第7話 乱獲
絶品焼肉をしっかりと堪能して数時間後、俺たちはとある迷宮の前に居た。
「この迷宮にミノタウロスが出現するのか?」
「はい。9階層ですね」
「9階層か……」
ジェイドは感慨深そうに呟く。たしかジェイドは7階層までは到達してるってイリアーナが言ってたな。
「サクサク行きましょう。ウルト、突入!」
『かしこまりました』
「このまま行くのか……」
呆れるジェイド一家を放置してウルトは進む。
いつものように【万能感知】で人の居ないルートを検索、凄まじい速度で攻略して行く。
時折どうしても人がいる通路を通らないといけない場合があり、その時はクラクションを鳴らすと慌てて避けてくれるので大変楽である。
途中の階層の魔物になど目もくれず、一目散に9階層を目指して進んでいく。
そのお陰か予定では9時頃に到着する予定だったのに7時半には9階層に到着することが出来た。
『人間の気配はありません』
「だろうね」
いくら迷宮攻略の結果魔物が弱体化していようとここまで来れる人はほとんど居ないだろう。
可能性があるとすればそれこそジェイドたち【竜翼の絆】くらいのものだろうね。
「あれがミノタウロスか……デカイな」
初めてミノタウロスを見たジェイドは顎に手を当ててウンウン頷いている。
つい先程サイクロプスの大きさに目が飛び出さんばかりに驚いていたのにもう復帰したようだ。
フィリップやペトラ、ルイーゼはまだダメだ。
「ウルト、全量確保。今回はタンも楽しみたいから頭吹き飛ばすのはやめて」
『かしこまりました』
前回の狩猟祭の時は特別何の指示も出さなかったら【一点集中】を使って頭部爆散させてたからな……
タンも一緒に吹き飛んでいた。勿体ない。
お肉祭りでテンションが上がってたからな、完全に失念していた。
俺の命令を受諾したウルトは一番近くに居たミノタウロスに突進、ウルトとミノタウロスが触れた瞬間、ミノタウロスの首がありえない方向に曲がり絶命。
次の瞬間には不要な部分を残して綺麗に捌かれて【無限積載】へと積み込まれた。
「今のは?」
『全ての衝撃力を首の骨へと集中させました。完全に首の骨を粉砕されて即死したようですね』
即死したようですね。じゃねぇよ!
怖いよ! なんて怖い技覚えてるの!?
いや待て、よく考えたら別に頭部爆散でも結果は変わらないわけで……
頭部爆散……ミンチ……ハンバーグ!
ミノタウロスハンバーグも美味そうだけど、オーク肉との合い挽きもいいかもしれない。
そういえばハンバーグは無いっぽいし今度作ってみようかな?
レシピは……塩コショウと、牛乳と、パン粉と……あとなんだ?
ハンバーグとかレンジでチンすれば完成の冷食くらいしか作ったことないから分からない。
まぁ何回か試せばそのうち出来るだろ。ベリルにも手伝ってもらおう。
「レオ様? 難しい顔で考え込んでいるようですが……何かありましたか?」
「いや、元の世界にあった料理のレシピを思い出そうとしてたんだけど、作ったことないからあんまり思い出せないんだよね」
「元の世界の料理ですか。それはどのような料理なのでしょうか?」
「ハンバーグっていうんだけどね。えっと、肉をミンチにして小判形に成形して焼く料理なんだけど……」
「ミンチ?」
「挽肉って聞いたことない? 肉を細切れにした感じの……」
少ない語彙力でなんとか説明しようとしたが、どうもピンとこないようだ。
料理に詳しそうなペトラやルイーゼにも同じように聞いてみたが、2人とも聞いた事は無いようだ。
やはりハンバーグは存在していないと判断すべきだろう、これは作らねば……
思いついたら食べたくなるのは仕方ないよね。
そんな話をしているうちにミノタウロス狩りは終了。9階層のボスである黒毛和牛ミノタウロスもサクッと狩って地上へと戻りながら交代で仮眠、朝方には迷宮から脱出できた。
「よし、それじゃあ聖都に戻ろうか」
「レオ殿、迷宮に来る時も思ったのだが、転移は使わぬのか?」
今更ながら最もな疑問を投げかけられた。
「実は……」
身内となる人間に隠すこともない、正直に力を失っていることを話しておいた。
「なるほどな……今ならレオ殿に勝てるかな?」
ジェイドは冗談っぽく言ってくるが今戦えば間違いなく負けるだろう。
力を失う前にイリアーナと婚約できて良かった。
国境を冒険者として堂々と超えて教国へ。
改めて未開地探索をしながらのんびりと聖都へと戻って来た。
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