第21話 お向かいさん到着

ついに向かいの家が完成した。ついにというほど日にちもたっていないがもう家具などの搬入も終わっており明日に冒険者夫婦が到着するそうだ。


新築祝いに何か送ろうと思うのだが、せっかく養蜂をしているのだから蜂蜜を使ったものがいいだろう。そうとなれば1番最初に浮かんでくるのははちみつ漬けになるだろう。自家製の果物をこれまた自家製の蜂蜜でつける。これほど俺にあっているものはないだろう。作り方は簡単で果物を薄くスライスして蜂蜜につけるだけだ。


冒険者組合の一件から蜂蜜のグレードは落ちており、ついてくる効果は全耐性(中)だけになってしまった。これでも小瓶100万円で買い取ってくれるとのことなのでこちらとしては不満はない。ちなみにすでに生産された幸福の蜂蜜はアイテム袋に収納してあり自家消費していくつもりだ。冒険者組合からももう表に出すなと言われてしまった。それでも味は普通の蜂蜜とは比べ物にならないほどおいしい。


それでは作っていこう。梅雨に入り新しい果物が収穫できるようになったのでさっそく使っていこう。この時期我が家でとれるのは、アメリカンチェリーと白桃の2種類だ。子供のころ家にサクランボの木が生っていてよく食べていたが親が買ってきたアメリカンチェリーを食べたとき分厚い果肉と甘みがサクランボとは全く違い、なんておいしいものなんだと思ったね。白桃はシロップ漬けの缶詰しか食べたことがないのでフレッシュなものを食べるのはこれが初めてだ。


アメリカンチェリーは赤く色づけば収穫できるが白桃はわからないのでハチたちに任せた。触ってみると柔らかく力を入れるとつぶれてしまいそうだ。それに甘い匂いが強くすごくいい香りがする。


まずはそのまま食べてみよう。みっちゃんたちが育てたためか通常の物より1回り大きくおそらく食べでがあるアメリカンチェリーを手に取り口に入れる。張りのある皮をかむとパリッっと音がし中から果汁があふれシャクシャクとした食感がとても心地いい。大きいので満足感もすごい。これなら何個でも食べられそうだ。


「(すっごくおいしい!いくらでも行けるわ、手が止まらない。)」


みっちゃんも気に入ったようでバクバクと食べている。


「あんまり食べ過ぎないでね。これから蜂蜜につける分は残しておいてよ。」


「(わかってるわよ!)」


みっちゃんはまだ食べ続けているが俺は白桃に移った。まずモモに刃を入れ種に沿わせて1周切り込みを入れる。身をねじり2に分解する。その後は種を取り除き何等分かにする皮は、まな板に切った桃を置いたら刃を入れ桃を回転させながら平行に包丁をスライドさせればきれいに向ける。


桃の果汁がすごく多く切っただけでまな板がびちゃびちゃになってしまった。皮に抑えられていた香りも強くなりいつの間にかみっちゃんが肩にしがみついており桃に目が釘付けとなっていた。


「(はやく!はやくたべたいわ!)」


もう待ちきれないようなので、その場で1切れ食べてもらう。


「(なにこれ・・。身がトロトロで口の中が果汁でいっぱい。これはもう飲み物だわ!」


そんなにすごいのか。のどがゴクッとなる。そんなことを言われたら俺も待ちきれないのでこの場で食べてみる。噛むと実がトロトロと崩れすべてが果汁のようになり口の中をいっぱいにした。これはたしかに飲み物だ。よく食レポとかで口の中に入れた瞬間溶けたと表現されるがまさにこれのことだろう。


もう蜂蜜につけなくてもこのままのほうが喜ばれるんじゃないだろうかと一瞬頭をよぎったがこれがさらにおいしくなると信じ調理に入っていく。


まず、アメリカンチェリーを洗い種付きのものと取り除いたものを用意する。調べてみるとこの工程で全然違う食感や味になるらしいのでせっかく量はあるので2種類作っていく。この後は瓶の中に果肉と蜂蜜を入れるだけだ。


白桃は、さっきと同じように切ったら蜂蜜と一緒に瓶に入れるだけだ。あとは当日まで冷蔵庫で寝かせたまに瓶を振るぐらいだ。送る用、組合用、自家消費用を作っていき組合には連絡を入れておく。


翌朝、寝かせておいたはちみつ漬けを確認するとまるで宝石のように果実が輝いており蜂蜜には果汁が混ざりさらさらとしていた。味見に少し食べてみると


「うまぁぁぁ・・・。蜂蜜につけたから単純に甘さがプラスされていると想像していたがこれはすさまじい。」


もともとすっきりとした甘さの蜂蜜が果物の甘みをいい意味でかき消してくれている。食べた瞬間に口いっぱいに甘みが広がり飲み込むと同時にスッと消えていくのだ、これならどんな物にでも合うだろう。個人的にはソーダ割なんかにしたら炭酸のスッキリさと合わさっていいと思う。


昼になり夫婦が到着したみたいだ。


「初めまして、内藤と言います。この度はありがとうございます。これ新築祝いです。手作りで申し訳ないですが家でとれたものを使ってるので味は保証します。」


「ありがとうございます。私は赤城 大河と言います。こっちは妻の「歌恋といいます。」これからよろしくお願いします。あと今は家の中にいますが双子の息子で大和と娘の陽菜がいますので後でまた紹介します。」



何気ない会話をしばらくした後いったん解散して夜にまた集まることになった。赤城家を招待して引っ越しパーティーを行おうと思っている。今日のために食材もふんだんに使い人生初めてのモンスターの肉も使ってみようと思う。


そうとなれば準備を始めていこう。


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