log17...シャールク・ジャバダとの交戦(記録者:YUKI)
ま、内容に対して不自然に報酬が良いクエストだとは思っていたよ。
何故だか、このゲームの運営AIはコレ系の“騙して悪いが”的なクエストをちょくちょく作りたがるみたいなんだ。
むしろ、アタシレベルに
様式美ってヤツだよ。
さーて、今や偉そうに上空を占拠する敵機の外観を見ていこう。
パッと見、飛行艦? と思ったけど、丸っこいフォルムの……強いて言えばサメだとかクジラをモデルにした特殊規格
そのデカブツを更に取り囲むように、円環状の、何らかの武装ユニットが二重に装備されている。
頭部パーツCOMに命じて、敵機の概要を確認。
機体名はシャールク・ジャバダ。
COMに翻訳させた所、ネパール語でサメだとかアゴって意味だった。やっぱり、モチーフの予測だけはビンゴだ。
目視圏内の得物はデータベースに情報アリ。
円環その1はミサイルユニットで、円環その2はマルチプル・レーザーキャノンらしい。
いずれもゆうに百連装を超える。
嫌な予感しかしない。
交戦開始。
ウチも
ま、あれだけのデカブツだ。
六機とも、どこに居ようと同じモノを見上げているハズ。そのうち嫌でも鉢合わせるだろう。
で。
エグい量の熱源反応。
空を優雅に漂うサメ野郎が、早速、ミサイルユニットを全開。冗談抜きで、ミサイルの群れが空を覆い尽くす。
いったんサメ野郎を中心に放射したかと思えば、緩やかにカーブを描いてアタシらを挟み込む軌道で向かってくる。
ブースタ全開、全速前進。モスコミュールも同様。
あの弾幕が閉じる前に駆け抜けなければ、一瞬で消し炭だ。
ロイヤルガードは、逆に後ろへ全速退避した。
アタシらのように弾幕が閉じる前に駆け抜ける機動力が無いのは明白だからだろう。
果たして全方位をミサイルに囲まれる地獄を無理矢理くぐり抜け、アタシとモスコミュールは一番にサメ野郎へ接近――なのだけど。
撒いたミサイルが無数、爆裂するのを背に、アタシは
「二つばかりアドバイスするよ、モスコミュール」
本来なら、ここでエネルギーを浪費してまでステルスを使う意味はない。
いわゆる大ボスのサメ野郎に通じないのは言わずもがな、モスコミュールのヤツは良質のスパコンを内蔵した頭部パーツを採用しているコトだろう。
スキャンの手間も無く、オートでアタシの姿を暴いてくれるだろうさ。
大事なのは、アタシが、この場においてモスコミュールにしか通用しないステルスを使ったという事実。
これは、モスコミュールへの宣戦布告さ。
「アドバイスその1。
駆け出しのウチから頭部パーツを盛るモンじゃあない。便利すぎるCOMでやってると、自分の腕が育たないよ」
アタシはグレネードランチャーに持ち替えて狙いを定める。
「ターゲット・ロック。グレネードランチャー用意」
そして、全く言う必要のないキメ台詞を口走る。
いえね、機体がこんな透明のナリじゃあアタシが何持ってるかわかりづらいだろうからね。
共闘仲間への、親切心だよ。
で、タイニーソフトウェア社自慢・至れり尽くせり機能搭載の頭部パーツは、それは親切にあれこれ教えてくれるだろうね。
アタシがこれから放つグレネードランチャーの狙点とか、軌道とか、何なら爆発半径も?
そして。
モスコミュールの中の人が無能なら、このままアタシのグレネードに巻き込まれてお陀仏。
まあまあ以上賢ければ、グレネードランチャーを避けるだろう。
で、それ以上に有能なら……グレネードランチャーを避ける前に、自分の末路を思って絶望する。
《ぁ、あ、あァアあぁァアア!?》
アタシがグレネードランチャーを撃つ前から発狂した。先の読める、有能な部類らしい。
分かっちゃいても、むざむざグレネードランチャーの爆発範囲に飛び込むなんてマネ、まともな神経してたら出来るはずもなく。
「グレネードランチャー、発射」
アタシは満を持してそれを撃った。
あくまでもサメ野郎を目掛けてね。
敵機を狙った結果、僚機が巻き込まれる羽目になっただけだ。仕方がないよね。
着弾。爆発。
結局モスコミュールは横飛びにブースタを噴かせて、爆風から辛くも逃れて。
で、サメ野郎の機体から伸びた、何かの砲身に捕捉されてしまった。
アタシのグレネードに突っ込んで爆死するか、サメ野郎に撃ち殺されるか。
ダブルバインドだ。
アタシの放ったグレネードは、モスコミュールの逃げ道を塞いでしまっていたってワケ。
サメ野郎がそれを発射した。
長大な柱のような飛翔体が瞬く間にモスコミュールの胴体にブチ込まれ、あまつさえ背中まで見事に貫通した。
どうやら、
ニードルランチャーの類だろう。ただただ鉄の塊をぶん投げるような蛮行だが、これが案外バカにならない威力だ。
サメ野郎が放つには皮肉な武装だがね。
そんなわけで、モスコミュールは高速でぶっ飛びながら、あえなく爆発・空中分解した。
「アドバイスその2。
人にしたコトってのは、いずれ自分に返ってくる。良くも悪くもね」
ヤツらのチームと手を取り合う気は無い。
このサメ野郎を落とせば、確実に撃墜スコアは逆転するだろう。
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