中原零理
「お前、変な目で見られているけど、大丈夫か?」
さっきから、通りかかる主婦や制服をきた学生たちが、チラチラと零理を変な目で見ながら通り過ぎていく。心配したけど、零理は、全然気にしていない様子だ。
「僕は大丈夫。あっ、でも。」
零理は、“そういえば”って顔をして話を続けた。
「大人がこういうことやると“やばい”って誰かが言ってた。でも、僕は、まだ子供だから“やばく”ないみたい。だから、僕のことは全然気にしなくていいよ!大丈夫!」
それから、ペロッと舌を出し、
「“やばい”の対応は、大きくなったら考えることにしたから。」
と、いたずらっぽく小学生らしく笑うのだった。
そんな零理を見て、俺は思わず笑ってしまった。
「僕、中原零理っていいます。お兄さんは?」
『俺は、田中優斗だ』
「優斗さん。」
『おう!』
「それで、優斗さん。優斗さんは、ここで何をしているの?」
『ここでか?俺は、ここで友達を待っているんだ。』
俺の答えを聞いて、零理は、さらに話を続けた。
「でも、ここで待っているより、会いに行った方が会える確率はものすごく高いと思うんです。」
『そりゃそうだろうな。でも、動けないんだ。一歩も。足を動かしてみようと思ったけど、ダメだった。』
俺は、その場で歩き出そうとしてみたが、一歩も動けなかった。それを見た零理は、
「優斗さんは、名前を覚えているのに、この場所から動けないんだね。そうなると、優斗さんは、よほどこの場所にいたい、ということなんだと思います。」
でもその強い思いがあってここにいてくれたから、僕は会いにこれたんだけど。
そう言って俺にニコリと笑いかける。不思議な少年だ。
どうやらこの少年は、俺がこの場所に執着していると言いたいようだ。
俺は、何でそんなにこの場所にこだわるのか。
おそらくそれは…。
圭太を見た最後の場所だから……か?
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