第44話 残り一週間

 朝になり、朝食を済ませた後にアンナ達女性陣と今後のことを話す。俺としては、近々この村を出ていくつもりだということを告げると、アンナとミラ以外の女性達の顔が曇る。


 やはり昨日の彼女達の様子からして、今すぐにこの村を出るというような雰囲気ではなかった。


 俺としても盛り上がっているところに水を掛けるような真似はしたくはない。でも、俺達もいつまでもここにいる訳にはいかない。何せ、自称神様にお使いを頼まれているからな。


『おぉ~忘れてなかったんだね。エライ、エライ!』

「そう思うんなら、何か案を出してくれよ」

『案と言われてもね~このままでもいいんじゃないの。そんなに急ぐわけでもないしさ』

「え? いいのか?」

『いいも何も私には関係ないし。どっちでもいいよ。ここにいようが出ようが』

「随分、無責任だな」

『そう? これでも優しい方だと思うんだけどね。どうもシンには伝わっていないみたいだね』

「はぁ? お前、マジで言っているのか? 俺はお前に優しくされた記憶はないが?」

『え~それヒドくない?』

「ヒドくない! そもそも何をもって優しいって話になるんだよ」

『う~ん、そう言われると自身がないなぁ~』

「なんだよ、それ……ハァ~まあいい。アリスは当てに出来ないってのは分かったよ。後はこっちでなんとかするわ」

『じゃあ、決まったら教えてね!』

「……」


 アリスとの脳内会議では何も決まらないまま、カレン達の方を見るとどこか不安げだ。


「よし。なら、一週間だ。今から、一週間。その間にお前達はどうするのかを決めてくれ。俺達に着いてくるのか。それとも、この村に留まるのかを決めてくれ」

「「「……」」」

「あ~決められないなら、それでもいいぞ」

「え? どういうこと?」


 俺の言ったことの意味が分からないようでカレンが質問してくる。


「そのまんまの意味だよ。まあ、とりあえずこの村に留まるよな」

「うん、それで?」

「それで、俺達がこの村を出てから、やっぱり俺達と一緒に着いて行きたいと思ったら、その時は俺に連絡すればいいさ」

「え? どうやって?」

「こういう風にさ……よっ」


 俺はミラの兄を監視しているのと同じ様に小鳥を模したゴーレムを作ると、それをカレンに渡す。


「もし、この村にいるのが嫌になったとか、居られなくなるようなことがあった場合には、それに向かって一言だけ言えばいい」

「一言って?」

「ただ、一言だ。『助けて!』と……な。そしたら、俺とフクがすぐに駆けつけるさ」

「……」

「まあ、そういう訳だから一週間、よく考えてくれ」

「「「分かった」」」


 話はそれだけだと伝えると、アンナとミラ以外の女性は別々に行動する。

 多分だが、それぞれ与えられた仕事へと出掛けたのだろう。いつの間にかこの村に受け入れられているようだ。


「ねえ、兄ちゃん。どうしてもここから出ないとダメなの?」

「ああ、俺には俺の目的があるからな。ごめんな」

「そうなんだね。じゃあ、僕も遊んでくるね」

「おう、行って来い」

「うん、行ってきます」


 フクは子供達が集まっている場所へと掛けて行く。俺はアンナとミラ、それにユキと顔を見合わせる。


「一週間で答えを出せって短くない?」

「そうよ。たった一週間なんて……」

「そうか? でも、俺もここにずっと居るわけにはいかないのは分かるだろ」

「それはそうだけどさ……折角、仲良くなったのに……」

「私だって、この仮面がなければモテモテだったハズなのに……」

「……それはどうかな」

「「どういう意味よ!」」

「どういうって……まず、アンナはもう『行き遅れ』って言われる年齢だよな。それだと若くてたくさん働いてくれそうなお嫁さんが欲しい農家には厳しいだろうな」

「くっ……でも、農作業的な体力勝負は出来なくても掃除とか書類仕事とか出来ることはたくさんあるはずよ」

「でも、それならあの娘達も持っているスキルだろ? なら、若い方に行くのはしょうがないじゃないか」

「ぐぬぬ……」

「アンナがオバさんだからダメってのは分かったけど、なんで私はダメなのよ!」

「……オバさん……私が……オバさん……」

「あのな……」


 アンナが村の男達に受けない理由を説明すると、ミラの『オバさん』の一言がトドメとなりアンナが項垂れていると、ミラは自分がなぜ受け入れられないのかと聞いてくるので、ちゃんと説明する。


 まず仮面はまあ、置いとくとしてミラの場合はまだ、お嬢様気質なところが抜けていないため、俺達以外を相手にする時にも結構高い位置から物を言うので、次第に敬遠されるようになったのをそのまま、ストレートに伝える。


「え? そんな理由なの?」

「ああ、そんな理由だ」

「だって、私は貴族なんだから、しょうがないじゃない!」

「ああ、そうだな。但し『元』が付くがな。お前は貴族じゃなく、元貴族のお嬢様で今は逃亡中だ。だから、本当なら貴族とバレるのは色々とマズいんだがな。分かっているのかな?」

「イ、 イヒャイ……」


 いつまでも貴族である態度を改めようとしないミラのほっぺを抓る。なぜ、仮面を着けているミラに対しそんなことが出来るかと言うと、仮面の下半分を消したからだ。


 とりあえず、一週間。その間に俺の方でも出来ることはやっておこう。

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