値上げ前。今時の食堂車を堪能せり! 後編

第15話 ここまで来たら、やるしかありません。

「渡辺寿保君の御紹介です。鉄道趣味の会と言いますか、その京阪支部に彼はおりますが、昨年、岡山に参った際に彼がなぜか同行してくれて、それでこちらの播備支部の関係者を紹介されまして、こちらの事務局長が藤木さんでして。鉄道雑誌に以前からかねて写真を掲載されておいでのようですな、あの方は」

「確かにそうですが、その時まさか藤木君、岡原さんにその話をされたとか?」

「ええ。実は、ね。折角だからやってみようと思ったのよ。個室寝台の金を何百円かでも取り返してもう一杯飲んでやろうと、そんなこと考えましてね(苦笑)」

「それで、大山おこわ定食の後は、ポークカツとともに更なる一杯と相成ったわけですね」

「堀田「教授」のお見立て通りです(苦笑)。私ごとき母校の「「不」名誉教授」は、そんなことでもしないとやっておれませんわな。ほな、そろそろ、続き行きましょう」

 岡原氏はさらにワインを各グラスに注いだ。ボトルにはまだ残っている。


「ところで「出雲」の朝は、食堂車に行かれましたか?」

「行きましたよ。東京7時着ですから、少し早めに個室寝台を出まして、朝1番に洋朝食をいただいて参りました。実質2回転程度しか営業できませんけど、しっかり食してまいりました。こちらも以前より簡便な定食になっておりましたっけ」


・・・ ・・・ ・・・・・・・


「その後は学会ですよね。2泊されたと伺いましたが、その後も食堂車ですか?」

「山藤さんのお見立て通りです。今度は食堂車で碓氷峠を超えましたよ。2日目の学会の日は、さすがに食堂車に入っておりません。その何ですか、神田の交通博物館に行って食堂車気分を味わってなどということは致しておりませんぞ(苦笑)」

 学会の話は一気に飛び、今度は、帰りの列車の食堂車の話に。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 さて、帰りというか大回りの最初は、上野を9時30分過ぎに出る特急「白山」に乗りました。上越線周りの「はくたか」もありますが、どうせやるなら、碓氷峠を超えながら食事をしてみたいと思いましてね。


 もちろん、駅弁なんかではなく、食堂車に行かねばならん。

 もうここまで来たら、やるしかありません。

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