第16話 リベンジ

ドライフルーツ製作から2日たちフードドライヤーが届いた。今度こそは絶対に成功するだろう。説明書を読むと果物だけではなく肉や魚、野菜なんかも食材として使えるらしい。肉はジャーキーに、魚は干物や煮干しなどの乾物に、野菜は1度乾燥させたらフライパンで炒って野菜チップスにしたり粉々にしてパウダーにしたりといろいろな調理ができるため買ってよかったと思える内容だった。


今のところはドライフルーツしかやる予定はないのでいつかいろいろやってみようと思う。前回と同じで使うのはイチゴとオレンジなのだが、収穫量が減ってきておりそろそろ取れなくなるだろう。もともと農園のような大規模で栽培はしていないためしょうがないといえばしょうがないのだが取れなくなってしまうと次の季節までニートということになるので少し気持ちが落ち込む。


ニートは社会的に見ればダメ人間のように見られるが一時ニートをやっていた俺にはわかるが、最初は毎日が休みなので好きなことをやって楽しい毎日なのだが次第にやることがなくなっていきつまらなくなってしまう。その後は寝て起きての惰性的な生活になりすぐに就職するつもりだったが体が動かなくなっていき心も上がらなくなってくるのだ。俺はそのあと無事に就職し元の生活に戻れたが、動けなくなってしまいニートを続けている人たちも多くいるだろう。働かないのではなく精神的に動けなくなってしまうのだ。だからニートにはもう戻りたくないのでやることのない生活には少し忌避感があるのだ。


まあ、今は考えてもしょうがないことなのでドライフルーツ製作に戻ろう。


前回同様に果物を5mm幅に刻み容器に並べる。機会にセットしたら65℃で20時間で設定し放置する。


前回より簡単で安全だがモーターの音が少し気になるので寝室からは離れたところでやったほうが良さそうなので一度場所を移動させる。20時間もあるのでハチたちのところへ顔を出しに行こうと思う。


巣箱へ向かうとハチたちが集まっており間から顔をのぞかせるとイノシシが倒れており働きバチが押さえつけていた。初めて見るイノシシにびっくりしたがすぐに冷静になり後藤さんに連絡をする。


「内藤ですが、後藤さんいまうちの果樹園でイノシシが倒れていましてどうしたらいいか教えてほしいんですが。」


「おぉ内藤さん、イノシシがでて困ってるところ申し訳ねえが今は狩猟期間じゃねえんだわ。狩ることはできねえから逃がすしかねえな。力になれなくて申し訳ねえ。」


「そうなんですか、狩猟期間じゃないと狩っちゃいけないなんて初めて知りました。なら被害が酷いときなんかは泣き寝入りになるってことですか。」


「いや、ちゃんとした申請をして許可が下りれば狩猟ではなく駆除として狩ることはできるが、その日その場でっていうのは無理なんだ。やれるとしたら捕獲して役所に連絡することまでだな。」


「そういうことならしょうがないですね、とりあえず被害はないので山に返そうと思います。ありがとうございました。」


電話を切りハチたちにイノシシを山に返すように伝えると、イノシシを数匹でつかみ飛んで行った。知らない人がこの光景を見たらきっと驚くだろうなと思いながら見送った。


気を取り直して巣箱へ向かう。巣箱に着いたらちょうど食事中だったようで、アイテム袋から魔物の死骸を出しみんなで噛り付いていた。魔物の肉は種類によっては非常においしく高額で取引されている。俺も1度食べたことがあるが当時は転職ばかりで金銭的に余裕がなく基本的にはすべて売っていた。味はスーパーなどで売られているものとは比べ物にならないぐらいおいしくきっとあれを食べ続けていたら元の食事には戻れなくなるだろうからたまに食べるくらいがちょうどいいだろう。


食べ終わるのを待ち女王に困ったことはないか尋ねるとアイテム袋を持ってきて肉の補充と魔石も欲しいらしく、たくさん持ってきてくれとお願いされてしまった。


ドライフルーツの製作がうまくいったらいくつか持って組合に補充もかねて挨拶をしに行こう。


次の日の朝になり、フードドライヤーを確認すると乾燥が終わっており容器を開けると小さく縮み上がり水分がぬけて指で割れるほどパリパリになっていた。イチゴを食べてみると甘さが濃縮されとてもおいしくなっていた。オレンジも同様で甘くなっていた、ただ今回は皮つきでやったので次回は皮をむいてやれば食べやすくできるだろう。


これなら商品として売りに出せるだろうから、少し多めに作って久しぶりに組合へ顔を出しに行こう。

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