log06...コロッセオへの挑戦? やるだけ無駄だ~実況編~(記録者:TERU)
試合開始。
逆関節のエクリプス・ラビットが跳躍。
赤い四脚機体アゲダコが火炎放射器を発射。
燃料が噴霧され、遅れてオレンジと蒼の入り雑じる光熱が撒き散らされる。
直撃すれば、アルバスの旧式ボディごとき簡単に溶解させるだけの火力だが。
アルバスは最低限度の旋回で火の海を掻い潜り、なおもアゲダコへの肉迫をやめない。
畜生でも火を恐れる分別はあるのだが、どうやらヤツはそれ以下のオツムらしい。
エクリプスがピョンピョン飛びはねながらマシンガンの弾幕をばらまくのを、アーテルが性懲りもなくアサルトライフルで対抗するが、外す。
もう一方の手でバズーカを、アゲダコへぶっぱなす。
アゲダコが、マグナムを発射。
それがアルバスに直撃。
アルバスの見るからに鈍重そうな機体が、大きくたたらを踏んで、挙げ句、倒れそうになる。
SB戦においての拳銃は、貫通力を弱め、むしろ敵機体への残留衝撃を追求したものが多い。
弾丸が貫通しなかった事でアルバスの機体内部から効率的に衝撃が伝わったわけだ。
結果、アルバスは姿勢制御を完全に失い、良い的に――一転して、アルバスの白い機体が横飛びにぶっ飛んだ。
よく見ると、機体の裏のあちこちから蒼い噴射光が。
……なるほど、何基かはわからないが、全身の至るところにサブ・ブースタを仕込んでいるのか。
防御力の為にあの重装甲にしたと言うよりは、むしろ、サブ・ブースタを内蔵した結果、機体が肥大化したと言うのが正しいようだ。
大昔のロボットアニメで、そんなコンセプトの機体を見た事がある。
当然、全身のブースタ制御は
小肥りのハエじみた小賢しい機動力を発揮し出したアルバスが、今更ながらビームマシンガンも発射しはじめた。
……重量機体の全身ブースタ制御に、ジェネレータ直結型のビーム兵器をフルオート射撃。明らかにエネルギーをバカ食いして、普通なら機体を動かすエネルギーも残らないはずだが。
なるほど。
こいつは資金の大半をジェネレータに注ぎ込んだのだろう。
恐らく
この程度の事で虚を突かれたアゲダコが、あからさまに逃げ腰になる。チェーンガンとビームマシンガン、二丁の火線に曝されて直撃だけは免れているのは、雑魚なりの立ち回りなのか、単に
さて、小うるさく跳び跳ねているエクリプスが、垂直ミサイルを発射した。
電子誘導の細長い飛翔体が、地べたを這いずるアルバスらを襲う。
アルバスもアーテルも、アゲダコも散開。
固体じみた爆轟があちこちで膨張し、コロッセオの床を抉りとって行く。
この瞬間、アルバスの背中でずっと腐っていた
左右の手に持つ銃器がいずれも決定打に欠けるフルオート銃。おれの推測が正しければ、背中のあれが――。
アルバスの肩に乗る、砲身の形に変形した翼だったものが、必要以上の光を散らして火を吹いた。
無数の“玉”のような弾が横殴りの雨になって、アゲダコを襲った。
超巨大ショットガンと言ったところか。
やはり、背部兵装こそがヤツの“主砲”だったようだ。
数発がアゲダコをかすめ、それだけでマグナムを持つ腕を紙クズのように引き裂いた。
まあ、これで決められなくて御愁傷様だったな。
散弾は近距離で当ててこそ真価を発揮する。
これが直撃だったなら、アゲダコを仕留められただろうが。
しかし。
アゲダコの方もアゲダコの方で、ショットガンを意識してテンパってるのか。
事もあろうに、このタイミングで肩のレーザーキャノンをチャージし出した。
蒼白い光が、キャノンの銃口を始点として膨らみ、飽和。
分厚い光の柱が一瞬にして横へ伸びた。
アルバスもアーテルも、既に射線から飛び退いていた。
いやー、レベルの低い戦いだ。所詮は双方Fランってとこか。
アーテルが胸部の装甲を開いてマイクロミサイルを解放。休むまもなく、手持ちの武器をパージしだした。
時間差で群がるマイクロミサイルから、アゲダコがほうほうの体で逃げ惑う。
そんな弱りきった雑魚へ、調子に乗ったアルバスが追撃を仕掛けるが。
エクリプスがその行く手に飛び降りて、左手の甲に設置したレーザー・ジャマダハルを伸ばして斬りかかる。
苦し紛れにチェーンガンとビームマシンガンで迎え撃つアルバスだが。
バカめ。
チェーンガンは弾切れ、よりにもよって同じタイミングでビームマシンガンもオーバーヒートで機能停止。
終わったな。
アーテルも、手持ちの武器をパージして、何事か小細工をはじめたが、その前にアルバスが保つまい。
ジャマダハル型のブレードは手の甲に備え付ける形式上、
とはいえ、コックピットを一刺しで消し炭にするだけの熱量は充分にある。
アルバスがやられた後、二対一で畳み掛けられてアーテルもお陀仏だろう。
反撃の手だてを失ったアルバスへ、エクリプスの振るうビーム刃が水色の尾を引いて襲い掛かる。
ビームの刃を防ぐ手段はほとんどない。
せいぜい、刃を形成するエネルギーフィールドを霧散させる装置でもあれば話は別だが、普通はそんな無駄な武装を積む余裕はない。
ロボットアニメでありがちな、ビームサーベル同士のつばぜり合いなどもあり得ない。
刃が抵抗なく通過して終わりだ。
ビームマシンガンの冷却までには決着がつくだろう。
で。
アルバスが、なぜか弾切れのチェーンガンを突き出したわけだが。
その、チェーンガンの先端から蒼いビームが伸びて、がら空きとなっていたエクリプスの胸部コックピットをあっさり貫いた。
ジェネレータが誘爆し、エクリプスのコックピットが破砕。
機体が後ろ手に倒れた挙げ句、全身でショートを起こし、爆発四散。
エクリプスは死んだ。
なるほど。
チェーンガンの先端の光は、短い刃の形に留まっている。
言うなればビーム
また浅知恵だが、この戦いはしのげたようだな。
何とも生き汚い。
間抜けにもエネルギーダウンを起こして立ち往生していたアゲダコへ、アーテルがレーザーの大鎌で襲い掛かり、これもぶった切って爆発四散させた。
攻守完璧に見える四脚ってのも、良いことずくめでもない。
駆動だけでエネルギーをバカ食いするのだが、パイロットはそんな事もしらなかったのか。それとも、軽い気持ちであんな高出力レーザーを乗っけたのか。
どちらにしても頭が悪い。
あと、アーテルの得物だが。
何で鎌? 実体武器ならそれでも良いのだろうが、鎌をエナジー武器にしてしまったら、柄に敵機体が当たってぶっ壊れるリスクが出てくるだけだろう。
コンマ秒以下の仕事をさせる近接武器に、わざわざ、そんな事に気を使うリスクを負ってどうする。
槍じゃ駄目だったのかね。
ツッコミどころしかない。
結局こいつらは、腕の無さを、小細工で切り抜けただけだ。
こんなもん、通じるのはこの一戦だけだろう。
次以降は対策されるに決まっている。
さて。
コロッセオのランクってのはどうやって上げれば良いのか?
簡単だ。自分よりランクが上のヤツと試合して勝つだけだ。
だが、こんなセコい機体でFランクから抜け出せるものか。
で、まあ。
結論を言えばヤツらはこの日、Cランクにまで上がった。
まあ、半端なヤツらにはこの辺が限界だろう。
それに所詮、コロッセオは実戦では無い。
このゲームは、そんなに甘くはないのだよ。
今に見ていろ。
必ず吠え面をかく。
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