寄りたい場所 来たかった場所 来たくなかった場所
もうすぐ、〇〇公園だ。俺がさっきまでいた電信柱があるそばの。
「もうすぐ公園だね。」
圭太が、零理を見て言った。
「もう着くの?圭太さんとバイバイするの寂しい!」
零理が駄々をこねる。
「俺も。ここまで来たついでに、俺、寄りたいところあるんだ。」
「寄りたいところ?それって行きたいところってこと?」
「そう。行きたいところ。でも、1人で行く勇気がなくて逃げていたところ。」
「逃げてたの?」
「うん。俺、たぶん逃げていたんだ。現実を受け入れるのが怖くて。」
「怖いの?」
「うん。怖くて辛いんだ。ずっと一緒にいたかったから。零理君、僕の用事にも付き合ってくれる?」
「うん!いいよ!」
「ありがとう。今日あったばかりなのに不思議なんだけど、零理君と一緒なら、俺向き合える気がしたんだ。小学生に頼って情けない中学生でごめん。」
「ううん。大丈夫!まだ圭太さんと一緒にいられて嬉しい。」
その言葉に、圭太は優しく零理に笑いかける。
「ありがとう。」
〇〇公園の中を通り抜け、大通りにでた。
信号待ちをしている。
「ここを渡ってすぐのところ。」
「うん。」
気づけば、圭太と零理は手を繋いで歩いていた。
信号が青に変わる。
「行こう!」
自分に言い聞かせるように、圭太は力強く言った。
「うん、圭太さん!」
零理は、それに答えるように強く頷き、握る手に力を込めた。
縞々の白線を、小学生の歩く速さでゆっくりと渡り始めた。
横断歩道を渡り終えると、小さな路地が目に入る。
その路地の電信柱の前で圭太は立ち止まった。
「僕が来たかった場所は、ここなんだ。」
小さな花束がいくつも置いてある。お茶も置いてあった。
圭太は、その電信柱の前にそっとしゃがむと、家から持ってきた紅茶を置いた。
「これ、お前が好きだった紅茶。オレンジジュースは、可愛い弟分に飲んでもらったぞ。ありがたく思え。」
そう言って、目を瞑り手を合わせた。
零理は、優斗を見る。
優斗は、圭太の姿を目に焼き付けるようにじっと圭太を見つめていた。
圭太は、手を合わせたまま零理に話しかけた。
「さっき話しただろう。親友のこと。」
「うん。永遠に仲良しの人?」
「そう。そいつがここにいるんだ。」
「!?」
零理も、一瞬びっくりした顔をした。
もしかして見えるのか?
さっきからついて歩いている俺の姿が…
零理は、優斗を見てから、圭太に視線を移し、質問をした。
「ここにいるの?永遠に仲良しの人が?」
「うーん。よくわからないけど、何だかそんな気がして。だから何だか来るのが怖かったんだ。俺に怒ってここにいるんだったらどうしようって思って。」
何だ、気がしただけかあ……
背後霊のように(いや背後霊なんだった…)ついて歩いている俺のことが、見えているのに、見えてないふりしているのかと思ったじゃないか。
見えてないと思って行動してたのが、『全部見えてました』って、なんか恥ずかしいだろう!!
優斗は圭太に、わけがわからないツッコミをしていた。
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