第7話 助けた奴が善人とは限らない
フクが言うには盗賊のアジトらしき洞窟の中には、山賊とは異なる雰囲気を持つ誰かが何人かいるらしい。
まあ普通に考えれば拐われた人達なんだろうな。
「なあ、助けた後ってどうするのよ。まさか、一緒に連れて行くのか?」
「そこまでは考えてない。とりあえず助けるのが先だ思う」
「まあいいけど。それでどうやって?」
「兄ちゃん考えて」
「やだ、何この甘え上手な子は」
『もうこの子の自我だからね。シンだった頃の名残が残っているのかさえ分からないね』
「ねえ、もし仲違いしたらどうなる?」
『さあ?』
「だよね~」
「ねえ、真面目に考えてよ」
「なあ、フクにも俺の僅かな知識が共有されているんだろ? お前も何か考えろよ」
「え~無理!」
「何だかそういうのだけ、俺の残り香みたいに思えるな。もしかしたらフクの残念な部分が俺なのか?」
『それ、割といい線いってるかもね』
「ねえ、早く!」
「あ~分かった、分かったから落ち着け。なあ、闇魔法の『
『そんなのあったね』
「それってあの岩の向こうに届かせられる?」
『対象が視認出来ないと難しいよ』
「う~ん、なあ岩の外側に障壁を張ってから、岩を壊せば中の奴らは出て来れないよな?」
『そうだね』
「じゃ、岩を崩してから『
『確かに』
「よし、フク。『
「『
「じゃ、障壁を張って……フク、岩を崩したら中の連中に『
「分かった」
「じゃ、行くぞ!」
「いいよ」
障壁の中の岩を崩すと同時に中にいたガラの悪そうな連中と目が合う。
「フク!」
「分かった。『
ガラの悪い連中がバタバタと倒れていく。
『さっさと殺っちゃえばよかったのに』
「無差別にするわけにもいかないだろう。後だ後!」
「兄ちゃん、どれか分かんなくなっちゃった」
「とりあえず動いている奴は眠らせてしまえ。その後で鑑定かけまくれば分かるだろ」
「そうか、兄ちゃん頭いいね」
「ありがとうな」
『自分の分身に言われてもね~』
「うるせえ! なあ鑑定結果を倒れている連中の上に出してくれ」
『いいよ。はい、こんな感じでどう?』
「早いな、どれ?」
倒れている連中のガラの悪い奴らには『罪人』『盗賊』の文字が浮かび上がっている。
「おう助かる」
鑑定結果を確認しながら、トドメを刺していく。
『意外とあっさり殺っちゃうんだね』
「まあな、耐性も付けたし殺らなきゃ殺られるしな。それでフクは見付けられたのかな?」
『まだ見たいよ』
「そうか、ん? なあ、あそこって不自然に扉があるけど、確かめた?」
『フクは見てないみたいね』
「もしかして、略奪した財宝とか?」
『まあ、定番よね』
「じゃあ行きますか」
『ご勝手に』
扉の側に行き、中の様子を探ってみるが危険な感じはしない。
「よし、開けるぞ~」
『バン』と扉を開けると、そこには檻が並んでいて中には何人か入っているようだ。
「(アリス、鑑定よろしく)」
『分かったわよ。これでどう?』
「(サンキュー、ついでにフクにもこっちに来るように言ってくれ)」
『もう、人使いが荒いわね』
「(人じゃねえし)」
『そうだけど、ほら来たわよ』
「兄ちゃん、何?」
「ほら、ここにいるか?」
「わ、何この人達」
「捕まったんだろうな。お前が感じたのはこの人達じゃないのか?」
「う~ん、ちょっと違う」
「そうか、じゃいいか」
「ま、待って! 待ちなさいよ! 何知らん振りしてるの! ここに捕まっている女の人がいるのよ! 助けるのが当然じゃないの!」
「だってよ、フク」
「ごめん、僕は忙しいから兄ちゃんに任せた。じゃね」
「おい!」
『行っちゃったわね』
「行っちゃったじゃないだろ。どうすんだよ、これ」
「ねえ、そこの! 聞こえてんでしょ! どうにかしなさいよ!」
「うるさいから、ちょっと黙ってて」
「う、うるさいですって! ちょっと、そこで待ってなさい! いいわね! 逃げるな!」
「それはいいけど、出られるの?」
「あ……そうよ、さっさと出しなさいよ!」
「あんたは後回し。先に大人しい人達を出すから」
「な……何言ってんのよ! 私を先に出しなさいよ! ねえ、聞いてるの!」
「ああもう、うるさいな~はい、大丈夫だった? 怪我はない? 簡単な怪我なら治せるから言ってね」
「ありがとうございます。この恩は……」
「ああ、そういうのはいいから。それと恨みを晴らすなら、今の内だから良ければこれを使って」
檻から出した女性にナイフを渡すと、側にいた男にナイフを突き立て泣きじゃくる。
同じように次に出した女性もナイフを突き立て泣いていた。
「ああもう、何をされたか予想出来ちゃったよ」
『童貞には想像出来ないね』
「童貞なめんな! NTRや陵辱物は大抵見てるからな」
『いばることじゃないよね』
「そうでした」
「あ~とうとうこいつの番になっちゃったよ。ねえ、こいつって助ける価値ってあるのかな?」
助けた女性達に聞いてみるが、誰も『はい』とも『いいえ』とも言わない。
もしかして、お貴族様なのかな。
うるさい女に詳細鑑定を掛けてみると名前付きだった。
「え~と、助ける価値なしってことで、残りの人生を悔いなきようにその場でお過ごし下さい」
「ちょっと、待ちなさいよ~何置いていこうとしているの! さっさと出しなさいよ! 他の人を助ける間、何のために大人しくしていたと思っているの!」
「はあ、じゃ出しますが、これっきりと言うことを約束してもらえますか?」
「へ? どういう意味?」
「そのままの意味ですけど」
「じゃ何? ここを出た後は何も世話しないって言ってるワケ?」
「ええ、その通りです」
「ハァ~何言ってんの! こんなところで残されてどうやって帰れっての! あんた気は確か?」
「約束できないのなら、そこで残りの「分かったわよ。それでいいから、さっさと出しなさいよ」……それが人に物を頼む態度ですかね」
「……ぐぬぬ。お願いします。ここから出して下さい」
「はい、こちらの用事が終わったらね」
「はぁちゃんと頼んだでしょ。さっさと出しなさいよ!」
「だから、用事が終わったら出すから、それまでこちらの気が変わってしまわないように大人しくしてて下さいね。あ、お姉さんたちはこちらで、その扉の向こう側で休んでて下さいね」
「「「「「はい」」」」」
「(アリス、フクにどこまで行ったのか確認しといて。俺は隠し財宝を探すから)」
『分かったわよ』
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