第14話 緊急招集
王城に到着した俺は大会議室へと通された。
なんだかここに通されるといい予感はしないから苦手なんだよね。
中に入ると、既に多くの貴族が集まっていた。
爵位に応じて座る席が変わるので、一応侯爵位を持つ俺は上座に近い位置へと移動する。
「やぁクリード侯爵。開発は順調ですかな?」
「これはヒメカワ伯爵、ご無沙汰しております。領地の方はダニエル殿の力もあり順調に進んでいますよ」
「それは良かった」
「おかげさまで」
席に着くと、すぐ近くに座っていたヒメカワ伯爵に声をかけられた。
ヒメカワ伯爵は息子もこちらに送ってきているのだから気になって仕方ないのだろう。
そもそも娘が俺に嫁いでるし……
「それで……子供の方はどうだろう?」
「授かりものですのでなんとも……」
こういう会話、こっちの世界なら普通なんだろうけど現代日本ではセクハラだよね。
と、そんな話をしていると国王、王太子、アンドレイさんが入室してきた。
「みな、ご苦労である」
国王の言葉に貴族たちは一斉に礼の姿勢を取る。
俺も一拍遅れてみんなの真似をしておく。
「楽にせよ。さて、今回みなを集めたのには理由がある」
そりゃあるでしょうよ。
用もないのにこれだけの貴族を集めたりはしないでしょうよ。
そこからはアンドレイさんが引き継いだ。いつも通りの司会進行だな。
「先日、エルヴニエス王国からとある布告が届いた。今からその内容を読み上げる」
懐から1枚の装飾された紙を取り出して内容を読む。
まず、俺は勇者たちを脅して聖女を拉致させた大罪人らしいよ?
さらに勇者たちに魔王を討伐させて、疲弊した勇者を暗殺。魔王討伐の名誉を掠めとった極悪人だとも。
さらにさらに重ねて、聖女を侍らせて辱めている鬼畜男だとも。これに関しては違うと言い切れない……
結論としては、稀代の詐欺師である俺を公開処刑するから引き渡せ、断るのならアルマン教国は俺を庇っていると判断して敵と認定、攻め滅ぼすんだって。怖いね。
「以上だ。この布告を聞いた皆の意見を伺いたい。忌憚のない意見を聞かせて欲しい」
アンドレイさんが言葉を締めると、場は騒然となった。
俺? 言葉もないよ。
「よろしいですかな?」
俺の近くに座っていた1人の貴族が手を挙げ発言の許可を求める。
歳は50前後かな? 白髪混じりの短髪で、鷹のように目付きの鋭い男だ。
「ゴルベフ辺境伯、なにかあるのかね?」
へぇ、こいつがゴルベフ辺境伯か……たしか盗賊団と繋がりのあるって話の貴族だったよな。
それと、領地がお隣同士になった。
「ここはエルヴニエス王国と敵対する意思は無い、と示すためにもクリード侯爵を差し出すというのはどうでしょう? 幸い、彼の妻たちは妊娠しているようですし跡継ぎ問題も起こらないでしょう。国のために命を捧げた英雄の家族とあらば我がゴルベフ辺境伯家もクリード侯爵家の支援を推しみませんぞ」
おおぅ……こいつ何言ってんだ……
「そうですな。それも致し方なしかと」
「王国は強大、戦争は愚策かと。ここは英雄殿に人柱となって頂くというのも……」
数人の貴族たちが賛同の声を上げ始める。
ゴルベフ辺境伯はニヤニヤと不敵に笑っている。
どういうこっちゃ?
「私は反対ですな。クリード侯爵はこれからの教国に必要な存在、王国に差し出すなど有り得ません」
「ヒメカワ伯爵よ、たしか貴殿の娘もクリード侯爵に嫁いでおったな? 身内贔屓は感心しませんな」
「身内贔屓など……クリード侯爵が居なければ未開地開発はどうなりますかな?」
「だからそれはゴルベフ辺境伯家が責任を持って……」
良かった、誰1人反対してくれないのかと思った……
さすがに全員から差し出せと言われたら暴れてよめーず連れて帝国に亡命するわ。
というか、よくよく考えてみれば俺を差し出せって言ってる奴らは以前俺が会議でやらかした時に居なかった連中だな……
「静粛に」
国王が手を挙げ場を制する。王太子は戦々恐々とした顔で俺を見つめている。
大丈夫、正式に俺を差し出すって結論になるまでは暴れないから。
「ここには大半の貴族が集まっておる。決を採ろう」
決を採る? 多数決?
結果次第ではどうなるか分かってるよね?
一応殺気は抑えて無言で国王を見つめていると、国王の頬に冷や汗が流れるのがバッチリ見えた。
「布告に従い王国にクリード侯爵を差し出すべきと言うものは手を挙げよ」
ゴルベフ辺境伯を始め、それなりの数の貴族が挙手。
よし、お前ら顔覚えたからな?
「下ろせ。では差し出すべきでは無いと思う者は?」
はい!
差し出されてはたまらないと元気よく挙手してみたが、俺を差し出すかどうかの話なのに俺に投票権はあるのだろうか?
まぁ挙げない選択肢は無いんだけど。
「ふむ……」
国王、後ろ!
王太子も小さくだけど挙手してる!
「思ったより割れたな……では結論を……」
国王は一度会議室内を見渡してから俺と視線を合わせた。
「王国に従うつもりは無い。クリード侯爵を差し出すことは罷り成らん」
国王の決定に場が静まる。
「そう返答する。攻め込んでくると言うのならこれを迎え撃つ。反論のある者は立って示せ!」
一瞬ざわめくが、誰1人立ち上がることは無い。
「ふむ……ゴルベフ辺境伯」
「はっ!」
「立たなくてよいのか?」
「我が王の決定なれば」
「よし。では総大将だが……」
誰か立候補でもするのかと思ったが誰からも手は挙がらない。
「アレックスに任す。アレックスよ、王になる前に手柄を挙げよ」
「御意に」
王太子は膝を着いてこれを受ける。
ふむ……戦争か。
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