閑話 リンの策略
〜リン視点〜
半日デートした日の夕食時、レオはあたしの家族をドン引きさせていた。
とはいえこれはレオは悪くない、戦いとはどういうものなのか理解していなかったあたしの家族が悪い。
確かに、レオの話はそこらで聞く英雄譚とはかけ離れている。
けれど、本来戦いとはそういうものだ。
英雄譚のような死闘を繰り返していたら命がいくつあっても足りない、そのくらいのことを理解していない家族に対して少し残念な気持ちになってしまう。
うちって一応英雄の一族よね?
そんな夕食の時間も終わり、それぞれがお風呂で身を清めて就寝となる。
レオを客間に案内させてあたしはお母様の部屋へと赴いた。
「お母様」
「どうしたの?」
のんびりと本を読んでいた母にとあるお願いをする。
「あの本、貸して貰えない?」
「あの本……ああ、前にも読んでなかったかしら?」
「読んだけど……復習しようと思って」
「なるほどね。いいわよ」
お母様は立ち上がり、書棚から一冊の本を取り出して手渡してくれた。
「ありがとう」
「頑張りなさい」
お母様から応援の言葉を貰って自室へと戻る。
光源の魔法を使って部屋を明るくしてあたしは持ってきた本を開いた。
この本の内容は一通り頭に入っている。
サーシャちゃんたちにもレクチャーしたくらいだ。
そういえばベラは実際に試してみて好評だったみたいね……アレも取り入れよう。
「うーん……今まで通り迫ってもいいのだけれど……」
もっとレオが興奮するようなことは書いてないだろうか?
たまには思い切り襲われてみたい。パラパラとページを捲りながら内容に目を通す。
「3人で……ハーレム……これもいいけど今は無理ね。えっと……これね。シチュエーション……ギャップ萌え……」
ふむふむ、男性はいつもと違う行動を取ればドキッとするか……
このゆるふわモテガールって言葉はちょっとよく分からないけど……これね。
「いつもより清楚な格好……いえ、格好は今日買った下着とネグリジェでいいわね……」
下着専門店に連れていった時のレオはドギマギしていて正直あの場で押し倒してしまいたかったくらいに可愛かった。
「ダメダメ……なるほどなるほど……」
小一時間ほど内容を読み込んで頭の中で何度もシュミレーションしてみる。
よし、イケる。
本を閉じて準備を整える。
いつもはつけない香水だけど、たまにはいいわよね。
「よし……!」
準備は整った。気合いも充分。
なんなら今日、今これよりあたしは妊娠してみせる!
部屋を飛び出し、駆け出す。
目指すはレオの泊まっている客間!
いくら広い屋敷とはいえ所詮は家、すぐにレオの部屋の前へとたどり着いた。
まだ起きてるかしら?
まぁ寝てたら寝てたで……潜り込めばいいわね。
一度大きく深呼吸、意を決して扉をノックした。
「はーい」
良かった、起きていたようだ。
なら大丈夫、作戦はバッチリ、これでレオはあたしのことを襲うはず!
ガチャりと、扉が開いた。
すぐ目の前にはレオの顔、相変わらずむしゃぶりつきたいくらいに整っている。
イケナイ、今日はそうじゃないのよリン!
作戦を思い出して!
「来ちゃった……」
恥ずかしそうに、そう言った。
小さく水魔法を発動、瞳を濡らして上目遣いにレオを見上げる。
ふふ……ドキドキしてるわね、可愛い。食べたい。
「入っても……いい?」
「あ、ああ」
体をズラして部屋に迎え入れてくれる。
今すぐ押し倒したい気持ちをグッと堪えてベッドに座る。
いつもと違って恥ずかしそうに、緊張しているように見えるよう気をつけながら座り、レオの方を見るとまだ固まっていた。
ここだ。
「あなた?」
「おぅ」
困惑してるわね、いい感じ。
レオが隣に座ったのでそっと身を預ける。
上目遣いで見つめるのも忘れない。
ふふ……完全に動揺してるわね……あとひと押し!
「あなた……」
目を閉じて、少しだけ顎を上げる。
「リン……」
レオは体を離してあたしの両肩を掴んだ。
ヘイヘイ! カモンカモン!
最初は触れるだけの優しい口付けだった。
けれど、だんだん激しいものとなりレオはついにあたしをベッドに押し倒した。
完全勝利!
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