第12話 それじゃ片付けましょうか
今日はあのお嬢様の始末をした後に山賊とまとめて片付けを済ませる日だ。
そんなことを考えているとアンナさんが朝食の準備が出来たと呼びに来たのでフク、ユキと一緒に呼ばれる。
「俺が用意した食材以上の物が使われているな」
「まあね。その辺で採れた物も使っているからね。さあ、食べて」
朝食を済ませた後に彼女達の身体の中の治療と記憶を覗かせてもらうことについて了承を得られたので、処置を進める。
「これからの処置にはアンナさんに立ち会ってもらいますので、あなた方は何も心配することはありません」
「でも、頭の中を覗かれるのは、あまりいい気がしません」
「では、覗かせてもらうのは、半年前までとします。この条件であればどうですか?」
「半年と言うと私達が連れ出された時期ですね。なら、一年でお願いした方がいいかも」
「それはなぜ?期間を短くするなら納得も出来ますが、なぜ一年と範囲を広げたのでしょうか?」
「どうせ記憶を覗かれるなら、ちゃんと見てもらって下手に勘違いして欲しくないってことと、あのお嬢様の普段の行動を見てもらうことで、あなたの罪悪感が少しでも減らせればと思ってね」
「と、言うことは、あのお嬢様は想像通りのクズだと」
「そうね、まあ見てもらえれば分かると思うから、これ以上は下手な先入観は与えない方がいいわね」
「分かりました。では、またこちらであなたから横になってもらえますか。一人ずつ覗かせてもらいますので」
「『カレン』よ」
「?」
「もうすぐ消える名前だけど、あなたにだけは覚えていて欲しいの」
「分かりました。カレンさんですね。では、覗かせてもらいますので気を楽にして下さい」
「分かったわ。お願いするわね」
そう言って、カレンさんが即席のベッドの上で横になる。
「じゃ始めますね」
「ええ。いつでもいいわよ」
「では、『
「何?何が見えたの?」
「私にも教えてもらえる?」
「(フクは共有しているんだから、見られるだろ。アリス、フクが暴走しないように注意しといてくれ)」
「(あ!そうだった。分かったよ兄ちゃん)」
『そうね、フクは注意して見ておくわ』
「(それとフク、最初に言っとくけど面白半分で見るのなら止めといた方がいいぞ。俺は忠告したからな)」
「(そこまで酷いの?)」
「(ああ、酷い。アリスに編集してもらうから。ライト版を後で見せて貰え。アリス編集頼むな。ディレクターズカットとR指定なしの二つだ)」
『分かったわ。任せてちょうだい!』
「ねえ、シン聞いてるの?フクちゃんとばかり話してないでさ」
「あ~アンナさんは、ほぼ似たようなもんでしょうから説明する必要はないかと思いますが?」
「そうだけど、ちゃんと記憶を見ることが出来たのか検証しといた方がいいでしょ?」
「では軽く説明すると、お嬢様がある日観た観劇の女性が主人公の冒険譚に影響され、父親に頼み込み女性だけの集団でこの森へ「分かったわ。もう十分よ」……分かってもらえました?」
「ええ、ちゃんと記憶は読み取れているみたいね。全く思い出したくないことまで思い出してしまったわ。忘れていたと思っていたのに……」
「それは……」
「シンが気にすることじゃないわ。それでカレンは終わったのかしら」
「ええ、終わりました。次は体内の治療に移ります。ちょっと腹部を触りますね」
「あら、触られちゃうの?」
「触るだけなので、特に何もしないので了承してもらえますか?」
「本当に触るだけでいいの?」
「「カレン(さん)!」」
「ふふ、冗談よ。お願いするわね」
「では、『
「あら?もう終わり」
「カレンさん、お疲れ様でした。では、次の方に代わってもらえますか?」
「意外と早かったわね」
「カレン、身体は大丈夫?特に変わったことはない?」
「そうね、頭の中を覗かれるって言われて、ちょっとだけ怖かったけどね。特に痛みとか怠さとかそういうのはないわね」
「分かったわ。じゃ、次は……」
「はい!私がいくわ」
「では、このベッドに横になって下さい」
「私は『エル』よ。よろしくね」
「では、エルさん。気を楽にして下さいね。『
「え?もう終わったの?本当に見ることが出来たの?」
「ええ、何なら……「分かった。信用するから、言わないで!」……では、次の方に代わって下さい」
その後は『ローラ』『ジュリア』と続けて行い、あとはアンナさんを残すのみとなった。
「じゃあ最後にアンナさん、こちらへ」
「は~ちょっと緊張するわね」
「もう他の皆さんの様子を見ていたでしょ?何も心配することはありませんよ」
「それは分かっているのよ。頭では分かっているけど、どうしても……」
「じゃあ止めときますか」
「……いや、やるわ!あの
「やっぱり……」
「シン!思っていても言わない方がいいこともあるのよ」
「はい、すみませんでした」
「ったく、少年と言ってもやっぱり男なのよね。いいじゃない、少しくらい歳がいってても……ブツブツ」
「じゃ、横になって下さいね」
「ええ、いいわ。パパッとやっちゃって」
「はいはい、分かりました。『
「え?もう?」
「ええ、終わりましたよ」
「こんな早いの?なら、私の全部の記憶を見てみる?」
「いえ、それは長そ「シン、それ以上は……」分かりました」
「(アリス、編集お願いね。五人の視線をカメラとして捉えれば、あとはアリスの編集の腕次第だね)」
『ふふん!任せなさい。ダテにシンの記憶を編集してないんだからね』
「(でも、俺の記憶はカメラ一台でしょ。今度は五台だよ。本当に大丈夫?
『分かってるわよ、そのくらい。このためにさっき最新アプリをダウンロードしたんだからね』
「(え?ちょっと待て!何だその『ダウンロード』ってどこから?それをどこに落とすんだよ!教えろよ!)」
『もう編集作業に入るから、切るね。バイバ~イ!』
「(おい、おいアリス!切りやがった)」
「シン、大丈夫?五人も記憶を除いたから疲れちゃった?」
「いや、そんなことはないんで大丈夫です」
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