第27話 悪徳業者襲来2
はぁ、ついにこの日が来てしまった。あれから特に準備などはなく普段通りの日を過ごした。今日は組合で合流した後公舎のほうへ移動することになっている
「おはようございます。奥村さんはいますか?」
受付であいさつをし奥の部屋と案内される。
扉をくぐると奥村さんと見知らぬ男性が座っていた。年は俺と同じくらいだがなんというか覇気のようなものをまとっておりすごく大きく見える。
「おお!内藤ついたか。こいつは冒険者組合日本支部の本部副長、覇堂孟徳おまえと同い年だから馬が合えば仲良くなれるだろ。今回の件を本部に連絡したら応援をよこしてくれてな、こいつは見た目はあれだが頭いいから期待していいぞ。」
そうですか、見た目怖いしなんだか中華統一しそうな名前ですね・・・。こっちめちゃ睨んでくるし怖くて動けないんですが。
「覇堂だ。今回の件は本部としてもいい話だとは思っていない、専門機関でもない一会社が取り扱うなど危険だ。なんとしても阻止しようと思っているので俺に任せてくれ。」
「よ、よろしくお願いします。」
「それじゃあ公舎に向かうか。」
タクシーで移動し公舎前で降りると門の前で黒服の男が2人立っていた。
「ご用件は。」
「内藤と言いますが、今日ここで知事と青島青果の社長とのお話の約束で伺いました。」
「確認していますのでしばらくお待ちください。・・・・・確認できましたのでこのままお進みください。中で案内の者が待っていますので指示に従って移動のほどよろしくお願いします。」
中へ進むと案内の男性がいたのでそばへ寄る。
「内藤様お待ちしておりました。ほかの方々はすでに中で待っておりますので部屋へ入り次第始まりますがトイレなどは大丈夫でしょうか?よろしければこのままお部屋へと案内いたします。」
部屋に入るとすでに知事と青島社長が座って待っていた。
「すみませんお待たせしました。こちらは冒険者組合支部長の奥村さんでこちらが本部副長の覇堂さんになります。」
「初めまして、青島青果の社長をしております青島正義と申します、以後お見知りおきを。今回この場を設けさせていただいたのは内藤様が作っている果物についてわが社で取引をしたいと思いましてお話をさせていただいたところご不安があるとのことなので第3者仲介の元詳しいお話をさせていただくこととなりました。」
「私はこの話はお互いにとっていいものだと思っているのだがね。青島青果さんからはわが県の特産品として扱っていただき世界にまで販売経路を広げてくれると聞いている、内藤君わが県のためにもぜひ話を受けてもらいたい。」
「知事、まだ詳しいお話をしていませんので落ち着いてください。まず内藤様が作っている果実はこの場の皆様が知っていると思いますがダンジョン産のアイテムのように特殊な効果が確認されています品質により効果の差があるとはいえその価値は今も上がり続けております。ですが現在販売しているのは日本の組合のみで販売価格は上がっておりませんこれでは内藤様に本来はいるべき利益が入っていないのと世界での供給が満たされていないのです。生産効率上需要が満たされないのは仕方がありませんが現在日本の独占となっているためほかの国からはいい目で見ていられませんそこでわが社が販売を受け持つことで世界への販売と知識の供給で今後の生産数量の拡大を行うことができるのです。もちろんわが社で取り扱うことになりましたら価値に見合った値段で買い取り販売させていただきます。そうですね・・・前回お話しさせていただいた値段以上はお支払いさせていただきます。」
「内藤の作っている果物の価値を本当に理解しているのか?金の生る木と考えているだけで深くは考えていないだろう。まず内藤から聞いた鑑定士の件だが一会社に勤めている鑑定士の信用なんかないも同然だ。冒険者組合所属だからこその信用であり国で資格を発行しているわけでもないものを信用する人のほうが少ない。それから安全面についてだどこから内藤の家のことを知ったのか知らないが本来であれば組合以外では生産場所のことは部外秘となっている。知られてしまったことにこちらも落ち度はあるが世界規模となれば特定し接触してくるものが後を絶たないだろう、それも現役冒険者がだ!力が制限されているとはいえ一般人より強力な人間がここを荒らすようなことがあったとしたらお前たちは止めることができるのか。内藤の安全は保障できるのか。」
「もちろんです。わが社は情報セキュリティーにも力を入れておりますので万全の準備はできていますし、わが社専属冒険者が内藤様の安全を保障します。ちなみに内藤様のご自宅は冒険者組合本部長に教えていただきましたよ。本部長も今の状況を変えたいと思っていられるようで私に協力していただけるとお話を伺っています。」
「なに!それは本当か!!そんな話私は聞いていないぞ。このことは帰り次第すぐに確認させてもらう。」
なにやら雲行きが怪しくなってきたな。
「どうかな内藤君、今の話を聞く限り私はいい話だと思うが気持ちはまだ決まらないかね。」
「俺は冒険者組合を信用していますし現状に不満は感じていないので新しく契約したいとは思っていません。正直な話うちの果樹園は魔物であるハチたちが管理してくれているだけであって俺が何かしているわけではないんですよ。ですからこれ以上生産量を増やすとハチたちの負担が増えるだけですし知識なんかは全く役に立ちません。組合管理下の生産者だから保証されている安全があると俺は思っていて、それが一般企業の契約農家程度であれば今まで回避できていたことができないと思うんですよ。」
「内藤様の不安はもちろんお分かりになります。ですから今回の契約で知事と冒険者組合本部長そして今後、総理大臣を含め3名と一緒にPRをしてこの国の大切な産業として取り扱っていきますので組合のみで管理するよりずっと安全になります。生産量についても今すぐに上げようとは思っていません、長い目を見て少しずつと考えています。」
これは押し切られそうだ。さっきから奥村さんは黙ったままだし、覇堂さんは本部長の名前が出てから強く発言ができていない。二人に助けを求めるように目線を向けると奥村さんがはじめて口を開いた
「青島社長、あなたの会社はみんなが認める大企業ですがよくない噂が多いのは知っていますか?」
「企業が大きくなればなるほど会社の地位を下げようとするものは増えていきます噂は噂であって事実とは異なります。わが社に後ろ暗いことなどありません。」
「そうですか・・・。テレビをつけてもらってもいいですか。」
「かまいませんが今の話と何関係が?」
知事がテレビをつけると生放送で青島青果の社員や契約農家が今までの悪事や被害を記者会見を開き訴えていた。
「我々社員一同はこちらの契約農家の皆さんに無理な契約を迫りやすく仕入れ高額で販売しており、例としましてはわが社に売らなければほかの会社で売れないようにしてやるとの脅しや田畑への生育妨害なども行い契約するしかないよう追い詰めるなど通常では考えられない行いをしてきました。この度は自分たちの行いが会社の命令だったとはいえやってしまった行いに耐え切れず会見を開かせていただきました。」
「うちの農家では契約を断った次の日に作物を荒らされ出荷できなくなってしまいました。その後も契約するまで被害が止まることはなく結局契約してしまいました。」
「うちも断りましたが、それから今まで卸していたところから突然の受け取り拒否を最初にどこの会社も受け付けてくれなくなり最後には青島青果に泣きつく形で最低な契約を結びました。」
「被害農家の数は何百件とあり確認しきれないほどの被害を出してきました。誠に申し訳ありませんでした。」
どのチャンネルも青島青果の不祥事をニュースにしておりすごい事態になっている。
「これはどういうことだ!加賀美すぐに確認しろ!」
「確認しておりますが会社のほうに連絡が取れず状況が全く把握できません。一度本社のほうへ戻ったほうがよろしいかと。」
「急用ができてしまったのでこの話は一度保留にしていただいてまた次の機会に。すみませんが失礼します。」
青島社長は急いで部屋を出ていき加賀美さんも後を追うように出ていった。知事はこのニュースを見てから顔を真っ白にして椅子へ座り込んでしまった。
「すまないが一人にしてもらえるかね。」
知事の感じからすると青島青果と一緒に何か良くないことをしていたのだろう。部屋を後にして組合の支部長室へと移動する。
「奥村さんなんですかあの秘策!」
「あれはなこの話が決まったときに俺のつてを使って青島青果のことを徹底的に調べてもらったんだよ。うまくいくかわからなかったがよかったぜ。」
「そうだな、うまくいってよかった。だが今回の話で冒険者組合の本部長から総理大臣まで名前が出てきた結構闇が深そうだ。俺は今から本部長について調べてくる。内藤は安全のため赤城夫婦のもとでしばらく過ごせ。果樹園のほうに顔を出すときは十分に注意してくれ。」
帰りは冒険者組合の方に送迎してもらい赤城夫婦への説明もしてもらった。落ち着くまで自由はなさそうだ。こんな大ごとになるとは思っていなかったな、しばらくは静かに過ごそう。
田舎でモンスター養蜂家 幟 @kairanban
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