異世界勇者のトラック無双。積み残し編
愛飢男
第1話 神の座にて
『提案があります』
「聞くだけ聞こうか」
望む形でのケイト復活は叶わない。その事実に打ちひしがれ俺は膝をおっていた。
『あなたの世界の物語によくある来世でも……というのは如何ですか?』
「は?」
何言ってんの? 来世?
『もちろんただ出会うだけ、すれ違うだけと言った関係ではなく今世での関係に近いものになるように操作はしますよ』
「そんなことが出来るのか?」
『はい。とはいえ私の力ではなくあなたの【
【
来世にまで影響を及ぼせるのか?
『ケイトの魂に関してはこれ以上の洗浄を行わないようにしましょう。僅かな記憶、もしかすると感情は残るかもしれません』
「俺だけが覚えている今じゃなくて、俺の記憶もリセットして来世ゼロから始めようってことか?」
『その通りです』
うーん……アリかナシかでいえばナシよりのアリかな。
『今の人生は今の人生で謳歌する。次の人生でケイトと再び出会う。どうでしょうか?』
なんかだんだんアリな気がしてきたな。
今の時点で復活を願ってもケイトは歪な形で復活してしまう。
もちろんそれでも支えるし、これから新しく積み上げて行けばいいとも思う。
だけとそれでケイトは幸せになれるのかな?
当然俺が幸せにしてやるって気概はあるし、自信も無いわけではない。
しかさは中途半端な記憶、人格で蘇って怖くはないかな?
中途半端な記憶だけ持ってて過去の記憶が無い、俺なら怖いな。
「それもアリかな」
『ただし、この場合代償が必要となります』
「代償?」
提案してきといて代償?
『はい。まず【
ん?
『つまり本来力の及ばない範囲に及ばせることが出来るようになる代わりに力を失うということです』
なるほどね、まさしく代償だ。
【
「それは問題ないな」
『でしたらこれで……』
「あ、そうだ」
了承しかけたが、思いついたので聞いてみる。
『なんでしょうか?』
「サーシャたちとも再会できるようにとか出来ないかな?」
どうせなら、みんながいい。
我ながらゲスいと思うけど、これが俺の望みなんだから仕方ない。
『それは、今の奥さんたちのことでしょうか?』
「うん。あ、イリアーナも含めて」
『サーシャ、リン、ベラ、イリアーナ、ソフィア、アンナ、以上6名で間違いないですか?』
「間違いないです」
すごいな神様……じゃなかった世界の管理者。
俺みたいな個人の嫁の名前まで把握してるのか。プライバシーもクソもないな。
『可能ではありますが……6名となると、どれだけの記憶を引き継ぐのかにもよりますが【
足りないのか。
「記憶はあれ? なんかこの人……位の感じで」
別に絶対来世でも結婚する! じゃなくて自然な感じで。
『それでしたら【
「どれくらい?」
『お見積もりを出しますので残したい職業はありますか?』
残したい職業……って見積もり?
「【トラック運転手】は確定で。あとは……バランス考えたら【勇者】かな」
ウルトを失う訳にはいかない。
例え俺が貧弱になってもウルトさえ居てくれればどうにでもなりそうだから。
『【トラック運転手】と【勇者】ですね。それでしたらレベル90分の経験値となります』
たっか!
え? ぼったくり?
確か【
「【勇者】も捧げた場合は?」
『その場合ですと、5レベル分の経験値ですね』
【勇者】って85レベル分の経験値と同価値なの?
やばくない?
そのやばい職業を得てあんなになってた勇者くんはもっとやばくない?
「え、じゃあ【魔王】は?」
『【魔王】は【勇者】と同価値です』
他にも【剣鬼】や【賢者】なんかも聞いてみたが、そこまで高くはなかった。
『ちなみに一番価値が高いのは【トラック運転手】です。【トラック運転手】を捧げるのであれば他の職業を全て残した上で経験値も必要ありません』
「【トラック運転手】を捧げた場合、ウルトは?」
『扱えません。消滅します』
なら却下。ナシよりのナシだ。
逆に【トラック運転手】だけ残すのもアリなんだけど、【勇者】も残して改めてレベル上げた方が最終的に強くなれそうだな。
「決めた。【トラック運転手】と【勇者】残しで。他は捧げる」
『承りました。それでは復唱させて頂きます。【トラック運転手】と【勇者】のみ残して他の職業を捧げる。さらに追加のお支払いとして90レベル分の経験値。こちらでお間違いありませんか?』
支払い?
「間違いないです」
ちゃんと確認した。
聴き逃しは無いはず。
『お買い上げありがとうございます。では代償の支払いを』
お買い上げ?
なんかちょいちょい買い物してるみたいな言い方してくるな……
「好きに持って行ってくれ」
『確かに受け取りました。それでは……』
早いな、クレカ決済とかバーコード決済より早いな。
「よろしくお願いします」
次の瞬間、俺の視界は真っ白な光に埋め尽くされた。
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