第6話 春の果物狩り
尿意に気づき目が覚める。時刻を確認すると午前10時すぎ、俺は休日になると目覚ましをつけずに半日無駄にしてしまう人間なのだ。だけど人生最大の楽しみは食べることと寝ることだと思っている、特に二度寝・三度寝はとても気持ちがいいのだみんなもわかってくれるだろう。
横を見るとみっちゃんの姿はなくおそらく日課の散歩に出かけたのだろう。たぶん朝ごはんは冷蔵庫の中に入っているものを適当に食べているだろう。ちなみに俺は朝ごはんは食べない派だ。子供のころから朝ごはんを食べるという習慣がなく起きてトイレに行き歯磨きをしたら布団に戻るこれを続けてきた。べつにおなかもすいていないので無理して食べようと思わない。
布団から体を起こしトイレへと向かう。服を着替え終わり居間でテレビを見ていると、みっちゃんが散歩から戻ってきたので一緒に果樹園へ向かう。
果樹園につくとミツバチたちが飛び回っており蜜集めに奮闘してくれている。すれ違う個体に挨拶をかわし最初の目的地イチゴを育てているビニールハウスについた。この果樹園や庭の花は近所の方々に引っ越しが終わるまで管理してもらっていた。本当に申し訳ないと思っている。入り口をくぐるとイチゴの甘い香りが漂ってきた。枝にはたくさんのイチゴが生っており肥料などは上げていないので小ぶりが多くみられる。
「意外と生ってるな。もっとスカスカなのを想像してた。」
「ギ~!」
みっちゃんはさっそく一つちぎり食べていた。俺も1つちぎり食べてみると。
「甘い。これだったらみんなにもたべてもらえるな。」
自家消費するにはかなりの量だから近所に配るつもりだ。ほかにも果物を育てているので販売も考えなければ腐らせてしまうのでとてももったいない。早いうちにどうにかしなければいけないな。
しばらくみっちゃんとともにイチゴを食べていたが次があるのでそろそろキリをつける。次はメロン畑だこちらはハウス栽培ではないのであまり期待はしていない。育ててもらっているときに身が鳥につつかれている話は聞いていたのでなおさらだ。
「みっちゃん、そろそろ次に行くから戻っておいで。」
「ギギ」
後ろ足で抱えられるだけのイチゴを持ちこちらへ戻ってきた。ハウスを出てメロン畑へと向かう。近づいていくとメロンの甘い香りと腐った臭いが漂ってきた。到着し見渡してみるとほとんどすべての実に穴が開いており虫が湧いていた。
「こりゃだめだな、とりあえず良いものはないか確認するか。」
「ギーーーー!」
ガックシと肩を落とし生き残りがないか探索をはじめると、みっちゃんがおおきな声で叫んだ。すると働きバチたちが一斉にこちらへ向かってきてダメになったメロンの実をどんどんと運んでいく。どこへもっていくのか見ていると巣箱の前にかためどんどんと食べていくではないか。
「ギ~♪」
みっちゃんは、見たか!と言わんばかりに両腕を腰に当て胸を張った。
「ははっ、すごいな!この後のかたずけを考えていたからメチャクチャ助かった。ありがと!」
メロン畑がきれいになり無事だった実はわずか5つだった。貴重な1つを2つに割るとすごくいい香りが広がった。果肉は熟れて柔らかくとてもみずみずしい。種を取り除きそのまま噛り付く。口の中が果汁でいっぱいになりとてつもない甘さが舌を襲った。
「すっげえ甘い。めっちゃおいしい。」
「ギ!ギ!]
メロンはとてつもなく甘いが売れすぎていたのか少し舌が痺れる。だがこの甘さは市販のものと変わらない品質だ。次回の収穫が待ち遠しい。今年は見た限りもうダメであろう小玉の実もつつかれたみたいでハチたちのおなかに入ってしまっている。
残りの4つは冷蔵庫にしまい家で消費しよう。メロンを食べ終わるとオレンジの木へ向かう。
到着すると柑橘系のさわやかな香りがする。こちらは、結構実がなっていて虫や鳥の被害は見られない。見る限りでは病気の心配もなさそうだ。一つちぎり食べてみると。
「すっぱぁあああ!」
「ギギギ♪」
みっちゃんはこちらを指さし笑っていたがこちらはそれどころではない。あまりのすっぱさに顔がしぼみ体がプルプルと震え唾液が止まらない。これはだめだとてもじゃないが食べられない、何か加工しなければ今年のは消費できないだろう。
蜂蜜と合わせジャムにするかゼリーかジュースが簡単でいいと思うので後でやってみよう。
すっぱさに身を悶えしばらくするとようやく口の中が戻り平気になってきた。みっちゃんは手を付けることはなくこちらをみて笑っているだけだった。メロンを抱え家に帰る準備をする。ハチたちに頼んでいちごの収穫を相談して明日から始めてもらう話をつけた。
家に着き冷蔵庫にメロンをしまった後、スマホでオレンジの加工品の調べ物を始める。やっぱりジュースやジャムが無難なようでうちの蜂蜜と合わせればブランド品として売りに出せそうなのでその案で進めていこうと思う。
昼の時間も過ぎてしまったので、とってきたイチゴで腹を膨らせ昼寝を始めた。
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