圭太の家へ でもやっぱり…
あの角を曲がったら圭太の家だ。
もうすぐ、もうすぐ圭太に会えるかもしれない……
『ちょっと止まってくれないか。』
俺は、思わず零理にそう言っていた。零理は足を止め、俺を振り返る。
「はい。どうしました?」
不思議そうな顔だ。
『心の準備が……。』
正直に打ち明けた。俺、幽霊だけど、ドキドキしていて足がすくむ。
そんな俺を見て、零理は提案してくれた。
「優斗さん、さっき通り過ぎた公園に行きますか?」
さっき、通り過ぎた公園。それは俺にとってとても思い出深い場所。
『そうだな。あの公園に……行きたい。』
数分戻って、公園に着いた。
冬が近づいている。葉が全て落ちた木が公園の周囲に並んで立っていた。公園の奥にあるブランコに、零理は座った。
『懐かしいな。』
このブランコで、圭太とよく靴投げをした。
それから登り棒登って、ジャングルジムのてっぺんに登って近所のオヤジに叱られたっけ。それから…。
想い出が後から後から湧き上がっては消える。
ああ、圭太との思い出は限りない。
あの頃のように駆け出したくて、思わず零理の肩から手を離してしまった。
「あ、優斗さん!!」
俺は慌てて零理が伸ばした手を握り返そうと思った次の瞬間、さっきまでいた電信柱の横に立っていた。
『戻ってきちまった…。』
ああ、いよいよ俺は幽霊だって認めなくちゃいけないな……。
心の中で、死んだことを判りたくないという気持ちが、事実を受け入れようと葛藤し始めていた。
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