第11話 お貴族様って奴は…

 アンナさんには俺が話したことを他の女性達に伝えてもらった上で、今後どうしたいかを聞いてもらうようにお願いした。

「多分、すぐには決められないと思うけど、シンはそれでも構わない?」

「ああ、俺のことは気にしないでいいよ。あなた達の今後のことですから、慎重になるのも分かります。ゆっくり決めて下さい」

「それでね、言い難いんだけど、あのお嬢様はどうするつもりなの?」

「別に。俺はどうもしないですけどね」

「何?その『俺は』ってのが引っ掛かるわね」

「じゃあ、言うね。お嬢様の今後はアンナさん達で決めて。でも、生かして返すことはないから。それだけは決定ね」

「まあね、それは私にも思うところがあるから、しょうがないわね。でも、シンが手を出さないってのはどう言うこと?」

「だから、トドメはアンナさん達がすればいい。お膳立てはしてやるからさ」

「何、私達に人を殺せって言うの!」

「そう、そう言うことだよ。だって憎いでしょ?仕返しもしたいだろでしょ?仲間の仇も討ちたいよね?」

「そうだよ、そりゃそうだよ。あんなに仲がよかった子まで……アイツのせいで……」

「そんなに人殺しの記憶が残るのが嫌か?」

「そうよ!相手がどんなヤツでも殺してしまったら、一生、ずっと付いて回るのよ。そんなの耐えられないでしょ」

「じゃ、殺った後に記憶をいじればいいじゃないか」

「へ?」

「だから、記憶に残るのが嫌なんだろ?なら、殺った後に記憶をいじれば覚えていないことになるじゃないか」

「え?ちょっと待って、ちょっと待ってよ!何でそんな簡単に言うの?私達が忘れてもあなたは覚えているのよ。それでもいいの?」

「ああ、俺のことなら気にしなくてもいいよ」

「何でよ。人を殺すのよ!何でそんなに簡単に言うのよ!」

「そうだね、その辺は俺に欠落しているものかも知れないね」

「だとしてもシンだけに、君だけにそんな重いものを背負わせることは出来ない!」

「え~と俺のことを気に懸けてくれるのはいいんですけど。どっちみち俺は殺りますから変わらないですよ」

「なぜ、そこまであのお嬢様を殺さなければいけないの?」

「態度が悪すぎて気に入らないってのが一つ、貴族すぎて気に入らないってのが一つ、生きていても誰かを虐げて生きるのが想像出来るから気に入らないってのが一つで全部で三つが、その理由だね」

「そんな理由なの?」

「そんな理由だな。これ以上、俺の生活を脅かして欲しくないから駆除する。ただそれだけの理由だ」

「駆除って言っちゃうんだ」

「俺に取ってはその程度のことなんですよ。だから、アンナさんが気にすることじゃない」

「でも……」

「じゃ、こういうのはどうです?」

「何?」

「まず身体は中から綺麗にします」

「ええ、それは構わないわ」

「記憶を弄るのは四人です。記憶を弄らない人は、俺がこれからやることを全部見ていてもらいます。言うなれば運命共同体ってことになるんでしょうね」

「つまり……それってどう言うこと?」

「どう言うことって、そう言うことですけど?」

「要は記憶がちゃんと弄られているか、危ない目に遭わされないかを監視する役目を用意してもらって彼女達が問題なく生活出来ると判断出来た時点で、監視役の人の記憶を弄って何もなかったことにしてしまおうってことです」

「あ~そう言うことね。なるほどね。あなたが悪さしないように監視することと彼女達がちゃんと記憶操作されているかを見守る役目ってことなのね。な~んだ、じゃ私以外いないじゃない」

「え?いいの」

「いいわよ。だって私が年長者だし」

「ああ、おば「シン、それ以上は言わない方がいいわよ」……はい」


 その後は皆んなで夕食を食べて、みんなにクリーンを掛けてあげると嬉しそうにキャッキャウフフとはしゃいでいた。


 俺はフクとユキで固って一緒に寝る。

 ユキには元の大きさに戻ってもらったのでモフモフを堪能しつつ眠りにつく。


 朝起きるとアンナさん達が朝食の準備をしていた。

「おはようございます。アンナさん」

「シン、おはよう。もうすぐ用意出来るから待っててね」

「(そういや、奥のお嬢様は放ったらかしだったな。ま、別にいいか。どうせ死ぬんだし。)はい。ありがとうございます」

「シン。もう私達の答えは出たから、後でお願いね」

「それはいいけど、あっちの始末はどうするの?」

「それも込みで後で話すわ。さ、食べましょう」


 朝食を終え、アンナさんに昨夜の話し合いの結論を聞かせてもらう。

「結論からいうわね」

「ええ、お願いします」

「記憶を残すのは私。他のは、記憶の改竄をお願いね」

「それはやっぱりさいね「それは言わないって言ったよね?」……そうでした」

「とにかく、記憶操作は私以外にお願いね」

「はい」

「それと身体の中の治療については私も含めて全員お願いするわ」

「それってもしかして全員しょ「何、私がそれだと問題なの?」……いえ、分かりました」

「後、お嬢様の始末については記憶操作の前にやらせてもらうわ」

「あんなに渋っていたのに?」

「皆んな記憶操作を後で受ければいいって言ったら、すぐに乗り気になったわ」

「それはそれで……」

「ねえ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る