第2話 説明されたけど納得は出来ない

 頭の中で神の声が聞こえるってどんなヤバい奴なんだって、オレだよ。

 ハァ~しかも今は『魔の森』のほぼ中心で、ここから『聖アスティア教国』に行ってパンツを見せてくれたJKが十年後に召喚出来ないようにすることが俺の使命らしい。


『説明ありがとう』

「それでそのアスティアってのは、お前が祀られているんじゃないのか? 仮にも神様なんだろ?」

『それがさ、アイツら存在しない神様を祀ってんだよ。しかも段々と顕在化するための力をつけ始めているみたいでね。お陰で本家本元の神様である僕が邪神扱いだよ。本当にどう言うことなんだって話さ』

「まあ、俺に言われても元々いるかいないか分からない存在だしな。ぶっちゃけどうでもいい」

『ああ、そんなこと言うんだ! せっかくこっちに転生させてあげたって言うのに!』

「全部、お前のせいだろうが!」

『あっそうだった。でもあっちにいてもそれほど、いい人生を送っているとも思えなかったけど?』

「いい人生かどうかは他人でなく、自分で思えばいいだけだ。はぁ楽しみだった連載も終わりが分からないまんまか~」

『知りたい? 知りたいなら、教えてあげるよ。あのね「いい、言うな!」……っもう、人がせっかく』

「それで、何で俺はこんな森の中にいなきゃいけないんだ? しかも『魔の森』って見るからに不吉じゃねえか」

『だってアスティアに喧嘩を売るんだよ。強くなきゃダメじゃん。だから、この森から出られるくらいに強くなってね。一応、ここの狭い範囲だけは僕の結界で他の魔物とかは入ってこれないから。しばらくは大丈夫かな』

「修行パターンって少年マンガかよ」

『じゃ、僕はこの辺で消えるね。後はナビゲーターに引き継ぐから、よろしくね。じゃバイバイ!』

「え、ちょっと待てよ。ナビゲーターって誰だよ。お~い!」


『……めまして』

「え、だ、誰?」

『ナビゲーターです。初めましてです』

「えっと初めまして。それで何て呼べばいいの?」

『名前はないです。マスターが付けて下さいです』

「マスターって俺?」

『はい。マスターの名前も不明なのです』

「不明? あ、そういやステータスにも載ってなかったわ。名前ねえ、じゃ『シン』と呼んでくれ」

『シン様ですか』

「いや、様はいらない。『シン』でいいから」

『わかりました。シン』

「ああ、これからも頼むな」

『はい。それで私の名前は?』

「ナビ子で」

『却下です』

「即答か。まあ安直だったな。ならナビィは?」

『却下です』

「これも即答か。じゃあ……」『却下です』とかを何十回と試すが未だ決まらず何が気にいるんだよ。

「もう、これで気に入らなかったら、後回しだからな。いいな」

『はい』

「アリス。どうだ?」

『はい、私はアリスです。ありがとうございます』

「やっと気に入ってくれた。何で名付けだけでこんなに疲れるんだ」

『ちなみにこの「アリス」と言う名前はどこからきたのでしょう?』

「確かバイオな映画で人口知能に付けられた名前だ」

『ふふ、いい名です』


「早速だが、どうすればいいんだ? 本当に何もない所だし」

『とりあえずは、取得出来るスキルや魔法を覚えて手数を増やしましょう』

「そうだな。あ、そうだ。なあ視界の端っこに時計と俺のHP M Pを表示できるか?」

『こんな感じでしょうか?』

 視界の端に現在時刻とHPMPがバーで表示される。

「アリス、いいな。うん気に入った。でもよくこんな表示の仕方が分かったな」

『それはシンの記憶の中にありましたから』

「そうか。……って記憶の中って言った? 言ったよね? 見られるの? 俺の頭の中のアレやコレを」

『はい、もうバッチリとお陰でいい暇つぶしになります』

「ああ、言った! 暇つぶしって言った! 俺の四十年近くの歴史を」

『お陰でシンの女性趣味もマルっとお分かりです。そうですね、こんな感じでしょうか?』

 すると視界の端にPCのモニタ上に表示されるようなマスコットキャラ的な何かが表示され、アリスの喋る言葉に合わせて動く。

「まさか、アリスか?」

『はい、シンの頭の中を除いて、シンが理想とする女性像が分かったので、アバターを作ってみました。どうでしょう? 自分でも中々だと思いますが』

「だめだ、ちっぱいすぎる。もう少し盛ってくれ」

『ええ、でも記憶フォルダにはこれくらいの女性がいっぱいでしたよ』

「ぐっ頭の中まで規制はかけられん。俺の趣味がダダ漏れか~」


 何とか自分の趣味の露出から立ち直り、修行へと気持ちを落ち着ける。

「まずは気配察知だよな。『気配察知スキル取得』っと、どうだ?」

『取得できました。おめでとうございます』

「ああ、ありがとう。それで今度から取得したのは隠蔽しといてくれるか。頼むな」

『いいですよ。それくらいお安い御用です』

「何か色々と記憶を除いているみたいだな」

『そ、そんなことはないでゲスよ』

「やっぱり見てるじゃねえか! くそっ。まあいいや」


「それで気配察知をMAP上に展開してもらえるか」

『こんな感じですか? 半径100mにしてみました』

 視界の左下にレーダーサイトが表示された。

「うん、いいな。それに敵性を赤、無関心を黄色、仲間を青で表示してくれ」

『はい。分かりました。この辺に赤色のはいませんね。やっぱり神様の結界内は流石に安全ですね。もし結界の外に出ても数的に青<赤<黄色ってなりそうですね。ぷぷっ。ってか青が点る時ってあるんでしょうか?』

「お前、どこまで記憶を漁ってんだよぉ……」

『そうですね~今は……』

「いい、言うな。もういいから……」

『難しいお年頃なんでしょうかね~あ! シン先に謝っておくね』

「は~何やったんだよ」

『まあ見てもらえば分かるから』

「何だよ、じゃ『ステータス』と」

 ~~~~~

 名前:シン

 年齢:十五歳

 性別:男

 種族:人族『(仮)』

 HP:一五〇

 MP:一〇『♾』

 スキル

『魔法創造』

『スキル創造』

『ナビゲーター』

『スキル取得率上昇』

『スキル成長率上昇』

 回避:3『MAX』

 防御:1『MAX』

 単剣術:3『MAX』

 殺傷耐性:1『MAX』

『隠蔽:MAX』

 称号

『転生者』

 ちっぱい好き

 素人童貞(検証中)

 ボッチ

 ~~~~~


「何も変わってないってか名前が不明から変わったな。他には変わってないと思うぞ」

『よく見て! 特に称号のところ』

「称号? 何かあったか……何じゃこりゃ~~~!」

『だから先に謝ったでしょ。どうもこの称号って私が認識すると出るみたい。ごめんね』

「隠して! お願いだから、誰の目にも届かない地中深くに」

『わ、分かったから、ほら! 隠したから、もう大丈夫だから』


 あれ? 待てよ、何かおかしいのがあったな、落ち着いてもう一度、見直すと確かにソレはあった。

「なあ、この『素人童貞(検証中)』ってあるけど、どういうこと? そりゃ恋人もいたことがないのは認めるけど、プロにお願いして脱童貞は済ませたハズだ!」

『ああ、これね。記憶を楽しませてもらっている時にさ、ちょっと怪しかったんだよね。もしかしてプロに頼んだのはこれが最初で最後なの?』

「ああ、アレ一回きりだ」

『だからだよ。もう少しで検証が終わるから待ってなよ。そしたらはっきりするからさ、』

「待て! 検証って、まさかあの時のを見てるってことか?」

『そうだよ、だってそうしないと検証できないじゃん』

「いや、でも俺の記憶だろ? 検証も何も記憶しかないのなら、無理だろう」

『そう思うよね。そこは神様にお願いして、その時の現場を360度どこからでも見れるようになるのさ』

「なら、俺にも見せろよ。当然俺の記憶なんだから、俺にも見る権利があるはずだ。な、そうだろ!」

『もう、そんなに言うならしょうがない。ほら、これでどう?』

「おう、確かにあの時のお店だ。懐かしい」

『はい、いい? じゃちょっと時間を進めるよ。問題の瞬間までね。キュルルルっと、この辺だね』

「ああ、そうだ! ほらちゃんとお姉さんが上になって、あ~この時だよ。ほらちゃんとしてるだろ!」

『まあまあ、一時停止と』


「何で止めるんだ。もう証明出来ただろうが!」

『そう思うよね、じゃこのカメラアングルをこうやって後ろに回して。ほら! どうよ』

「どうよってお姉さんの恥ずかしい部分が丸見えになっただけじゃねえか」

『そうじゃなくて、ほら! ココを見て、ココだよ。分かる?』

「ココってあまり自分のブツを注視するのも嫌なんだけど」

『イヤなことから目を背けちゃダメだ! ちゃんと自分の目で見て確かめるんだ!』

「何か良い事言っている様だけど、これって普通に覗きだからな」

『もう、そんなことはいいから、ちゃんと見なよ。シンが見るって言ったんでしょ!』

「それもそうか、って何じゃこりゃ~~~~~! ! !」

『ね、分かったでしょ。世間では『スマタ』って言うんだっけ? ご愁傷様です。これで『検証中』は外れるけど、新たに『真なる童貞』の称号が与えられました。ワ~パチパチパチ』

「嬉しくねえ! 何だよ、料金とは別に高いオプション料金まで取られて『全部嘘でした』って……」

『向こうでは三十までに『童貞』を捨てられない場合は、魔法使いになるって言われているんだっけ?』

「ああ、そうだよ。その通りだよ。実際になれる訳でもないのにそう言われているよ」

『じゃあ、シンはこの世界で正真正銘の魔法使いとなった訳だね。おめでとう! ワ~パチパチパチ。あっ』

「『あっ』って何だよ、また称号でも付いたのか?」

『うん、ごめん『正真正銘の魔法使い』ってのが……』

「何じゃそりゃ~~~~~! ! !」

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