第34話 魔法の発動はイメージです!

 朝食を食べた後にミラやアンナにアンディ達に子供達の体力回復を兼ねての様子見で二,三日ここに留まることを告げる。

「分かったわ。まあ、私達も急ぐ旅でもないしね」

「私は早く離れたいと思うけどね」

 アンナの言葉にミラが応える。


「それで、私は何をすればいいのですか?」

「お前は子供達の世話に決まってる」

 アンディが聞いてくるが、答えは前から決まっている。

「私は本当にそれだけなんですか?」

「何かを教えて欲しいのなら、自分で時間を作ればいいだけだ。子供達の世話は俺は関与しないとお前に言ったが、お前が全部を面倒見ろとは言ってない。どういう意味か分かるか?」

「……」

 アンディは俺が言った言葉を反芻し考えているようだが、答えには行き着いていないようだ。

「真面目なのはいいが、適度に力を抜かないとお前自身が倒れるぞ」

「適度にですか……」

「ああ、さっきも言ったが、お前が全部の面倒を見ることはないだろう。そうだな、例えばさっきの子のようにある程度、読み書きが出来る子を頭に据えて、勉強させるグループ、狩りや魔法、運動など体を使うことを教えるグループに分けるとか、方法はいくらでもあるだろう。要はだ、お前が頭として責任を持って動けばいいだけの話だ。手足のことまで俺に報告する必要はないから、好きにすればいいってことだ」

「概要は分かりました。私の下に補佐を付けて、私は作った時間でシンから学べと、そういうことですね」

「分かったら、動く!」

「はい!」

 アンディは子供達の元に行き、何人かの子と話を始める。こちらを睨んでいるような気もするが、気にしても仕方がない。イヤなら出て行けばいいだけの話だ。


「ねえ、兄ちゃんはアンディをどうしたいの?」

 フクがそんなことを聞いてくる。

「どうしたいか……考えてないな」

「でも、なんかあるんじゃないの?」

「そうだな。あの子達と一緒に苦労せずに暮らしていけるくらいにはしてやりたいかな」

「そうか。じゃあ、僕も手伝うよ」

「フクが?」

「うん、僕も人に教えるってことをやってみたい!」

「そうか。なら、アンディに簡単な魔法から教えてやってくれ」

「分かった!」

 そう言うや否やアンディの元へと走って行き腕を掴んで邪魔にならないところへと向かう。


 アンディを引っ張ってきたフクがアンディに言う。

「では、今から魔法の練習をします! はい、拍手~!」

 フクに言われ、『パチパチ』と無表情で拍手するアンディ。


「魔法と言われても何も知らないんですけど?」

「そうなの? でも、簡単だから、ほらこんな風に」

 フクがそう言うと、フクの右手に水球が発現している。

「結構、簡単そうに使いますね」

「実際、簡単だし。ほら」

 そう言うとフクが右手に水球を出したまま、左手に火球を発現させる。

「ね、簡単でしょ」

 フクはそう言うがアンディには理解が出来ない。

「なあ、アリス。アレってどうなの?」

『間違いじゃないわよ。だって、魔法って結局はイメージだからね』

「そうなんだ。でも、それって俺達限定だと思っていたよ」

『それが間違いないのよ。そもそも魔法なんてそんなものなのだから』

「なんか、奧が深いようで浅いようなよく分からないな」

『それでいいのよ。私だって分からないし』

「いや、それはダメだろ」

『そう言われても今の私の立場を誰がどう説明してくれるの? シンがいた世界なら間違いなく病院に閉じ込められるでしょ?』

「そうだな。二重人格どころか全くの別人が頭の中で俺の記憶を自由気ままに編集して楽しんでいるなんて、誰も信用しないだろうな」

『でしょ!』

「それはいいから実際、アンディは魔法を使えるのか?」

『魔力があるのなら使えるわよ』

「魔力ね」

 アリスの言葉でアンディを鑑定してみるとMPは魔法を使うには十分にあることを確認する。

 フクに指導されているが、なかなか上手く発動しないアンディの元へ近付き、多少のアドバイスを試みる。

「アンディ、フクの言うことが理解できていないんだろ。なら、こういうのはどうだ?」

 そう言って、指先に火を灯してアンディに見せる。

「それって、どうやってるんですか?」

「どうって、イメージ?」

「イメージですか……」

「そんなに難しいか?」

 アンディが落ち込んだ様子を見せる。

「アンディは火の魔法を使いたいと思った時にどんな風に考えている?」

「どんなって……盛大にこう、ゴォ~って感じに燃えればいいなって思って」

「じゃあ、こういう爪先程度の火を出すのは難しい?」

 俺が見せた炎というか種火程度の火の魔法について考える。

「それがイメージということですか」

「そうだ。こんな種火程度の火も出せないのに炎なんか出せるわけないだろ」

「ですが……」

「だから、イメージだって。この種火程度ならイメージしやすいだろ?」

「分かりました。やってみます」

 アンディがそう言って、右手の人差し指をジッと見ていると『ポッ』と小さな火が灯る。

「出来た! 出来ました!」

 そう言って、アンディが嬉しそうに右手の種火を消さないように飛び回る。

「あ~あ、僕が教えてたのに……」

「フク、少しは教えられる方の身になって考えるんだな」

「むぅ~」

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