第31話 蜜蜂暗殺部隊

みんなが寝静まったころ田舎の村には街灯なんてものはなく月明かりのみの視界の中、誰もいないはずの果樹園に何人かの人影が現れた。


「おい!ここが例の場所か?」


「確かに依頼のあった果樹園だ。ここの果物を根こそぎ持っていくのが今回の仕事なんだがみんなしっかりとアイテム袋を持ってきたか?」


「ばっちりだ。それにしてもちょろい仕事だな。警備のけの字もないしここの持ち主は相当警戒心のない奴だな。」


「だな、俺だったら誰にも盗まれないように24時間体制で監視しておくけどな。」


その後もどんどんと人数が増えいくつかのグループに分かれ始めた。


「よし時間だ。それじゃあ今いる奴だけで仕事を始めるぞ。5人に分かれて3人は見張り、残りの2人で収納していく形で行く見張りは気を抜かないように。開始だ!」


開始の合図とともに一斉に動き始め四方八方に散っていく盗人たち。何の問題もなく仕事は進んでいるはずであったが、あるグループで異変が起き始める。


「な、なあ。なんかおかしくねえか?」


「あ?なんもおかしいことなんてないけど?」


「さっきまで月が出てたはずなのになんか空が暗くみえるんだよ。」


「雲で隠れただけだって、気にしすぎ。」


「そ、そんなことない絶対におかしいって。なあ!なあって!ってへ?」


男がさっきまで喋っていた相手のほうを向くとそこには誰もおらず周りを見渡すと見張りの3人の姿も消えていた。


「いったいどうなってるんだ!」


不安と恐怖によって心臓の音はドクドクと大きく早くなっていき誰か近くにいないかと希望を探す男性。その背後には暗闇に紛れるように真っ黒な外骨格をもち鋭利な牙を持った蜂が飛んでいた。


大きさは男性の手のひらほどの大きさで飛んでいる羽の音は種族の特性か無音であり男性は気づくことはなくいまだに周りを見渡している。


そんな男性に少しづつ近づき自分の射程範囲内に入ったらお尻から出した鋭い針を出し男性の脳天を貫く。男性は悲鳴も上げる間もなく全身を痙攣させた後崩れ落ちた。


動かなくなった死体にほかの蜂たちが群がり装備は女王の元へもっていき肉体は肉団子にし巣にいる幼虫へと渡された。


1つのグループがいなくなったのを皮切りにどんどんと人が減っていく。首を切られるもの、集団で刺されるもの、人によってやり方は様々で気づいたころには残り1グループとなっていた。


「おい!どうするんだよ!俺たち以外誰もいないじゃないか。」


「みんな土壇場でビビって逃げたのさ。何気にすることはない、俺たちはしっかりと仕事をしようぜ。」


「いいや絶対におかしいね。俺は帰らせてもらう。」


「お前もほかのやつみたいに逃げるのかよ。いいのか逃げたら逃げたで依頼主に報告させてもらうからな。無事で済むと思うなよ。」


「・・・・・。」


「どうした黙っちまって。」


「うしろ。後見ろ!」


「は?うしろがなんだっていうんだよぉぉぉぉおぉ。」


男が振り向いた瞬間おでこに針が一突きされた。強靭なモンスターの針は途中で折れることはなく頭を貫通し蜂にぶら下がるように倒れた。


「ひっ!ひぃぃぃ。」


次は俺だという恐怖に震え満足に動かない体を必死に動かし果樹園を抜けるために走る。後ろを振り返る余裕なんてなく前だけを見て走り続け道路に出た瞬間月明かりが見えさっきまで暗がりだったこともありホッとしたのもつかの間、足に痛みを感じ目線を下に移すといつからそうだったのかわからないがくるぶしから下がなく足跡のように血の跡が果樹園から続いていた。


「あ、あ、あ。」


叫び声を上げるため口を開けようとするとそれをふさぐように蜂がへばりつき口を足で固く閉ざした。何とか蜂をどかそうともがくと手、足の順番で蜂に押さえつけられそのまま誰に知られることもなく巣の中に連れてかれていった。


「(ここの平和は私が守るのよ~。)」

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