第9話 長期出張の日程、ついに明かされる。

 日程は、S電鉄の渡辺君のアドバイスに従いました。ざっとこんな調子。


 まず、京都から新大阪までの切符を買っておいて、出発は大阪市内からや。そこから岡山に出て、文理大さんと打合せね。その日はしゃあない、岡山に泊り。

 それから翌日の「やくも」がありましょう、それで玉造温泉まで出向いて外湯につかって、それから寝台特急の「出雲」で東京に行くわけです。

 学会に出て、その日と翌日は東京泊ね。


 その後は、普通なら新幹線で東海道を下るところであるが、今回は特急「白山」に乗って峠を越えて金沢に出て、金沢大学に勤める知人に会って1泊して、それから「雷鳥」に乗って京都に戻って参った。

 まあ、1週間仕事やったね。

 言うなら「8の字」に動いたってわけや。

 多少の自腹も切る羽目になったが、十二分に費用対効果のある出張やったわな。

 さっさと引退して諸国漫遊したらこんな感じかと思ったが(苦笑)、そう簡単に問屋が卸してくれぬので、今もこうして岡山までやってきて仕事しております。

 

 切符は、大阪市内から京都市内で、山陽本線、伯備線、山陰本線、東海道本線、東北本線、高崎線、信越本線、北陸本線、湖西線ときたものよ。多少のはみ出し区間は乗車券を買ったが、それはまあよろし。


 しかし鉄道マニアの人の考えることは、たいしたものや(苦笑)。それはともあれ、列車に乗ればほぼ毎日、食堂車に1度は入る「生活」やった(苦笑)。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


「そこまでくれば、まさに、「博覧強記」ですね」と、堀田氏。

「確かに、今度はあまり「粋」って感じがしませんね。何だか、必要に迫られて食堂車に通っているような、そんな印象を受けますな。堀田君仰せの「博覧強記」を地で行くような、そんな感じじゃないですか」

「山藤さん、恐れ多くも岡原大先生のなさることですよ。何と申しましょう、必要に迫られてというよりは、意地でも食堂車に向かわれたと評すがよろしいかと。ところで大先生、どの列車の食堂車に行かれました? まさか、今述べられた列車全部で食堂車に向かわれたなんてこと、ないですよね?」

「実はそのとおりです。堀田君の御指摘のとおりであります(苦笑)」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る