log36...スジャータ撃破作戦、半ばくらい?(記録者:YUKI)
“ドゥルガー”の具体的なエネルギー放出量を頭部COMに計算させてある。
今しがた再展開の終わったシールドを二層使って、事足りそうだね。
いや、理屈でわかってても、あえてコレ浴びるの、めちゃくちゃ怖いけどね。
実際にその光の濁流が押し寄せて、アタシの視界を埋め尽くした。
目が眩んでも、怯む暇はない。
バリアを完全に再展開される前に、ありったけのレーザーキャノン、ニードルランチャー、拡散バズーカを撃つ。ひたすら撃つ。
アルダーナーリーが、被弾の反動に踊りながらも、冷然とヒュージブレードを出力、アタシを見据えて振り上げようとして――背後から、フロート形態になったアーテル・セラフの特大ムーンライトを袈裟がけにもらって、空中ながら大きくつんのめった。
目標をアタシからアーテルへと変えて、ブレードを振りかざそうとしたアルダーナーリーだったが。
その時には、アルバスの両手から放たれた、えげつない濃度の弾幕が殺到していた。
何発か赤青のボディを抉りぬいたが、アルダーナーリーはなおも宙を翻り、やはりアタシへ唐竹割りに“天の川”じみたブレードを振り下ろした。
まともに直撃コースだ。
……お二人のお陰で、二層シールドが復旧するまでの時間は稼げたね。
また、コックピット内の全方位モニタが冗談みたいな光量で満たされるが、機体への実被害は。
ほぼゼロ、だ。
諸君らは覚えているか知らないが、バカ弟子謹製のこのシールドには学習機能ってもんがある。
一度受けた攻撃を記憶し、次回以降、同じ攻撃はほぼほぼ踏み倒してくれる優れものだ……っと、しまった。
弟子を安易に誉めるものではないってのが、アタシのポリシーだった。ついうっかり。
ヒュージブレードは、さっき一度もらってるから、シールドが学習してたんだよね。
しかしまあ。
スジャータのヤツ、それを知らなかったのか。
ハナからアタシにブレードを喰らわそうとしてたってコトは、そういうコトだよね。
運営の権限で、こちらの機体情報も丸裸にするくらい簡単だったろうに。
……
機体の動きとか、戦術の取り方やらが、なんだか“想い”があるヤツのそれなんだよねぇ。
らしくもない。
こんな直感には、何の科学的根拠もない。
アイツの言う通り、AIなんて単なる人工物だ。
それに対して、少しだけセンチな空想をしちまった。
ヤキが回ったってか、これも、このチームでやってきた影響だと思うがね。
こんなオバサンでも、まだまだ他人に染まる余地はあったのか。
アーテルが、下段から斬り上げる。
それ自体はあっさり躱されるが、アルバスが回避先に弾幕を張ってヤツの逃げ場を奪う。
アーテルのレーザー
ヤツは重い身体を大儀そうにズラしたが、光波が左脚をまともに通過。完全に切断され、遥か眼下のマヌ“地表”へ落ちて行った。
さて、部位切断レベルの被害となると、リペアシステムがどの程度及ぶかはわからないが、おいそれと直せる損傷ではあるまい。
まだまだ油断は出来ないが、押している。
アーテルへ矛先を向けようとしたアルダーナーリーへ、アタシがまた肉迫。
これじゃミサイルが使えないが、どの道、そろそろ弾数も底を尽きかけてる。
ヒュージブレードでアルバスとアーテルが羽虫みたいに追い払われるが、アタシにそれはもう効かない。
ただ、アイツらがブレードの回避を強いられたコトは、同時に攻撃の手が緩んでしまったコトも意味する。
バリアシステム“ドゥルガー”、再展開。
何番煎じかのそれを受けたアタシのアウトレット・モール、ってか二層シールドは全くの無傷。
コレもさっき、学習させてもらったからね。
ヤツが迂回するように逃げるので、アームドベース左翼の轢殺丸鋸で巻き込むように旋回。
対するヤツは、三連ドリルアームを大きく振りかぶり、真っ向から突きこんできた。
さすがに、シールド越しでもビリビリ機体が震えるのを感じる。
ドリルを武器にするってのは、古くからロマンとはされているが、実際にやるとかなり無謀な行為だ。
ほら見ろ、アルダーナーリーの機体がドリルの反動に振り回されて、ほとんど空中で回転しかかってる……が、アタシが迎撃してやろうとニードルランチャーを突きつけた時にはもう、ヤツはひらりと翻って離れていた。
とんでもない姿勢制御だ。
って、今さら突っ込むのも虚しいがね。
とはいえ、さすがの威力だ。
プライマリシールドがあっさりダウンして、セカンダリシールドでどうにか食い止められたが、それがなければ、アームドベースにどれだけの被害が出ていたかわかったものではない。
しかしまあ。
さすがに、何となくこちらのシールドの種に見当をつけただろうかね。
なんか、ヒュージブレードのはじっこで牽制するような動きといい、そういう動きになってきてるね。
まあ、セカンダリシールドを保てば、ドリルは怖くない。
あとは迂闊に近づいてこれないよう、残りのミサイルとキャノン、拡散バズーカ諸々を一斉発射。
今や、ヤツの武装の半数を無効化したアタシが盾になり、アルバスとアーテルの連携でやれば――、
――アルダーナーリーが、肩のずんぐりした装置から、無害な光を発した。
それはアタシのアウトレット・モール、及び、そのコアである
まるで、何かをスキャンするかのように。
そして、次瞬。
アウトレット・モールのアームドベースが、UMGPの装甲が、嫌な音を立ててねじ砕け散った。
機体が一瞬で制御を失った。
アームドベースは……破棄せざるを得ないな。
アタシはUMGPを脱出させるが、それでもコントロールが効かない。墜落するか、どうにか持ちこたえられるか、半々ってトコか。
まあ、ナニをされたかって、
「音響兵器“ダマル”、だね……」
わかってはいた。
そんなものを積んでるんじゃ、対実弾シールドも対エナジーシールドもクソもない。
ま、“でんでん太鼓”ダマルの正体もわかって、これであらかた、種明かしは済んだろう。
「あとはお二人さん、アタシのザマを教訓にどうにか――」
って、言いかけて。
今日ってか、この戦闘何度目の絶句かねぇ。自分でいうのもアレだけど。
この期に及んで、またとんでもないデカブツの機影が、こちらへ飛んでくるよ。
《合体ユニット“チャンディー”起動》
それも、さ。
なるべく考えないようにしてたんだよ。
精神衛生上の意味で。
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