エピローグ

圭太を見送ると、零理はもう一度ブランコに座った。そして、バッグから一本のシャープペンシルを取り出した。


それは、優斗が零理に残したもの。




『赤い缶の中に、手紙が二枚と、シャープペンシルが入っているんだ。そのシャープペンシルを零理に受け取って欲しい。』

「圭太さんに渡すはずのものじゃないの?」


『実はな。手紙を圭太と一緒に赤い缶に入れて埋めた後、1人で掘り出してシャーペンを入れたんだ。』

「圭太さんは、そのこと知らないの?」


『ああ、知らないはずだ。1人でやったからな。そのシャーペンは未来の自分が使うために入れたんだ。だから弟の零理に、受け取ってもらいたい。』


「わかった。それなら僕がもらう。優斗お兄ちゃんだと思って大切にする。約束する。」

『ありがとう。零理。』




零理は、優斗からもらったシャープペンシルを見る。

そこには、


―天才になれるシャープペンー


と、書かれていた。

なんだか優斗らしくておかしくて笑った。


「優斗お兄ちゃん。僕、これを使えば天才になれるね。きっと。今よりもっともっと上手く誰かの願いを叶えられるかな。」


零理は、空を見上げる。


その空は、優斗にいってらっしゃいを言ったあの日の夕焼け空と、とてもよく似ていた。


「優斗お兄ちゃん、ありがとう。」




20○○年11月〇〇日午後17時頃、東京都〇〇区〇〇公園近くの路上で、男子中学生が電信柱に衝突して死亡。目撃者の話によると、その少年はよそ見運転をしていたという。

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