第13話 温泉に浸かって、個室寝台に

 ほな、丁度この後東京まで上りに乗るから、夕方の早い時間はまだ大丈夫だろうということで、狙いだけ定めておきました。

 それでおっさん、その後の「出雲」でちゃっかり食べたろうと思った人。

 その指摘は、確かに正しゅうございますぞ(苦笑)。

 ともあれ「やくも」のメニューを拝見しましてね、なんや、大衆食堂が少し品よくなったような食堂かといった感じを受けました。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


「それで「やくも」は、玉造温泉まで乗られたのですね?」

 赤ワインを少し口にして、堀田氏が尋ねる。

「堀田君御指摘の通り。玉造温泉には昼1番くらいに到着しました。駅からのバスに乗って温泉の外湯につかって、さっぱりできましたわ。ま、ビールは後でということ。ここで飲んでしまえば、先がないでしょう(苦笑)」

「そのあとは車中泊ですね、「出雲」で」

 山藤氏の指摘に、岡原氏がさらなる注釈を加えた。

「そうです。折角ですので、1号車の個室寝台に乗りました。京都におればなかなか個室寝台に乗る機会はないが、この際、最新のA寝台個室に乗車してみました」

「どうでした?」

 堀田氏と山藤氏が、いささか身を乗り出すように訪ねてくる。


 個室寝台は、これまで乗車機会がなかったので何とも言えませんが、一人で静かに過ごすには悪くはないですな。

 大体、列車というのは船や飛行機以上にスペースの制約がありますでしょうが。

 その中でよくこれだけの設備を作れたなと。

 あの「あさかぜ」の個室寝台とはいささかコンセプトの違うところもあるようですが、少し部屋の狭さを感じないわけにはいきませんでしたね。

 渡辺さんのお話では、一部趣味の人の間では「独房」などと述べる方もおいでだが、その言葉も確かに当たっている側面もあるかと思われました。

 しかし何より、個室寝台はありがたい。

 鍵をかければ、荷物を置いたままでも安心して食堂車に行けますから。


 温泉からバスで駅に戻りまして、それから「出雲」の個室に乗って、もうすぐに食堂車に参りましたよ。


 それで、早速ビールを飲みながら、改めてメニューを見まわしました。

 こちらもビフテキはなくて、ステーキと言えばハンバーグでした。

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