第17話 久しぶりの冒険者組合

今日は、久しぶりに冒険者組合に顔を出そうと思う。この前作ったドライフルーツを見てもらうのとハチたちのご飯集めのためだ。


久しぶりの組合だが、動画での配信の件もあり俺は冒険者界隈では少し有名になってしまったので組合に行ったら余計なもめごとが起きてしまうかれない。まああれだけ高価な金額で取引される果物を作っていたら遅かれ早かれもめごとは起きてしまうと思うので、その機会が早まっただけだろう。


それでも組合の中では平凡な能力値だった俺が一人で行くのはさすがに怖いので、今回はみっちゃんたちに護衛を頼むつもりだ。働きバチの中でも特に優秀な親衛隊と言われる奴らを2匹、大きさはハンドボールほどで働きバチより何倍も強く素早い、そして体色が黄色ではなく赤いのが特徴だ。まるでどこぞの大佐の機体のようだ。


準備が整ったので車に乗り込みいざ出発だ。ハチたちは初めての車に興味があるようで中を飛び回りいろいろなところを触っているがみっちゃんはもう慣れたもので、助手席で背にもたれもう夢の中に入っている。


しばらくしてようやく組合に着くことができた。田舎は車通りが少ないので移動は楽だったが都会に来ると車が多く進まないので無駄に時間がかかり嫌になってくる。駐車場に車を止め荷物の入ったバックを背負い入り口に向かって歩いていく。もちろんハチたちは両脇を飛んでおりすでに護衛態勢だ。


入り口をくぐり受付へと歩いていく途中、周りからコソコソ話し声が聞こえてくる。


(なあ、あいつって動画のやつだよな。)


(横にハチが飛んでんだからそうだろうよ。)


(俺、話しかけてこようかな?何かもらえるかも。)


(やめとけ!)


「なあ、あんた園長ってやつだろ。」


「そうだが、何か用か?」


高校生か大学生ぐらいの男性が話しかけてきたが片手にスマホを持っており、おそらく動画を撮っているのだろう。悪い予感しかしないがもめるのも嫌なのでここは慎重に対応しよう。


「俺いま動画とってんだけど、園長ってレアな果物そだててるよね。それ俺にくれない?これでも登録者5万人もいて結構な広告にもなるから、お互い利益があると思うんだよ。」


「悪いんだけど、今のところ個人相手に取引するつもりはないんだ。ごめんね。」


「なんだよ!いいじゃねぇか。ただ果物作ってるだけでぼろ儲けなんだろ、ちょっとくらい俺にくれたってかわりゃしねぇだろ。」


(あいつまた誰かに絡んでるよ。)


(この前も上位冒険者に絡んでたよな。俺は人気配信者だから知名度が上がるとかなんとか言って寄生しようとしてたんだっけ?)


(そうそう。それで断られて逆切れして全員ネットにさらしてやるって暴れてたよ。)



周りからよくない話が聞こえてくる。相手の性格を考えるにもう詰んでるのではないだろうか、どういう選択をしても逆切れをかまされてめんどくさくなるのが見えている。


「とりあえず、今日のところは何もしてあげられないからいつか機会があったらね。」


「そんなこと言っていいのか。お前のあることないことネットにさらして平和に暮らせなくしちゃうよ。」


あぁ、めんどくさい。誰か助けてくれ。今すぐここから立ち去りたい。やっぱり来なければよかったかもしれない。仕方がないここは逃げるが勝ちだ。即座に振り返り支部長室に向かって全速力で駆け抜ける。突然の逃走に相手は出遅れ俺の後ろを追いかけてくるがもう俺は扉の前まで来ておりすぐに部屋に入ると奥村さんの背後へと回り机の陰へと隠れた。


突然部屋に入ってきた俺にすごくびっくりしていたが何かあったとすぐに理解したようで、そのまま隠れていろと言い部屋の入口へと目を向けた。すると扉がバンっと開きさっきの男性が息を切らして入ってきた。


「おい!どこに行きやがった!」


「なんだお前は。勝手に支部長室に怒鳴り込んできて常識がないのか。それとも俺に対する嫌がらせか。」


「支部っ!いえ、なんでもありません。知り合いが急にどっか行っちまって慌てて探してたんですよ。」


「そうか。おそらくその知り合いとやらはお前のことなんて知らないと思うけどな。それにお前は前にほかの冒険者ともめごと起こしてたな、次何かしたら冒険者の登録を消すと伝えたが憶えてるか。」


「もめごとなんて起こしてないですよ。いやぁここにもいないならどこに行ったのかなぁ?あはは。」


そう言って男性は部屋を出ていった。


「はー。奥村さん突然すみません。助かりました。」


「いきなり入ってくるからびっくりしたぞ。話は来ていたと思うがあいつは次なんかしたら組合からたたき出すからなんかあったら俺に言え。」


「わかりましたすぐに言いに行きます。それでここに来た本題なんですけど、新しい商品ができた報告に来たんですけど・・・。いま大丈夫ですかね?」


「新しい商品ならいつもの配送で送ってくれればよかっただろ?まあいいか。とりあえず話は聞くからそこに座れ。」


その後はドライフルーツを渡し鑑定をしてもらうと、効果が一段下がってしまうことが分かったが保存食として活用できることから通常の青果品の7割の値段で買い取ってもらえることになった。それから今度から組合に来るときは従業員用の裏口から出入りするよう言われてしまった。


組合の従業員にサンプルのドライフルーツを配り感想を送ってもらうよう頼みダンジョンへご飯を集めに向かった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る