log19...HARUTOに王手を、(記録者:強化人間INA)
その“透明な機体”が、こちらと同じ高度まで昇って来たのを見た瞬間、あたしは判断した。
共闘関係は今や崩壊した。
お互いに誤射を取り繕う気も無い。
シャールク・ジャバダは一旦
あたしは後退して
再度肩を並べたロイヤルガードは、燦々たる有り様だった。
不死身と思われていた装甲が目に見えて損壊し、左腕は殆ど大破していた。
マルチプル・レーザーとオービットの放つビーム豪雨が照らす情景の中。
忘れもしない、あの黒いやられメカみたいなヤツがあたし達の前に降り立った。
ロイヤルガードが、実体シールドを掲げながら全速前進。同時にあたしは真上に跳躍し、ホバリング。上下からの挟み撃ちだ。
UMGPがロイヤルガードへマシンガンを撃つ。ロイヤルガードの盾が傘のように展開されて、機体正面を完全に覆い隠した。
小口径の弾程度なら確実に弾くらしい。
レーザーブレードはこの限りでは無いだろう。
あたしはタイミングを合わせ、既に加熱を済ませて朱くなったヒートウィップを射出。
当てる気は無い。事実、UMGPはブースタを短く噴かせて跳び退いた。
ここではウィップで奴の動きを制限し、
狙い通り、ロイヤルガードが奴に最接近。盾を元のサイズに戻しながら着々と間合いを詰めて行く。
苦し紛れか、UMGPがあたしにビームライフルを放った――いや違う! あたしは追撃を諦め、水平に退避。頭上後方と言う明後日の方向から飛んで来た紅いビームを、紙一重でやり過ごした。
シャールク・ジャバダが放ったオービット。UMGPのビームライフルで撃たれたのを避けた結果、あたしが射程内に入った。
あの女、これを誘導したのか。だとしたら、何と言う……。
だが、ロイヤルガードは無事にUMGPを盾で殴り付けた。
ビジュアル的には地味かも知れないけど、SBサイズの弾を弾く程のシールドだ。ちょっとした建設機械くらいの質量はあるらしい。
UMGPは大きくたたらを踏んで、ついには後ろ手に転倒した。
ロイヤルガードはバックして距離を離す。勢いを付けて轢き殺す気か。
けれど。
遠方のシャールク・ジャバダから、マルチプル・レーザーが発射された。
光速の戦略兵器が、何条もあたし達の側を通過。
また、地上が薄氷のように灼き砕かれて行く。
ロイヤルガードも助走を諦めて回避に専念せざるを得なかったようだ。
先程から、シャールク・ジャバダからの横槍が妙に噛み合って、あたし達に不利に働いている。
偶然か、それとも。
あたしは、心の片隅に
ペースを、ペースを取り戻せ。
敵は一機、それも、何ら特徴の無い量産型やられメカでは無いか。
そして。
依然、頭上のオービットがこちらを虎視眈々と狙っていた。鬱陶しい。
こんな物の為に割く神経のキャパシティは無いのだけど、そんな事も言ってられない。確実に始末するべく、ヒートウィップで誘ってから、より威力の高いプラズマヨーヨーの方でオービットを叩き落とした。
ヒートウィップを直ぐさま引き戻す。当たり前のように、UMGPが翔び、こちらへ肉迫して来たからだ。
ビームライフルの方は、そう小回りが利かないだろう。近距離からマシンガンを撃たれると不味い。
あたしは強化した全神経を励起させ、奴の持つマシンガンと言う小さな的を鞭で浚うよう熔斬した。奴の
これでUMGPは、近距離であたしに対し無防備を曝し――奴は微塵も止まる事無く、手首の砕けたアームパーツであたしの機体を真正面から殴り付けた。
馬鹿な! アニメじゃあるまいに!?
奴の腕とこちらの胴体の装甲の一緒くたにひしゃげ、砕ける金属悲鳴と共に、コックピット内が激しく撹拌される。
あたしはどうにか姿勢を取り戻そうと全身で踏ん張るけれど、乱れに乱れた視界の中で、今度はUMGPの脚の
激突。またお互いの機体が砕け合う破砕音。
機体内のモニタが、次々に消えて行く。頭部のコンピュータを何台壊されたか。
九頭龍が、動かない。
ここまで、自分の身体のようなレスポンスだったのが、嘘のように。
UMGPが、死に体のようなフラフラの有り様ながら、ビームライフルを構えていた。
眼下であたしを助けに走り出した、
「止めろォ!」
こんな制止、聞き届けられる筈も無い。
過去三作プレイして来たゲームで、充分理解していた積もりだったのに。
UMGPのビームライフルが無情に尾を伸ばして、タンク脚部を爆砕。
スリップする車のように制動を失ったロイヤルガードは、蛇行しながら暴走し、マルチプル・レーザーキャノンの一条に貫かれた。
難攻不落のロイヤルガードが、あたしの目前で初めて大破した。
何故だか、自分がやられるよりも、ロイヤルガードをやられたと言う事実が、ここ最近で一番心を折られる光景だった。
どうにか、九頭龍のコントロールが戻った。
もう少しで、あいつに、
諦める訳には、行かない。
エネルギーを出し惜しむ必要も無い。
あたしはEMPビュートを手早く射出――いつの間にかブレードに持ち替えたUMGPが、九頭龍の胴体を刺し貫く方が早かった。
「悪魔、か?」
ショートし、爆発の連鎖し始めたコックピットの中、あたしはそれだけを呟いた。
《こちらアンマークド・グッドプロダクト、
奴の無差別通信が入った。
《サメ野郎が海に向かい出した。いよいよ、エネルギー切れが近いようだよ!》
その声が、あたしの聞いた、この場最後の音声だった。
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