log16...HARUTOを謀り、HARUTO共々謀られる(記録者:強化人間INA)
あたし達のチームは、飛行艦の一隻を制圧していた。
ブリッジは落としていない。
何故か?
あいつらの真上に位置取りし続ける為だ。
《
不穏な軌道を描いて墜落し始めた飛行艦から、あたし達は飛び降りた。
眼下、今しがた
《おっと! すいませんね!》
無数の火玉が拡散し、何発かはアーテルの機体を叩いた。
一応、今回のあいつらは“味方”ではある。
この手のクエストでのフレンドリーファイアについては……ゲームのルールとしてはともかく、プレイヤーモラル的にはかなりグレーゾーンな行為ではある。
あまりやり過ぎると反撃されても文句は言えないけど、散弾でブリッジを狙った結果なのだから仕方がない。
あたしもあたしで、ブリッジ目掛け爆導索を振るった。
本人には退避されたけど、
けれど連鎖する爆炎が視界を遮るのには充分だった。
そして。
いつもはあたし達の盾となっていた
あいつらが落とす筈だったこの艦は、
作戦は成功した。
一隻、撃破。
当然、SBよりも艦を落とした方がスコアは高い。
そして「あいつらがこの艦を落とす為に費やした時間と弾薬」を無に出来た事も相対的に大きなダメージとなった。
モニタに表示されている撃墜成績を見ると、あたし達のチームのグラフが大きく伸びて、差を見せた。
あいつらも思う所は多々あるだろうけど、ここに居続ければ沈没艦ごと水底行きだ。
あたしらも、あいつらも、全員散開して艦を飛び移った。
このリードは大きい。
行ける。
後は、余計な事をせず、セオリー通りにSB部隊と艦を落として行けば良い。
あちらの意趣返しに注意を払いながら。
爆発炎上しながら沈み行く艦を背中に、撃墜成績を確認。
依然、あたし達が大きくリードしている。
やはり、最初の横取りが効いている。
そして、本来の作戦も大詰めだ。
第八宇宙港が視認出来る所まで来た。
例によってSB基準の広大な施設で、大都市くらいのスケールはあるけど、宇宙母艦を見付けて破壊すれば、あたし達がリードしたままクエスト終了となる。
そして。
あたし達は三手に別れてターゲットを探し出した、その時、
《タイニーソフトウェアの社員各位、業務の遂行ご苦労様です》
不意に、通信が入った。
この声は、確かクエスト受注時のブリーフィングで概要を説明していた宇宙開発部の。
《依頼の快諾と手際の良い遂行、誠にありがとうございます。
ただ、残念なお知らせがございます》
《こちらの宇宙港には、最初からターゲットの母艦などございません。
依頼内容に虚偽がありました事をお詫び申し上げますが、わたくしとしても本来の業務の一環でして。
つきましては、あなた方にはここで死亡して頂きたく存じます。
“国家”再興の礎となれる事、栄誉に思うが良い!》
つまり。
あたし達は、タイニーソフトウェアに潜伏していた奪還省のスパイに、ダミーの依頼で誘き寄せられ、始末されようとしている……と言う内容のクエストだったのか。
元々の話では、宇宙母艦一隻を落とせば終わる筈だったが。
これ見よがしに海面が隆起して、滝のような水のベールを流しながら、SBの何倍もあろうかと言う巨物が浮上した。
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