第3話 催眠アプリなんて効くわけないでしょ?!


 私の幼馴染が凄い失礼なことを言ってきた!


 今さら私のパンツを見ても何も思わないとか、失礼過ぎるでしょ!


 幼馴染の啓介くんを起こしに行くと、朝から当たり前みたいな顔をして『いや、そんな目では見てないって。今さら恵理のパンツ見ても何も思わない自信あるし』とか言われてしまった。


 べつに、そんなところに自信なんか持たなくていいのに……


 でも、昔はよく一緒にお風呂とかも入っていたし、その言い分も分からなくはない。分からなくはないけど、失礼かどうかは別の話でしょ。


 ていうか、本当に何も思わないのだろうか?


 こう言ってはなんだけど、私はそれなりに男の子にモテたりはするし、結構おっぱいも大きい方だと思う。


 そんな私のパンツを見ても何も思わないなんて、少し強がりを言っているのではないだろうか?


 多分そうだ。この男は強がっているのだ。


 そうでなければ……なんか乙女のプライドがへし折られた気がしてしまうから。


「恵理、これを見るんだ!」


「? なにそれ?」


 啓介くんは失礼な言葉を撤回することなく、私にスマホの画面を見せてきた。


 なんか紫色とピンク色の渦がぐるぐると回っている画像。いや、動画かな?


 なんか変に演技がかった声で言ってるし、いつもの悪ノリか何かかな?


「これは催眠アプリ。これを見た物は、このアプリを見せている人の命令を何でも聞いてしまうのだ!」


「なんでも?」


「そう、なんでもだ! さぁ、恵理よ。『今日履いているパンツの色を答えるんだ』!」


 ……どうやら、私の幼馴染は私が思っている上に馬鹿らしい。


 まぁ、やけにノリノリな感じから何となく察してはいたけど、彼なりのボケなのだろう。


 ていうか、自分で興味がないとか言っておきながら、よりによってそんなこと聞いてくるんだろ。


適当にツッコんで、早く朝ご飯の支度をしないと。


 ……。


 そこまで考えて、私は少しの悪知恵が働いてしまった。


 ここで普通にツッコミを入れても面白くない。何よりも、乙女のプライドがへし折られたままである。


 それなら、少しだけノってあげてからツッコミを入れた方が面白そうだ。それに、もしかしたら、啓介くんの面白い顔が見れるかもしれないし。


 まぁ、少し恥ずかしさはあるけど、パンツの色を言うくらいならいいかな。


 普段も制服姿で啓介くんの家によくいるし、これまでにも見られてしまったことも数回くらいあるかもしれない。


 だから、別にパンツの色をいう位なら、いいかなと。


 今日のパンツの色、確か今日履いているのはーー


「……白」


「え?」


「だから……今日は、白色のパンツ履いてる」


「ん?」


 あ、少し困惑してる。


 もっと目に見えて顔を赤くするとかだったら面白かったんだけど、なんか普通に驚いてる反応だ。


「え、マジで?」


「……まじで」


 私がそう返答すると、啓介くんは目をぱちくりとさせた後に、何かを本気で考えこんでいた。


 えー、幼馴染のパンツの色を聞いておいて、そんなに考えこむことないでしょ。


 もっと面白い反応して欲しかったなぁ。


 男の子みたいに喜ぶとか、目に見えて慌てるくらいしてくれないと、ただの言い損な気がするんだけど。


 啓介くん、本気で私のパンツを見ても何も思わないのかな?


 いや、分かってはいたんだけど、なんか複雑な気持ちになってしまう。


「……確認だ。あくまで確認のためだからな」


啓介くんは独り言を漏らした後、小さく咳ばらいを一つして、真面目なトーンで言葉を続けた。


「……スカート、たくし上げてみてくれないか?」


 催眠アプリをこちらに見せつけながら、啓介くんはやけに真面目な顔でそんな言葉を口にした。


 え? ん? んんんんん???


 今、何て言った? スカートをたくし上げろ? 私に? パンツを見てもなんとも思わないとか言ってたくせに?!


 なんでそんな真剣な声で、何かを期待するような目でこっちを見てくるの?


 え? 見たいの? さ、催眠アプリとかを使ってでも見たいってこと?!


 じぃっと私のスカートの裾に視線が向けられている。


 多分、啓介くんから初めて向けられたかもしれない、性的な物を見るような視線。


 もしかしたら、啓介くんは私のパンツを見ても何も思わないなんてことはないのかもしれない。


 でも、それは今の時点ではただの想像でしかない。


 それを確信に変えるためにはーー。


 私は啓介くんから向けられる熱い視線に促されるように、ゆっくりと両手の指の先でスカートの裾を摘まんだ。


 なんかいけないことをしているみたいで、鼓動が少しずつうるさくなっていくのが分かった。


 その鼓動の音に合わせるように、食い入るように視線を向けてくる啓介くん。


 体の熱さと胸の奥の方にあるよく分からない感情から目を逸らすように、私はそっと啓介くんから視線を逸らしていた。


 ゆっくりとスカートの裾を持ち上げていくと、普段スカートで隠している部分が徐々に露になっていった。


 ちらりと啓介くんの方を見ると、なんか体を前かがみにして本気で見入っていた。


 ……私のパンツを見てもなんとも思わないんじゃなかったの?


 恥ずかしさを誤魔化すように唇をきゅっと強く結んでも、全然恥ずかしさは変わることなかった。


 そして、気がつけばもうすぐパンツが見えるくらいまでスカートをたくし上げていた。


 そこでピタリと手を止めたけど、啓介くんの視線は私のスカートの裾と太ももに釘付け。


 太ももをそんなに見る? って驚くくらい本気で見入っている。


 ……ここまで来たら、確かめないわけにはいかない。


そう思った私は、もう少しだけスカートの裾をたくし上げた。


「おぉっ」


 そして、スカートをたくし上げて、パンツを露にした私の姿を見た啓介くんは、なんか感動したみたいな声を漏らしていた。


 いやいや、見過ぎ! 見過ぎだから! え、ちょっと、なんで近づいてーー


「っ」


 不意に吹きかけられた鼻息を前に、私は変な声を漏らしてしまっていた。


 普段出したことのないような声を上げた私を見上げた啓介くんは、少しだけ考えた後、何故かさらに近づいてきた。


 興奮したような熱い鼻息が吹きかけられて、くすぐったくて変な感じがする。


 す、すぐに終わるよね?


 でも、それはすぐには終わらなくて、十五分後くらいに啓介くんのスマホのアラームが鳴るまで続いた。


 つまり、私は十五分間もずっと至近距離でパンツを見られながら、そこに鼻息を吹きかけ続けられたということになる。


 ……朝からこんな、どうしてくれんの、ほんと。


 そんな文句も言えるはずがなくて、催眠を解除されたフリをした後、私は急いで朝ご飯の支度をすることになった。


 朝ご飯を食べているときに、啓介くんの態度がいつもよりも少しだけよそよそしく感じたのは、私のパンツを見てなんとも思わなかったことはなかったからだろう。


 あんな見ておいてなんとも思わなかったとは言わせない。


 そして、あんなに熱視線を向けられて、なんとも思わなかったとは言えなかった。


 私は少しだけ脚をもじりとさせて、それに気づかないフリをして静かに朝ご飯をつつくのだった。



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