田舎でモンスター養蜂家
幟
第1話 プロローグ
俺は、今まで仕事が長く続いたことがない。高校卒業後に就職した食品倉庫の会社でしばらく務めていたが、客先の店長がクレーマー気質で粘着されてしまい心が折れてしまった。それからは仕事についても何かしら理由をつけてやめてしまう。
そんな俺は、冒険者という仕事についてしまった。冒険者は夢のある仕事であり魔物の素材やアイテムを見つければ一攫千金のチャンスがある。しかし、命がけの仕事でもあり安定した職業とは程遠いものだ。こんな空想や小説のような世界は俺が高校生の時に世界中でダンジョンが発見されたのが始まりで大パニックになったが、なれとは怖いもので2年ほどで生活・経済の一部として定着した。
この仕事を続けて3年、Cランクまで上がることができたがそれ以上にはなれなかった。ランクは強さと実績を積めば上がっていくのだが俺には強さがなかった。Cランクとは誰でもなれるランクでありBランクになれば上位冒険者という肩書がつく。俺と同時期に冒険者になったものは、やめたやつを除けばみんなBランク以上になっていた。その事実がさらに俺を苦しめやめたいという気持ちを大きくした。
そんな俺にもやりたいことができたのだ。養蜂家というものを知っているだろうか。
ミツバチを飼育し巣箱にできたはちみつを集め売りに出す仕事だ。ミツバチは生物であるため外敵や病気などで全滅したり、うまく避けても蜜が全然集まらなかったりと素人には管理の難しい仕事である。
このミツバチを魔物で代用すればいろいろうまくいくのではと俺は考えたのだ。考えが浅すぎると思われるかもしれないが魔物は普通の生物より頑丈で強く病気にもかからないし、食事もダンジョンの魔物を与えればいいのだ。
ただ、また仕事を辞めてしまうことに少しの抵抗がある。命の危険があるとはいえ3年続いた仕事をうまくいくか全くわからない仕事へ本当に移ってよいのか、これも今の仕事を辞めるための言い訳にしようとしているのかもしれない。
悩んだ、とても悩んだ。だけどいままでやりたいことのなかった自分が初めてやってみたいと思った仕事へ挑戦してみようと思う。気持ちを引き締め冒険者組合の入り口をくぐり受付の前に立った。
「あの俺、今月いっぱいで冒険者やめようと思ってます。手続きお願いします。」
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