第4話 伊勢参りの快速の食堂車に、突入!
何か面白いことないかと思った挙句に考え付いたのが、伊勢参り客用に設定されておった、姫路を朝に出て鳥羽に昼頃着く列車。
帰りの便もあって、こちらは鳥羽を5時前くらいに出て、そう遅くならんうちに姫路まで帰り着くダイヤやった。
この列車にも和食堂車があることを知っておったから、いっちょ、これで行こうと思った。
あの当時、洋食より和食のほうが安かったし、第一、これは急行列車ではないから急行料金もいらんときたものだ。
乗車券だけで乗れて、食堂車で飯も食えるとなったら、これは乗らなきゃ損や。
富士ほど早い時間じゃなかったが、朝8時頃やった。この列車、姫路からぼちぼち、やってきよった。
あの「富士」の時に比べて、機関車の煙がいささか鼻についた。あれは間違いなく特別急行列車と普通列車で使う石炭を変えておったと思われる。
ま、機関車の煙なんか、何のそのってことや。
今回もまた食堂車近くに早めに来て並んで、食堂側から食堂車に入っていった。前は三等車やったから調理室側の通路を通ったが、今回は堂々と食堂車側から入れたね。食堂のつくり自体は富士の洋食堂車とさほど変わらんが、雰囲気は全く違っておりましたよ。まあ、庶民の食堂みたいな感じが漂っておったね。
朝8時前で、そんなに混む時期でも曜日でもなかったから、食堂車は満員というわけでもなかった。
さあ、朝飯を張り切って食おうと思って空席に向かおうとしたら、なんか、知った声がするのよね。
「オカハラ君やないかぁ?!」
誰や、こんなところでと声の主を探したら、すぐ後ろの二人掛けの席に知った人物がいてねぇ、朝っぱらからビールなんぞ飲みよったわ。それ、堀田繁太郎教授のお兄様で、元**新聞記者、現在ジャーナリストの堀田英太郎さんね。
とりあえず、堀田君と言ったらこちらになりかねんし、一緒にするなと言われるのも難であるから(苦笑)英太郎君と申すが、彼がおったのよ。しょうがないわ。
こいつの前にでも座るか。
「英太郎、何で朝っぱらから背広着てビールなんか飲んでおる?」
「わしは今年から**新聞の記者になって、ちと、取材に言ってきた帰りや」
「姫路にでも戻っておったのか?」
「せや」
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