第7話 専門外のエッセイは身を助けた

 あとで彼に聞けば、あの時の飯、何の問題もなく経費でまかなえたらしい。

 その代わりあのアンチャン、しっかりと伊勢参拝列車で、学生時代の旧友岡原某に出会って云々、ちょっと面白おかしく書きよった。

 ま、それで何か問題が起こったわけではない。

 ただ、大阪あたりから京都に来る学生の何人かがその食堂車の話を読んだのか、あの時間帯のあの列車、日によっては神戸や大阪あたりから何人か学生が乗ってきて朝飯を食べたり、帰るときについでに夕食を食べに入ったり、いくらかはそういう動きもあったみたいやね。


 実は、このときの話も、菊政君の会社の社報に掲載してもらったのよ。前回の富士号の記事が掲載されたので伺って、その話をしたら、直ちにこの場で書いて帰れと言われたからな。それで、小一時間もせぬ間に原稿を仕上げたよ。

 もちろん、この際であるから堀田英太郎記者の行状もしっかりと書いてやったわい(爆笑)。


「岡原君、あんた、寺田寅彦さん並の文才があるなぁ」


 菊政君の親父さん、私が一気に書いた文章を読んで、随分感心しておられた。


 その後時々あちこちでエッセイを書かせていただいているけど、あの頃、菊政さんのところで結構鍛えられたからね。

 おかげさまで、本業のほうもしっかりさせていただいているよ。

 

・・・ ・・・ ・・・・・・・


 赤ワインになって、飲むペースは先ほどよりいささか落ちている。

 ボトルにはまだ、半分以上残っている。

 岡原名誉教授が二人のグラスに注ぎ足し、自分のグラスにも注ぎ足した。

 ちなみにこの赤ワインは、常温で提供されている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る