第4話 前編02 弘子②
昼過ぎ。
私はタクシーから飛び降りた。
私の名前は弘子。某国立大学の、物理学研究所に勤めている。
病院の自動ドアをくぐると、メガネをかけた、若く背の高い青年がロビーでひとり待ち構えていた。
私を発見すると、犬のように駆け寄ってきた。
「姉ちゃん!姉ちゃん。来てくれてありがとう。仕事中に電話して悪かった。どうしていいかわからなくて……」
わが弟、信太朗はひどく取り乱している。
「落ち着け信太朗、それで、相手の方は命に別状はないんだな?」
「命?ああ、大丈夫だ、頭を強く打ったらしく、目を覚まさないんだ」
「わかった。でどこで事故ったんだ?」
「事故?えっと……ああ、信号待ちしてたらグラグラ揺れて、すごく光って、そしたら海岸にいて」
「海岸?」
「そう、見たことない海岸。武士が凄く沢山いて戦っていた」
「武士?」
「そう、ひげもじゃの武士と女の子が戦ってたんだ」
「女の子?」
「そう、その子を車に乗せて、また周りが光って、気がついたら信号はまだ赤だった」
「さっぱり要領を得ない。信太朗、お前交通事故を起こしたんじゃないのか?お前が頭を打ったのか?」
「交通事故?違うよ。それに頭を打ったのは女の子のほうで……。姉ちゃん、僕からも聞きたいことがあるぞ。あの車のボタンはいったいなんだ?そのせいでこんな……。」
「ボタン?お前、あの車のボタンを押したのか?」
「うん……押した……」
「使ったら殺すって言ってよな!」
「え……?う……ごめんなさい……」
「まあいい。信太朗、まずはその女の子の病室へ行こう。そして、朝からお前に起こったことを、もう一度落ち着いて説明してくれ」
信太郎は少し落ち着きを取り戻した。
私は、信太朗から話を聞きながら、その女の子が眠る病室へ急いだ。
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