log25...さる宇宙で行われた、とある攻防戦について(記録者:フルチューン・MALIA)
高内重工の前線部隊が見えました。
縦にも横にも前後にも並んだ、宇宙ならではの隊列ですね。線で結ぶと箱のようになる、きれいな四角です。
わたしもふくめ、みんな、自社母艦(すごい言葉ですね)のカタパルトから、無限の星空へ飛び立ちました。
あっ、
《
「ええ。変形はギリギリまで控えます」
わたしのアーテル・セラフは、いちどフロート形態になると、武装がレーザーサイズとオービットのみに……つまりエナジー武器オンリーになってしまいます。
あと、この機体の可変機能はまだ試作段階でして、ガレージの設備がないとタンク形態に戻れません。
「アンドセーフティと遭遇する可能性がゼロでもないですからね」
《いや。むしろ確実に遭遇すると思っておきな》
わたしの返答に、彼女はより確信めいた口調で言いました。
確かに、常に最悪の条件を想定するのはどのゲームでも大事ですからね。
《当然、ヤツは最後まで生き残る。アタシらも最後まで死ぬつもりはない。……ほら、遭遇率は100パーセントだ》
敵機ひとつひとつの装備が目でわかるところまで接近しました。
ビームやミサイルが、少しずつ飛んでくるようにもなりました。いよいよ、長距離武器の間合いです。
装甲に定評のある高内重工の
むしろ、陣形の外周はほとんどが、ほっそりとした軽量機体ですね。
鉄壁の装甲を作るパイオニアは「軽くて丈夫」を追究するのも超一流、というわけですね。
軽量機体の前衛に守られるようにして、重量機体が射撃武器を撃ってくる布陣のようです。
《……敵陣、右側面を崩す》
わたしもそれに続きます。遅れて
勢力単位、数十人単位の戦争でわたしたち四人だけが突出するのは、かなり危険な行為ではありますが。
アルバスへ、敵後衛の重四脚が大きなプラズマライフルを構え――後方の
そのUMGPを狙って、前衛の軽量逆関節がライフルを撃ちますが、UMGPが左手に装備したパルスシールドをまぶしく光らせ、弾丸を相殺。
あのシールドの展開方式は二通りあります。
“そこそこ”の出力で長時間ガードするノーマルガード方式と、最大出力で一瞬だけガードするハードガード方式。
今のは後者だったようで、UMGPは全くの無傷で終わりました。
さすがに頭部COMに着弾タイミングの予想はさせているらしいですが、実際にトリガーをひくのはやっぱり彼女自身なので、絶技にはちがいありませんね。
シールドの光がおとなしめになりました。ノーマルガードに切り替えたのでしょう。
UMGPは、まるでジャグリングのような手さばきでビームライフルをグレネードランチャーに持ち替えると、後ろへさがって間合いを保ちつつ、なおも追いすがる敵前衛へ放弾。
硬く濃密な爆轟が広範囲を吹き飛ばしました。
敵方もさすがに歴戦の猛者ばかりであり、ほとんどがとっさに直撃をかわしましたし、やはり高内装甲は簡単に剥がれてはくれませんでした。
わたしも第二波としてバズーカを撃ち込みつつ、背中のオービットを飛び立たせました。
わたしのバズーカが敵の陣形を散り散りにしたところへ、アルバスもオービットを四方八方に射出。
上下からアルバスを取り囲もうとした敵機、目算四機が、オービットに逆包囲される格好となりました。
アルバスのオービットから放たれた蒼いレーザーが彼らの逃げ道を塞ぎ、チェーンガンとビームマシンガンの集中砲火を受けた中量二脚がさすがに大破。
飛び散った機体の残骸がスペースデブリとなって、無差別に周囲を襲います。
敵の一機はオービットに邪魔されてそれの激突を受けるしかなく、宙空で大きく機体を揺さぶられました。
わたしは、その機体にオービットを集中させ、発射。
アルバスもわたしも、オービットを引き戻したのはほとんど同時でした。
残り二機。
片方は、やはり飛来した残骸に合わせたアルバスの射撃にとらえられて撃墜。
もう片方は後方からUMGPのビームライフルが直撃。わたしも、すかさずアサルトライフルを集中させ、これも撃墜。
前衛を援護する後衛。
後衛を守る前衛。
両方の足並みが乱れた敵陣が、にわかに乱れました。
敵のフロート機が、高出力のレーザーキャノンをチャージ。アルバスを捕捉して――下から落ちてきた
ショートしたエネルギーをまといつつも、フロート機は辛うじて体勢を整えますが、もう片方の金色のブレードで今度こそコックピットを裂かれ、フロート機は破砕しました。
休むまもなく、禍蛇は、混乱する敵陣に飛び込んでいきます。
わたしたちも、あとに続かなければ。
そして。
《さーて、来たよ。敵エースの片割れ“御霊前”だ》
機体左サイドが極端にゴツい、カラーリングも左右で白黒に塗りわけられた二脚SB。
それの実物が……きました。
統率の乱れた前衛をかばうように、禍蛇へと向かってきます。
突出したもの同士、一騎討ちのような格好になりました。互いの僚機がおいつくまでの、一瞬のことではありましょうが。
御霊前がマシンピストルを射撃、禍蛇は当然のように身を翻して躱します。遅れて発射されたガトリングの火線が禍蛇を追いかけてきます。
駄目押しに小型ミサイルが発射され、ガトリングと挟み込む軌道で禍蛇を襲います。
下へ逃げる禍蛇へ、御霊前から分離して推進力をあたえられたコンテナが襲来。
それがパカッとひらいて、無数のミサイルがピラニアの群れのように殺到します。
水平・垂直ベクトルから禍蛇を挟み込むように襲うミサイルたちですが。
ブースタを全開にした禍蛇が、ミサイルを振り切る勢いで急上昇。ブースタの噴射に巻き込まれたミサイルが何発も爆裂して視界を覆います。
彼がどこへ飛んでいったかというと……御霊前のまさに背後でした。
あっという間の出来事でした。
そして禍蛇は、御霊前の背中めがけてオレンジ色のブレード“サンセット”を突き込む――よりも前に、御霊前の背中……というにはかなり下部の、おしりともいうべき部位から砲撃を受けました。(グレネードランチャーでしょうか?)
禍蛇は、炎上まじりの黒煙をともないながら、錐揉みに吹き飛ばされてしまいました。
《なっ!? 畜生、機体のコントロールが、》
ここまで誰にもバレなかったくらいの小口径でしたので、軽量機の禍蛇とはいえ撃墜はまぬがれたように、思えましたが、
砲身の長い、レールライフルでしょうか? 見るからに長射程の銃を構えてチャージする、高内重工の重量逆関節SBが待ち構えていました。
わたしはとっさに助け――間に合いませんでした、撃ち出されたレールライフルが禍蛇を撃ち抜き、爆散させてしまいました。
通話に大きなノイズが走ってから、
《くれぐれも、私の
彼女が教えてくれた事前情報にない装備だったので、あとで怒られると思ったようです。
《SBの装備を日々取っ替えてるのは、他人も同じだからねぇ。こういうコトもあろうさ》
《ヤバいヤツその1が来たが、充分崩せてる。戦況的にはもう一押しだよ》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます