第15話 前編13 信太朗⑦
いつの間にか時計は12時を過ぎている。
蛭尾教授の説明はまだまだ続く。
もう二時間ほど歴史講義を聞かされて、正直疲れてきた。
いや大事な話なんだろうけど、もうちょっとかいつまんで話してほしい。
「屋島の戦いの際、阿波勝浦に上陸する義経勢150騎は精鋭中の精鋭だ。
武蔵坊弁慶、伊勢三郎義盛、佐藤三郎継信、佐藤四郎忠信といった義経四天王はじめ、主だったものでも相当の手練れだ。
中でも義経自身が強い。義経は京都鞍馬寺で、遮那王という名で修業して……。」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、教授!」
「うん?なんだね信太朗君」
教授は話をさえぎられて不機嫌そうに俺を睨む。
怖ええ。
でも、そろそろ止めないと、朝まで話が続きそうだ。
「そろそろ、僕らが何をしたらいいか教えてください」
姉ちゃんと敦ちゃんもうなずく。
やっぱり説明が長すぎてうんざりしてたのは同じだったんだ。
「わかった。コホン。作戦は3つだ。一つ目。タイムスリップして、あの時代で暇している豪傑、熊谷直実、同直家、那須与一、曽我十郎、曽我五郎の5人を仲間にする」
え!?誰だって?
熊谷直実は、史実では敦ちゃんを討った、あのひげもじゃ。
直家はその息子か何か?
「息子だよ、熊谷小次郎直家。敦盛さんと同年代だ。優秀な武将だ」
那須与一は聞いたことがある。
国語の教科書に出てきた……。
「そう、扇の的で有名な那須与一だ。弓の名手だ」
曽我何とかってのは聞いたことがないな……。
「もしかして曽我兄弟の仇討ちの曽我兄弟ですか?」
「そうだよ弘子君。歌舞伎の演目で有名だね。二人とも剣の達人だ」
俺は知らなかった。
そんな奴らを仲間にできたら確かに頼もしいけれど、そんなにうまくいくかな。」
「きっとうまくいくよ。彼らは歴史上大活躍するが、非業の死をとげる。それを君たちが変えるんだ」
教授はなぜか自信満々だ。
「次に二つ目。敦盛さんは、その前に、3か月間、現代の知識とあの時代の歴史と地理を本格的に学んでもらう。」
敦ちゃんが怪訝そうな顔をする。
「君はこの作戦のリーダーだからね。知識と見識を高めなくてはならない。弘子君はそれを手伝ってほしい。」
姉ちゃんがうなずく。
「そして……」
蛭尾教授は嬉しそうな顔をして俺の方を見て言った。
「そして三つ目、信太朗君は、これからアメリカの傭兵養成キャンプに行って、3か月間軍事訓練を受けてもらいます。」
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