第6話 あとは、珈琲1杯で粘って京都へ
朝食やけど、いや、何だかんだで、見るからにしっかりした食事やったよ。
まあ、腹も減っておったし、ええ加減になったところで、残さず平らげた。
その頃には、列車は大阪に着く前になっとった。
大阪に着いた暁に、さっそく、彼が珈琲を一杯頼んでくれよった。これで、一服させてもらえた。ついでに言えば、京都くらいまでは居座れる大義名分もできたってことで、まずはめでたしや。実際、大阪を出て程なく、食堂車の席が埋まってきたからね。
客層やけど、天下の「富士」のような国際色豊かなんてことはなくてね、関西の庶民のちょっとした楽しみの遠出を演出するような色合いの列車だけあって、ホンマに庶民的な感じで、よかった。
第一肩肘も張らんし、テーブルマナーが云々言うほどでもなかったからな。
ついでに言っておくと、朝から飯ついでに酒を飲んでいた人は存外いた。
まだ戦時体制になる前だったからな。横の4人掛けのおっさんら、朝から適当なつまみをとってビールやら日本酒やら飲んでおった。
こんなおっさんらがおるから酒飲みのイメージがダウンするのやと思ったけど、ま、人のことは言わんときますわ(爆笑)。
あの食堂車、朝から関西弁が飛び交ってオモロかったけど、よくよく聞きよったら、大阪か神戸かもう少し西のほうか、その微妙さも味わえたよ。
とにかくその日は、英太郎君と京都まで食堂車で話し込んでおったな。そんな中でもさすがは新聞記者や、観察力はしっかり磨かれておったね。
せっかくやから「富士」に乗った話もしたでぇ。
例のおっさんの話をしたら、あいつ、ビールを吹き出すのをやっとでこらえて、大笑いしておった。
いくら大衆食堂の延長のような食堂車や言っても、あのおっさんみたいな人はいなかった。皆さんお気楽にはされていたが、あんなマナー破りのおっさんは、さすがにおらんわ。
あとは珈琲1杯で30分程うまいこと粘って、京都に着いた。
そこで英太郎君とお別れやが、その後は彼もさすがに飲んでばっかりいないで少しは仕事していたみたいや。
また、京都駅で落合った仲間とタクシーに相乗りして、大学に間に合わせたよ。
いやあ、あれはあれで楽しかったね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます