第8話 もっとバレないようにして!
「さぁ、スカートをたくし上げてくれ」
……やっぱり、今日もですか啓介くん。
朝、啓介くんを起こしに行くと、さっそくスカートをたくし上げるようにと言われた。
もちろん、その手には催眠アプリを起動したスマホがあったりする。
本当はこんな命令無視してもいいんだけど、そうなると今まで私は催眠に掛かっていないのに、何度もスカートをたくし上げていたことになる。
そんな変態幼馴染認定をされないためには、私は今日もスカートをたくし上げるしかないのだ。
今回で何度目かになるスカートのたくし上げだけど、何度しても恥ずかしさは薄れることなかった。
それをやると思っただけで、羞恥心で体の奥の方が熱くなっていくのが分かる。
そして、その熱さによって、目覚めてはいけない何かが微かに活性化されそうになっているということも。
それでも、私のパンツを見れることを本気で期待しているような目には抗うことができず、私は今日もそっとスカートをたくし上げるのだった。
ゆっくりとスカートをたくし上げていって、露にあった太ももに啓介くんの視線がじっと向けられる。
その確かな熱を感じながら、私はその先を期待する啓介くんの視線に押されるように、いつも通りの位置までスカートをたくし上げた。
いつものように、少しだけパンツが見えるくらいの高さまでスカートをたくし上げると、啓介くんはその少しだけ見えたパンツに熱い視線を送っていた。
……凄い本気で見てる。
性的なものを見て興奮しているような視線。食い入るように見られてしまうと、そこまで悪い気がしなくなってきた。
……。
「え?」
食い入るように見ていた視線。それを前にして、少しだけ気持ちがおかしくさせられてしまったのだと思う。
私は落ち着かなくなっている心臓の音を聞きながら、意を決したようにいつもよりもスカートをたくし上げることにした。
前にスカートを少しだけたくし上げたら、それを下から覗き込まれたことがあった。もしかしたら、私がパンツを少ししか見せなかったから、ああいうふうになったのかもしれない。
それなら、正面からしっかり見てもらった方が恥ずかしくは、ない?
そんな気がして私は、おへそが見えるくらいまでスカートをたくし上げてしまっていた。
まぁ、今日のパンツはお気に入りのやつだから、多少は見れても、ね……。
そんな少しおかしくなった気持ちと、言い訳と、どんな反応をするのだろうという気持ち。それらの思いが混ざり合った結果、私はいつもよりも高い位置までスカートをたくし上げてしまった。
その結果……啓介くんが異常なくらいに食いついていた。
「~~っ」
前みたいに感動の声を漏らすでもなく、ただただ性的な物を見るかのような熱い視線をじっと集中させていた。
見られれば見られるほど上がっていく体温は頭をおかしくしそうだった。唯一の救いは、パンツの方にしか啓介くんの目が向いていないことだった。
今の顔は、あんまり見られたくない。
それからどれくらい見られていただろう。
おかしくなったような鼓動のせいで、体感時間が分からなくなっていた。
「恵理……」
すると、ふとたくし上げていたスカートの中に、そっと啓介くんの手が伸びてきた。
どこか熱に浮かされているような声は、きっと理性とは異なる何かに背中を押されているのだと思った。
逃げることはできた。今からでもやめてと言えば止まってくれるだろう。
それでも、逃げるどころかその手を迎え入れようとしていた私はーーそっと目を閉じていた。
「いや、いかんいかん! 俺は紳士だ。変態であっても紳士でなければならないんだ」
え?
思わず口に漏らしそうになった言葉。
結局、啓介くんの手は何もない空を撫でただけで私に触れることなく終わった。
……。
いや、そうだよ、触られない方がいいに決まってる。うん、そうだから。
……~~っ!
いや、これだけのことをしておいて、今さら紳士ぶる?!
紳士は女の子にスカートをたくし上げさせないでしょ?! スカートを下から覗きこんでオカズにするとか言わないでしょ?!
そんな啓介くんに対してモヤモヤした気持ちを抱いていると、啓介くんがこちらにスマホのカメラを向けてきた。
スカートをおへそが見えるくらいまでたくし上げて、パンツを晒している私の姿にピントを合わせている。
もっと早くバレない様に撮ってしまえばいいのに、真剣な顔で何かカメラの調製をしているみたいだ。
それだけで、少しでも良く私がスカートをたくし上げている姿を撮りたいのだということは伝わってきた。
……そんなに真剣な顔して、私の下着姿撮りたいんだ。
あんなに真剣に見るだけじゃ足りなくなって、本気で私でそういうことするために、私のそういう写真が欲しいんだ。
そんなことを考えていると、少しだけ鼓動が速まっていくのが分かった。
こんな状況で何を考えているんだと心臓に文句を言いたくなるけど、それもできるはずがない。
だから、私はせめて変な顔で写らないようにと、少しだけ顔をきめたのだった。
カシャッという音と共に、今日の朝の分の催眠の時間は終了したみたいだった。
「啓介くん、スマホ見ながら歩くのは危ないよ」
「大丈夫だって、信号で止まったときしか見ないから」
そして、通学中。私の隣を歩く啓介くんは信号で止まる度にスマホを見ていた。
むしろ、信号が赤になりそうになるとゆっくり歩いて、あえて信号を渡ろうとしなかった。
多分、スマホを眺めるためにあえて止まっているのだと思う。
何を見てるのだろうと思いながらも、周囲をやけに警戒しながらそのスマホの画面を見ているので、私にもその画面に何が写っているのか分からない。
しばらくスマホを見た後に、じっと私の方を見るという行動を繰り返している啓介くん。
私と何かを見比べている? なんだろう?
今までこんなことはなかったということは、昨日今日であった何かを見ているということになる。
昨日今日であったこと……あっ。
そこまで考えたところで、私は一つの解答にたどり着いた。
なんかいやらしいような視線に感じるなと思っていたら、そのままだった。
私のいやらしい写真を見た後、私のことをいやらしい目で見ているのだ!
なんで?! 今なにも変なこともしてないのに、なんで私にそんな目を向けてくるの?!
えっちな画像の私を見た後、なんでもない私を見る。そんなことを繰り返されているうちに、こっちまで変な気分になってきた。
まるで、通学路でスカートをたくし上げでもさせられているような気分。
もちろん、そんなことを催眠アプリを使ってされてはいない。
それなのに、スカートをたくし上げたときに見せるような目で、私を見られるとそっち側に少しだけ引っ張られてしまう。
公衆の面前で、啓介くんにだけ向けられる性的な視線。そんな視線を受けて、私は反射的に脚をきゅっと内側にして何かを堪えるような体勢を取っていた。
というよりは、取らされていた。
これから学校だというのに、勝手に変な気持ちにさせないで欲しいんだけど……。
もちろん、そんな願いが叶うはずなくて、私は変な気持ちにさせられたままどうすることもできずにいた。
学校行ってしまえば、そんな目で見られることはないと思っていたのだけれど、全然そんなことはなかった。
学校でも度々啓介くんの視線を感じた。ちらりとスマホに視線を落とすときもあったし、多分登校中にしていたことの続きをしているのだと思う。
休み時間の度に向けられていた視線は、ついには授業中にまで向けられるようになっていった。
パッと少しだけスマホを見た後、私に向けられた視線。
おそらく、そのスマホに映っているのは私がスカートをたくし上げたときの写真で、それと授業を受けている私の姿を重ねているのだ。
一体、啓介くんの中で私はどんな目に遭わされているのか。どんな想像をされているのか。
それを考えただけで、先生の話に集中できないくらいに私は悶々としてしまっていた。
せめて、授業中はやめてよ?!
そんな私の心の声は啓介くんに届くはずがなく、
私が何も知らないと思っていることをいいことに、私に注がれたその視線はしばらく外されることはなかった。
まるで時間を確認するように軽くスマホを見て、その後に私に視線を向けてくる。結局、下校中までそんなふうに視線を向けられることがあった。
つまり、学校で授業中も休み時間も構いなしで、私のえっちな写真を見ていったということで、それを見るときと同じ視線を私にも向けられ続けたということになる。
当然、一日中そんなことをされて平常心を保てるはずがなくてーーただ一日中変な気持ちにさせられ続けていたのだった。
……これって、変なプレイになってない?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
少しでも良いと感じたり、続きが気になった方は評価☆☆☆、ブックマーク、応援♡などを入れていただけると、大変励みになりますので、よろしくお願いいたします!
※評価は目次の下にある『☆で称える』から行うことができます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます