそうに眠っている啓介くんの寝顔を覗き込んで、私はその寝顔を数分間だけ堪能した。


 いつもスカートをたくし上げた状態で長い間見つめられているのだから、それくらい問題はないはずだ。


 寝返りをうった啓介くんは、布団から片手だけを出していた。


 ちょうど私が昨日舐めた方の手だ……。


「啓介くん、早く準備しないと遅刻するよ」


 私はそれ以上のことを考えないで済むように、啓介くんを起こすことにした。


 あんまり長い間眺めていると、昨日のことを思い出しそうだったから。


「お、おう」


 私が少し体を揺するとすぐに目を覚ました啓介くんだったが、少しだけ私の顔を見て動かないでいた。


 一体、何を考えているのか。


 昨日抱きしめられたベッドの上で、抱きしめられた私がいて。


 多分だけど、昨日のことを思い出しているのだろう。何かを隠すように逸らされた瞳から、そんなことが安易に想像できた。


 昨日抱きしめられて、私は見ないフリをしていた感情に気づいてしまった。


 ずっと昔から一緒にいるのに、啓介くんのことを一人の男の子として見てしまっているという気持ち。


 久しぶりに見たら無視できないくらい大きくなっていた、恋愛感情というもの。


 それを自覚してしまうと、こうして啓介くんの顔を見ているだけで鼓動が早くなりそうだったので、私も啓介くんから視線を外した。


 昨日の出来事と、その感情を思い出さないようにするために、私は啓介くんに背を向けて部屋を後にしようとした。


「恵理、これを見てくれ」


「あっ……」


 しかし、振り返った先には啓介くんの顔と、催眠アプリが表示されているスマホの画面。


 そんな画面を見せつけられてしまっては、私は催眠にかかったフリをしなければならない。


 昨日、あれだけ手をぺろぺろした後に、『実は催眠にかかったフリをしてました!』はいよいよアウトだ。


 ……私が男の子の手舐めることが好きな変態だと思われてしまう。


 それに、最近毎朝してることだし、また命令されるだろうとは思って変なパンツ履いてこなかったから、いいんだけど。


「スカート、たくし上げくれ」


「っ」


 私はいつものように羞恥心を体で感じながら、そっとスカートの裾に手を伸ばそうとした。


 しかし、そこで不意にあることに気づいてしまった。


 これから、私は恋愛感情を抱いている相手にパンツを見せようとしてるってこと、だよね?


 そう思った瞬間、いつも以上の恥ずかしさが急に押し寄せてきた。


 ただの幼馴染に対してではなく、自分のことを良く思って欲しい人に、自らパンツを見せつけようとしているのだ。


 当然、いつも以上に緊張だってするし、いいなと思われたくないと言えば嘘になる。


 私はそんな思いから啓介くんをじっと見つめながら、スカートの裾を摘まんでたくし上げ始めた。


 いつも以上に注がれる熱い視線と、恋愛感情を抱いている人を誘惑しようとしている状況。


 昨日とちょっと立場が違うだけで、一気に私がえっちな子みたいに思えてきて、それに対する恥ずかしさが私の瞳を微かに濡らしてきた。


 見られるのは嫌ではないのに、羞恥心からか何かを隠すように脚がきゅっと内側に向いて、そんな少しの動きも興奮の材料となったのか、啓介くんはより食い入るように私の脚を見つめていた。


 そして、パンツが見える位置までスカートをたくし上げると、啓介くんは私のパンツにじぃっとした視線を向けていた。


 啓介くんに、見られてるんだ……。


 そんな状況に対して何かを感じてしまったのか、私は食い入るように見ている啓介くんの瞳を見つめていた。


 しかし、そんな私の視線に気づいたのか、啓介くんは私の瞳をパンツを見ていた時と同じような熱量で見てきた。


 しばらく見つめ合ったのに、最後はその視線に耐えられなくなった私は視線を逸らしてしまった。


 

 再び啓介くんに視線を向けると、啓介くんは本気で何かを考えるように唸った後、言葉をポロリと漏らした。


「うーん……やっぱり、最近なんか可愛く思えてきたな」


「っ」


 スカートをたくし上げている私を見つめながら、認めなければならないものを認めるかのように。


 え? いま、可愛いって言った? わ、私のことだよね?


 思いもしなかったタイミングで褒められて、私は一気に体温が上がっていくのが分かった。


 ていうか、やっぱりって言った? もしかして、啓介くんも私のことそんなふうに思ってるの?


 思いもしなかった両想いの可能性。そんな可能性を前にして、私は少しだけ慌ててしまっていた。


「最近意識してしまうようになったのは、えっちな姿を見る機会が増えたからか? えっちな姿を見るから可愛く思うのか、気になっているからえっちな姿を見たいのか……」


 ん? あれ? 急に訳の分からないことを言いださなかった?


 何か冗談を言っているのかと思ったけど、全然そんな空気はなくって、本気で考えこむように顎に手を当てている。


 なにその思春期男子の、卵が先か鶏が先か理論。


「これ以上先を見れば、分かるのかな?」


「~~っ」



 そして、思いもしなかった方向に話は持っていかれてしまった。


 え? これ以上って……え、朝から?! これから学校に行くのに、その前にこれ以上のことをしようって言うの?!


 も、もしかして、二人で学校をさぼってそんなことをする、とか?


 い、いや、でも、そういうのは付き合ってからの方がいいっていうか、あまりにもいきなり過ぎるっているかーー


「紳士じゃなければ、分かったかもな」


 そんな私の考えは、啓介くんの小さな笑みによって一蹴された。


 いや、べつに、私だって突然過ぎる展開に期待してなんかいないし、むしろ、こんな催眠にかかったフリをした状態でするのは、やっぱりよくないというか。


 ……いくじなし。


 あれ? でも、啓介くんなりの紳士でいる限り、私に対する啓介くんの気持ちも有耶無耶のままにされるってこと。


 それは少し困るっているか、寂しいんだけど。


 でも、催眠にかかったフリをしている私は、この場で啓介くんの気持ちを確かめることもできない


 もしかしたら、このまま一方的な気持ちを抱き続けることしかできないのかも。


 それは、さすがに悲しすぎる。でも、直接問いただすのは恥ずかしい。


 なんとか、もっと意識させられればいいけど、どうやればいいのか分からないし、少し恥ずかしいしなぁ。


 あー、こんなときに、本当に催眠アプリでもあればよかったのに!


 ……ん? 催眠アプリ?


 そこまで考えたとき、私の中で一つのアイデアが浮かんだのだった。




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ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

次の話から、後半戦に入ります!

恵理ちゃんの浮かんだアイデアとは何か、次回更新をお楽しみに!


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