概要
私、ここを離れる訳には行かないんです――彼女はそう、寂しそうに呟いた。
限界集落だろうか。最初は、そう思った。俺――鴨川響輝が目的の無い旅に出かけて半月程経った頃だろうか。とある道の駅の観光案内を眼にした俺は、そこに載っていた、山中に僅かながらの住民がひっそりと暮らす村を訪れた。この村は何故か年配者はおらず、二十代から三十代の若者が農業を主体とした生活を送っているのだ。その生活ぶりは決して派手ではなく、田舎暮らし希望者の若い世代がコミュニティを形成しているように思えた。だが、意外にもこの村にはキャンプ場やフィールドアスレチックといった自然を楽しむアクティビティ施設が充実しており、これが若い住民達の生活を支え、過疎地の村に人を呼ぶ起爆剤となっているようだった。そんな、静かなようでにぎやかな村には、もともとの素朴な集落の雰囲気を残したこじんまりした神社があり、若い巫
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