第19話 ダンジョンボス

食料調達班の朝は早い。まだ日が昇っていな時間から行動を開始しひたすら不意打ちで攻め回収はハチたちに任せ仕留めていく。


日が昇りあたりが明るくなってくるとモンスターたちが活動を始めると同時に警戒心も強くなっていく。早朝はモンスターも動きが鈍いのか基本的には逃走を選び正面から立ち向かってくるものは少ないのでもし奇襲に失敗しても比較的安全にやり過ごすことができる。


朝の数時間で何百体も狩ることができた。結果としては上々だ。今日の目標は牛系の魔物を狩ろうと思っている。なるべく少ない群れを探さなくてはいけないのとほかの冒険者も同じ考えのやつがいるため早い者勝ちの争奪戦という2つの重要なポイントがある。冒険者の暗黙の了解として戦っているモンスターに横やりを入れてはいけなく助けてほしいなどの声がかかってようやく共闘ができるのだ。


一刻も早く群れを見つけるためハチたちに斥候を頼む。


「よし!これから牛系のモンスターを見つけてほしい。君は東へ、君は西へ、俺は北に行くからもし見つけたら合図をお願いね。」


指示を出し合図用の発煙筒を渡して別れる。別れてから20分ほどたち東の空で煙が上がった。


「ギー!」


気づいていなかった俺にみっちゃんが鳴き教えてくれた。最初は走っていこうとしたが、それでは遅いのかみっちゃんが背中をつかみ上げ空へ一気に飛び立った。


「ぎゃーーー!落ちる、落ちる。それに早いしめっちゃ怖い!。」


時速200キロはあるであろうスピードで飛んでおり命綱がみっちゃんのつかんでいる上着のみという恐怖の中じたばたもがいていると服からビリっという嫌な音が聞こえてきた。


「あ、やばいやばい。落ちる絶対落ちる!ストッーーープ!!」


みっちゃんを慌てて止めゆっくりと地上に下ろしてもらう。地面に足が付きホッと一息をつき服の確認をすると縦に裂け目が入っておりもう服とは呼べるものではなくなっていた。みっちゃんは反省しているのか申し訳なさそうに肩へ止まった。


「みっちゃん、これからいきなりつかんで飛ぶのは禁止な。やってもらいたいときは何か方法を考えるから。」


急遽服を着替え煙のほうへ走っていく。


到着するとグレーターバイソンが20頭ほどの群れを作っておりハチたちが風魔法ですでに仕留めていて肉は角切りになっており血の池になっていた。やった側の者とはいえこの光景には申し訳なく思ってしまう。死体の前で手を合わせアイテム袋の中にしまっていく。その後はひたすら同じ行動を行いアイテム袋がいっぱいになるまで集めることができた。


ここに来た目的も終わったのでボスへ挑戦してみようと思う。確かここのボスはミノタウロスだったはずで過去に1度戦ったことがあり結構苦労した覚えがある。俺は攻撃力には乏しいのでミノタウロスの強靭な肉体を貫くことができず、消費アイテムをたくさん使ってようやく倒せたぐらいなのでみっちゃんたちに期待しなくてはいけない。


ボス部屋の前に着き手汗をぬぐって扉をくぐった。


正面にはミノタウロスが巨大な戦斧をもって咆哮を上げた。


「ブモオオオオオオォォォォ!!!」


咆哮に怯んでいるとそのまま一直線につっこできて戦斧を薙ぎ払った。俺は何とかしゃがんでよけスキルを使いミノタウロスの後方へ移動し気配を殺した。その間にハチたちが上空から風魔法で攻撃を仕掛けているが浅い傷しかつかず全く効いていないように見られる。おそらく身体強化の魔法でも使っているのだろうが昔の記憶よりすさまじく強くなっているように思える。体はあんなに大きくなかったし戦斧ももっと小さかったはずだが今余計なことを考えてもしょうがないので頭を切り替え首筋に奇襲の攻撃を仕掛けた。


「くらえ!【バキッ】」


首に当てたナイフが肉を切りつけるが歯が入ることはなく壊れてしまった。攻撃手段がなくなった俺はすぐに後ろへ飛び体勢を立て直す。ミノタウロスは痛くもない俺たちの攻撃に笑い声をあげ戦斧を振り回し俺たちを壁際に追い込んでいく。


「ブモォ!ブモォ!」


両のほほを上げ醜く笑ったミノタウロスはすぐには殺さないつもりか、わざと攻撃を外し俺たちが逃げられるように移動をする。


ハチたちの攻撃が効かず、俺の攻撃手段もなくなり体力も限界という絶望的な状況に心が折れその場にしゃがみ込もうとするとみっちゃんが絶叫を上げた。


「ギーーーー!ギーーーー!ギーーーー!」


声を上げ終えると1Lのペットボトルほどの大きさだった体はどんどんと大きくなり大型犬ほどの大きさになり姿はまがまがしくなっていた。


「みっちゃん?」


「ギ!」


俺の呼びかけに返事を返してくれたのでおそらく大丈夫なのだろうが今までのかわいらしい姿だったのが今では命を刈り取るような見た目になっているため恐ろしさで体が震えてくる。みっちゃんはスッと動くとミノタウロスの戦斧を顎で砕きお尻の針で脳天をぶち抜いた。一瞬の出来事に呆然としているとみっちゃんが元の姿に戻り俺の肩に止まった。


「今のは何だったんだ?なあ、みっぁぶ!」


まるで聞くなと言わんばかりにみっちゃんは俺の口を抑えそっぽを向いた。おそらくあれがみっちゃんのホントの姿でAランクの女帝蜜蜂の力だろう。聞いてほしくないなら無理に追及するのはやめよう、今は助かったことに満足しよう。


ミノタウロスの死体をアイテム袋に収納すると死体の下から宝箱が見つかった。罠はなさそうなので今回の功労者であるみっちゃんに開けてもらう。開いて中をのぞくとピアスが1つ入っておりほかには何も入っていなかった。これは組合で鑑定してもらおうと説明しすべての用事が終わったので一度休憩を行いダンジョンを後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る