物事には適正なやり時がある

第25話 物事の適正なやり方とやり時 1

 そうですな、山藤さんや堀田君のおっしゃるのは、確かですよ。

 どんな物事でも、適正なやり方とやり時というものがあります。

 それをわきまえてないと、どんなことが起こりますか?


 今私には孫がおりまして、小学生です。

 学校の漢字テストや計算ドリルなんかやっておりますのや。

 たいていは100点を取れておって、私なんかに似たとは言いませんけど、息子の奥さんの方も賢い方々ですから、そちらに似たのでしょう。

 それはまあ印象の問題ですからいいとしまして、そんな孫が今の時期、漢字ドリルや計算ドリルで100点を取れなかったとしたら、その理由は何か?

 たいていの原因は、記入ミスや計算ミスなどです。

 大体、漢字は学校で習う以上のものをすでに知っていますし、計算にしても、すでに掛け算くらいはできますからな。

 そういうテストであれば、100点を目指すのは、悪い目標ではありません。


 しかしながら、これが例えば受験となったとき、同じような姿勢で受験に臨んでごらんなさい。まず合格なんかしませんよ。もちろん、その学校の問題があまりに安易すぎれば満点もあるかもしれんが、みんながそれでは、受験生を選別できん。

 逆に、誰も解けず、解答があるのかないのかわからん問題ならどうか。これまた、みんな0点かそこらとなれば選別できん。となれば、ほどほどで来て、ほどほど間違うか解けない。そういうテストにせざるを得ん。そんな試験の対策に、小学校の計算ドリルの手法が通用するわけもないでしょう。

 学校の毎日のテストと入学試験では、それほども違うのです。


 もう一つ、あなた方も御存じの石村修君がいますよね。彼は今でこそ教授としてお偉く成られておりますけど、彼は、私が戦時中お世話になっていた研究室で、のべつ赤点を食らっておりました。何分、計算が苦手であるとのことでしたけどな。

 そこをうちの教授さん、科学者は赤点くらいがちょうどいいなどとおっしゃっていた。それで、石村君に対しては、私らからしてみれば一見甘いのと違うかと言いたくなるほどのところが見受けられました。


 これは山藤さんも、堀田君や石村君御本人からお聞きされたと思いますけどね。

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