第18話 いざダンジョンへ

今回食糧集めのために潜るダンジョンは名古屋市内にある大平原というDランクダンジョンで比較的優しい難易度の全3階層の構造になっている。1階層ごとがとても広くできており多種多様なモンスターがいるため今回の目的のような時にはうってつけのダンジョンであり中に潜る人もそこそこいるので何かあったときは助けてもらえることもいい点である。


探索用の服装に着替えいざ出発。今回は3日ほど泊りで潜りアイテム袋をいっぱいにする予定で、もし時間があったらダンジョンボスも倒そうと思う。


そうそう、冒険者にもスキルがあって初めてダンジョンに潜ったときにその人の経験に合わせたスキルがいくつかもらえるのだ。例えば剣道をやっていれば剣術を、野球をやっていたら投擲みたいな感じでもらえるため人生経験が豊富な人ほどいろいろなスキルを持っている。その後は、ダンジョンでスキルオーブを見つけたり経験していくことでスキルを覚えていくことができる。


俺が最初にもらったスキルは、逃走だった。仕事から社会から逃げたからだろうか、ほっとけ!その後はモンスターと正面から戦うことへのい恐怖に勝てず、隠伏や消臭、消音など安全に行動するためのスキル構成になってしまった。攻撃手段は厚手のナイフでの切り付け、刺突ぐらいだ。よくもまあこんなのでCランクまで上がれたと思う。ほかの冒険者はスキルオーブで魔法を覚えたり、強い武具で固めパーティーを組んだりしているが就職をあきらめて一人寂しく冒険者登録する奴に優しく声をかけている奴なんていなかったし、当時25歳で一人で冒険者になろうとするのがそもそも出遅れているのだ。普通は高校生から登録して経験を積んでいくのだがこの年で登録するのは友人に誘われたやつか社会の落ちこぼれのどちらかしかいなかった。いまさら言ってもしょうがないが仲のいい冒険者ぐらいは作りたかったな。


暗い話はここまでにして、さっき言ったとおりだが俺は隠れて行動するのが得意なのでハチたちに基本は攻撃してもらい後ろからとどめを刺すといった立ち回りをしようと思う。


狙っていくモンスターは、オークや鳥系が基本で運が良ければ牛系に会えるだろう。ただ牛系は群れを作って行動していて厄介なので数が多ければ手は出さないつもりだ。


ダンジョンに入りしばらくすると後ろから声をかけられた。


「見つけたぜ!おっさん。さっきはよくもやってくれたな。」


声だけでだれかわかってしまった。組合で絡んできた奴だろう。とても振り向きたくない。


「ここに組合のやつらはいねぇから、もう逃げられねーぞ。早く俺に果物をよこせ!なんだったら俺のチャンネルで販売してやってもいいぞ。その代わり儲けの6割は俺の取り分だけどな。」


「さっきも言ったけど、個人との取引はしないからあきらめてほしんだけど。」


「いいのか?そんなこと言って。痛い目に合わせるぞ。ここはダンジョンの中だからスキルが使えるしお前なんか簡単にやっちまうことだってできるんだぞ。」


さっき言ったスキルだがダンジョンの中でしか使えないものが多く、攻撃系の魔法なんかはまず使えない。地上で使えるスキルも少しだけあるが補正値がすごく低くうまくなった程度しか力が発揮されない。おそらくこの青年は強力なスキルを持っており絶対的に上位に立てる自信があるのだろう。ただ俺は逃げるのに特化しているためこちらの優位性もあるどうしようか悩んでいるとハチが攻撃を仕掛けた。おそらく敵として認識したんだろう、2匹が青年の両足に針を刺し突き飛ばしたのだ。


「がぁぁぁ~~~~~!!!!いてぇ!いてぇよ!!」


絶叫を上げながら両足を抑え暴れる青年を哀れに思いながら、助かったことにホッとして奥村さんに電話をかける。


「内藤です。すみませんさっきの青年にまた絡まれまして・・・・・・・・」


ダンジョンに入ってからハチに刺されるまでの経緯を話し青年を回収してもらうこととなった。今回のような従魔による人への攻撃は正当性が認められれば正当防衛として処理される。ちなみに冒険者は通常の人よりも強力なためダンジョン内での脅迫や暴行などの犯罪は重く処罰される。もちろん今回は青年からの脅迫のため正当防衛が適用される。


組合員がこちらに来るまで青年のそばで待っていなくてはいけないのだが、針で刺されたところが尋常じゃないほど痛いみたいでずっと泣き叫んでいる。正直ここまで声を上げられるとこちらが悪いことをした気がしてくる。念のためハチたちに確認したが毒魔法は使っていないみたいだったので出血さえ気にしていれば命にかかわることはないだろう。



30分ほどたち組合員が来たので青年を引き渡す。担架に縛り付けられ逃げられないように手足も拘束されていた。おそらくもう会うことは2度とないだろう。予定が狂ったが無事に終わったのでモンスターを探しにスキルを使って平原を走り抜ける。ようのないモンスターは横を通り抜けて目当てのモンスターをしっかりと倒していく。途中逃げられることが何度かあったがそこはみっちゃんがフォローしてくれた。


1日目は時間がなくあまり倒せなかったが明日からが本番で朝一番から全力で回らなければいけない。遅れた分は取り返さなければいけない。

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